らびっとブログ

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書籍「日本赤軍!」に見る重信房子氏のリーダータイプ

本日5/28に元日本赤軍最高幹部の重信房子氏が出所しました。かわぐちかいじの漫画「メデューサ」のモデルで、出所直後の会見も高齢ながら安定な印象でした。

 

私はブントや赤軍派に批判的ですが、書籍「日本赤軍!」のインタビューを読むと、重信氏を「義侠心、ロマンチスト」と呼んだ一水会のツイートも納得感あるタイプのリーダーかと思えました。

 

 

はじめに

日本赤軍とは

日本赤軍自体の説明は、警察や公安の資料が意外と日本赤軍側の主張もポイント良く引用していて、わかりやすいです。

www.moj.go.jp

 

もちろん公安側の文章は「現在も危険だから監視対象にしてます」との予算正当化でもあります。

 

なお「攻撃対象」の先頭の「天皇・皇族」は公安側の記載順序で、日本赤軍を含めた当時の左翼側の優先は政治経済ですね。

 

簡単にまとめると、

  1. 既成左翼(ソ中や各国社共)を批判して西側諸国で新左翼が生まれた
  2. 日本では共産同(ブント)の分派として軍事路線の赤軍派が生まれた
  3. 赤軍派が軍事訓練中に大量逮捕(大菩薩峠事件)
  4. 獄外グループの一部がハイジャックして北朝鮮へ(よど号グループ
  5. 残る獄外グループから重信らが中東に渡り「日本赤軍」となって独立
  6. 更に残る獄外グループが他派と合流して「連合赤軍」を結成し壊滅

 

ところで赤軍派は「政党」なのか、「分派」(フラクション)とは分裂なのか。

 

赤軍派の軍事路線

しかし私自身は赤軍派の「軍事路線」は子供のころから批判的です。

  • 理想を持ち社会変革や革命を目指すのは良いが、そもそもブントは政治思想は薄く、後先考えない勢い頼りな学生運動の面を感じる
  • 「軍事路線」で仮に数百人の兵士で官邸や国会を占拠できても、警察に包囲されて終了で軍事的合理性が無い

 

フランス革命ロシア革命も一部兵士が革命側につき、また東欧革命では軍が「中立」を守ったために成功したように、実際には既に破綻した政府の「腐った扉を蹴破った」ケースが多く、一般人だけの武装蜂起による暴力革命は困難です。

 

実は当時の新左翼中でも、赤軍派の「軍事路線」は「プチブル冒険主義」(成算の無い無謀な方針)と激しく批判されて全体では少数派でしたが、より武闘派ほど目立つのも現実です。

 

戦前の青年将校と似たロマン主義的暴走の側面を感じます。

 

懲役20年は軽いか

ネットでは「何十人も殺したテロリストが懲役20年とは軽い」との声も見かけますが、法的には重信氏はハーグ事件での逮捕監禁罪・殺人未遂罪などの共謀共同正犯容疑で起訴され、本人は無罪を主張し続けたが、有罪確定したものです。

 

殺人罪はなく、実行犯でもなく、罪状と比較すればかなり重い量刑でしょう。

 

共産主義者はみんな仲間か

また「出所なのに意外と左翼が静か」との声も見かけましたが、それは「ロシアも中国も北朝鮮も、更に日本共産党革マル派中核派赤軍派も、みな共産主義者だから仲間のはず」程度の認識の方に多いようです。

 

実際には大半の新左翼各派と、中ソや日本共産党は最初から敵対関係で、それは新左翼が登場した歴史上も当然でしょう。

 

逆に、代表的な戦後右翼テロの浅沼社会党委員長刺殺事件も、保守派の大多数は歓迎した訳ではないし、実行犯の山口少年の出所も騒がれなかったのと同じでしょう。

 

書籍「日本赤軍!」に見る重信氏

日本赤軍!世界を疾走した群像」は、元最高幹部の重信氏や、途中で日本赤軍を去って重信氏らを批判した和光氏、(日本赤軍ではなく)赤軍派元議長の塩見氏などのインタビュー集ですが、メンバーによって内容やトーンが違うのが面白いです。

 

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例えば赤軍派議長の塩見氏は、氏が獄中に結成され、同志連続殺人事件を起こした連合赤軍は、以下のように整然と論破します。

  1. 上部(塩見議長)の承認無しで、配下の非公然部門が勝手に合流した
  2. 反スターリン主義者とスターリン主義者の合流で、思想的にも野合
  3. 武装蜂起なら都市ゲリラなのに、地方に逃亡
  4. しかも山小屋に篭るのでは、毛沢東主義の「人民の海」にもならない
  5. つまり連合赤軍は全てデタラメで話にならない

 

この連合赤軍批判は論理的ですが、しかし「だから私には全く責任ない」とも読めるし、逆に自分自身のブント書記長暴行事件は「ちょっと殴っちゃった」と軽く説明するなど、頭はいいが保身ばかりの官僚的にも読めてしまう。

 

次に途中で日本赤軍を抜けた和光氏は、リッダ闘争(テルアビブ空港乱射事件)は「京大パルチザン」として参加したのに重信氏らが後から「日本赤軍の作戦」のように言った、パレスチナでの軍事訓練中に「思想学習」の名で執行部の方針を押し付けようとした、などと日本赤軍を批判してます。ただ「学習でベクトルを合わせる」事は企業でも多く、どこまでが押し付けかは難しいのと、少なくとも連合赤軍のような「総括」という名の暴力は無く平和的に離脱できたし、自分だけ正当化しているようにも読めてしまいます。

 

ところが重信氏だけは全く違うトーンで驚きました。現地で軍事訓練を受けた「共産主義革命戦士」のはずなのに、思想や軍事の話は全く無い。多くの活動家のような「この思想や路線が正しい、批判者は理解不足だ」との正当化も無い。

 

重信氏は、学生の時は弱小セクト(明大社学同)の方に協力し、パレスチナでは強大なイスラエル占領下の難民へ共感し、和光氏の日本赤軍批判には「当時は気づかなかったすれ違いの責任は我々にもある」と反省を連ねる。

 

企業や大学はもちろん左翼党派内でも「女性は男性の補助役」との意識が強かった時代に、リーダーのタイプでは理論家や思想家より、教師を目指していたのが「なるほど」な人間性(恐らく理想を語ってブレず、相手も理解しようとする共感力・抱擁力)で組織をまとめていたように思えます。

 

「そう見せるのが上手い」のかもしれませんが、プロジェクトマネジメントでもメンバーへの見せ方(振る舞い)はリーダーに必要なスキルとされています。

 

学生時代にオルグ(勧誘)が得意で仲間から「魔女」と呼ばれたとか、塩見氏評の「普通の学生だった」とか、今でも「ふーちゃん」と親しみを持ったツイートを見かけるのも納得味があります。

 

義侠心でロマンチスト

民族派新右翼一水会がこんなツイートしてました。

 

新右翼新左翼は正反対のようで、反政府や反米の少数派同士として昔から交流がありますが、この「義侠心、ロマンチスト」は、うまいこと言うなと思いました。

 

上記書籍でも、常に弱い立場の側に立つ信念で、基本はブレない、という感じです。

 

なお塩見氏は壊滅状態の赤軍派残党に、無謀な「反右派闘争」(内部の敵を探して打倒する)の指示を繰り返して完全分解させてしまいます。支持者からは「日本のレーニン」とも呼ばれましたが、本領は分裂を繰り返す「壊し屋」だったのかもしれません。

 

ジェンダー発想ではありますが)政治理論に固執しやすい男性リーダーの方が、自縛となり挫折しやすいのかもしれません。

 

おまけ

出所時のコメント映像

多数のカメラを前に、高齢でゆっくりながら、後から文字に起こしてもOKそうな長文を語れるとは、なかなかできないと思いました。

www.youtube.com

 

出所時の質問回答全文

確かに当時はマスコミも「武装勢力」「ゲリラ勢力」などの中立的表現が普通で、以前からロシア革命の「白色テロ、赤色テロ」などの言葉もありましたが、安易に「テロ」という非難を込めた政治的用語が一般に普及したのは911以降と思います。

news.goo.ne.jp

 

ところで今回の出所は産経新聞が前日も当日も異様に詳報しています(笑)。法的には出所すると一般人に戻るため、積極的には報道しない事が大手マスコミの通常なのですが。

 

映画「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」予告編

メインは連合赤軍ですが、重信氏役も美人役で何回か登場します(笑)。監督は日本赤軍関係者の若松氏なので、赤軍側を好意的に描いてるのかと思ったら、史実を客観的に淡々と描写し続けるので、これは怖いです、トラウマになります。(ただ映画オリジナルのラストの安易な叫びには、本人など当事者から批判もあり、私も変と思いますが、一般観客向けのカタルシス用と思ってます)

www.youtube.com

 

映画『革命の子どもたち』予告編

日本赤軍の重信とドイツ赤軍のマインホフの、それぞれの娘を描いた映画。

www.youtube.com

かわぐちかいじの「メデューサ

陽子はオルグのプロで、パレスチナに渡って革命戦士となるなど、露骨に重信氏がモデルですね。

csbs.shogakukan.co.jp

 

それでは。

映画「シン・ウルトラマン」が「シン・ゴジラ」と同じ処と違った処

公開2日目の5/14(土)に二子玉川の映画館で見て普通に面白かったので、ネタバレ控えめで感想を書いてみました。

 

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(映画館の入口ディスプレイの写真)

 

公開後の最初の土曜の午前で、IMAXは混んでいたので普通の2Dで、座席は7割ほどで子供から若者・年配まで幅広かった印象です。

 

なお「シン・ゴジラ」ほどではないですが、画面に巨大な字幕が次々映るシーンもあるので、なるべく読みたい人は後ろの座席が良いと思います。

 

シン・ゴジラ」とスタッフやキャストの共通点も多く、実際似ていたので、つい色々比較しながら観てしまいました。

 

 

テレビの初代「ウルトラマン」は

さてテレビの初代「ウルトラマン」は幼稚園の頃で、続く「ウルトラセブン」と「帰って来たウルトラマン」まで見たけれど、特に初代「ウルトラマン」はオムニバス的で回によってコメディ調だったり、単純な正義で割り切れない話があったのが子供心にも印象的でした。

 

例えば相手の怪獣や宇宙人も、

  • 村人に差別される孤児の女の子(雪んこ)を助けに現れるウー
  • 自分から攻撃しないのに、巨大で迷惑と人間に攻撃される不条理なスカイドン
  • 宇宙開発競争の犠牲者が、元は人間と隠されたまま抹殺される悲惨なジャミラ
  • ウルトラマンが過去に退治した、静かな宇宙墓場に帰りたいだけの嘆きのシーボーズ
  • 母星が核実験で滅んで宇宙難民となり地球への移住を希望するが、数多すぎと闘いになり、最後にウルトラマンが母船で眠る20億人を当然のように母船ごと破壊して終わるバルタン星人(!)

 

うーん、今見ても凄いものを子供向けに放送していたもので、今のエンタメ枠では収まらない。

 

「怪獣もの」の中に、正義とは何か、人間とは何か、の問いかけが潜んでいる。沖縄出身の脚本家の金城氏や、実相寺氏の特徴的な映像にも熱心なファンが多いのも納得です。

 

シン・ゴジラ」と同じところ

①主人公側は常に自衛隊と行動する

初代の「科特隊(科学特捜隊)」は特別な研究機関か特殊部隊か、という感じですが、この映画の「禍特対」は政府配下で、現地で自衛隊の指揮権も引き継いだりします。

 

攻撃シーンでの連携を考えれば自然かもしれないですが、それではまるでゴジラガメラシリーズで、謎追及で探偵要素な「ウルトラQ」後継シリーズに思えない気がします。

 

特に最初の2回の出動は自衛隊の野戦テント内の映像までそっくりだし、主人公が突然「子供を助けに行きます」と単独行動するウルトラシリーズのお約束も背後に屈強な自衛官が多数映っているのでは「出口に近い隊員に指示した方が早いのに不自然すぎ」でしょう。まぁ前半は「シン・ゴジラ」ファン向けのサービスシーンでしょうけど。

 

②政府や外交の駆け引き

これも「シン・ゴジラ」同様にテンポ良く早口セリフと表情で見せるのがうまいけれど、「シン・ゴジラ」では感情移入させたいためか日本被害妄想な視点も感じましたが、この「シン・ウルトラマン」は色々な思惑が並立している感じウルトラシリーズ風に思えて私は良かったです。

 

③仲間との描写

相棒役の長澤まさみの「こんな奴いるか」感は「シン・ゴジラ」と同じですが、変態的な「匂い」シーンも主人公側は健全で、「バディ」軸の会話もシンプルで判りやすかったと思う。ゼットンと人類の関係も(賛否あるけど)まぁオリジナル尊重でした。

 

シン・ゴジラ」と違ったところ

①意図的に昭和な特撮

怪獣もののリメイクでは、ハリウッド版「ゴジラ(GODZILLA)」のようにオリジナルの雰囲気とは異質すぎて別物なものや、逆に「キング・オブ・モンスターズ」のようにオリジナルへのオマージュは素晴らしいしリアルだけど「CGでリアルにすれば良いのだろうか」とも思えてしまう(なんとも勝手なものだが)。

 

シン・ゴジラ」ではオリジナルの雰囲気を保ちながらもリアル路線だったけれど、「シン・ウルトラマン」は意図的な「着ぐるみ&人形」表現なのが、いかにも庵野氏の趣向に思え、しかし光線合戦などはド迫力で、これは一つの方向性と思いました。

 

当然「お粗末な画像、幼稚な特撮」との批判も多いし、予算制約もあるようですが、良くも悪くも意図的かと。

 

②オムニバス的

ゴジラシリーズは映画なので巨大な敵を倒しておしまいですが、ウルトラシリーズはテレビシリーズなので毎回相手が変わり、たまに関連性もあったりします。

 

「シン・ウルトラマン」も複数の怪獣(禍威獣)や宇宙人との闘いで構成されていて、実は関連したり、「何故日本ばかり襲われるのか」とのお約束へのツッコミにも関連して、ここはウルトラ風で良かったと思います。

 

カタルシスが少ない(軽いネタバレ)

いくつか感想を拝見すると、やはり感じている方は結構いる気がします。

 

怪獣ものはどれも最後はクライマックスや必殺技で盛り上げるし、それはウルトラシリーズや、スポ根もガンダムエヴァも基本は同じでしょう。

 

ところが「シン・ウルトラマン」は実は最後の2戦は余り激しくないし、子供の憧れだった「光の国」が実は敵みたいで最後もすっきりしないので、観終わると消化不良に感じます。

 

ただ初代「ウルトラマン」は最初に書いたように、ウーやシーボーズなど最後は倒さないけれど人気の高い回も結構あるので、これもスタッフの意図的な構成かなとも思いますが。

 

賛否をまとめると

  • 禍特対が数人だけで不自然」これは「マジンガーZ」の光子力研究所とか「ガッチャマン」の科学忍者隊も含めて「ヒーロー側の部隊は数人まで」な伝統だけど、前半で「シン・ゴジラ」風に中途半端にリアルに自衛隊と行動したせいもあって目立ってしまった。
  • 画像も特撮も下手」これは人形・着ぐるみの昭和の特撮再現とか、人間巨大化の静止画風も異質感を出す意図的と思うけど、ここは評価が分かれて仕方ないと思う。何でも「リアル」が良い訳ではないけれど、「シン・ゴジラ」と比べると映像全体が安っぽいのは否めない。
  • 複数の話が詰め込まれて散漫」これもウルトラシリーズ再現なので半分は仕方ないのでは。
  • なぜ人間の味方するのかわからない」これもウルトラシリーズだから(こればっか笑)。いくら説明しても、最後は論理的ではない「責任感と想い入れ」で仕方ないのでは。
  • 腰を叩くアップがセクハラ長澤まさみはセクシー役で、真面目な主人公には効いてないから必ずしもNGではないと思うけど、過剰なドアップの繰り返しが下品に見えたと思う。例えば画面の隅でポンとやって、気付く人は気付く程度がスマートだったかと。
  • 最後に爽快感が無い」実は初代テレビ版のラストは、もっとあっけなく倒して「ええー」だったので、これでも無理やり共同作業にして盛り上げたとは思う。ところで一番最後の「結局どうなったのか」の判断を観客に委ねるスパッとしたエンドは個人的には良かった(後日談を延々はダサイ派なので)。これも賛否は分かれているようですが。

 

それではまた。

メインフレームとは?

大型汎用機とも呼ばれるメインフレーム・コンピュータについて、その範囲と種類、技術的特徴、そして比較を書いてみました。

 

私は外資系IT企業のSEなどを約30年間(メインフレームとオープン系比率は4:6くらい)経験しましたが、世間やネットの話題には以下を感じるためです。

  1. 実はメインフレームの範囲は広くて色々な製品系列も含まれている。
  2. 本当の特徴はハードウェア自体より、基本設計での堅牢性と思う。
  3. コンピューターは適材適所だけど「メインフレームCOBOLでバッチなど時代遅れ」との批判はローカル(日本特有事情)では。

 

 

きっかけは、富士通メインフレーム撤退発表を機会にした、kodukiさんの入門的まとめ記事が面白かったから。知らない人にもわかりやすくオススメです!

zenn.dev

 

私はプログラマー歴は短く詳細は判ってませんが、色々なシステムのインフラ面に触れる機会はあったので、それを交えてIBM系を中心に書いてみたいと思います。

 

メインフレームとは?

①基幹業務用の大型コンピュータです

メインフレーム」を直訳すれば「主枠、主筐体」ですが、多くの事典や辞書では「企業などの基幹業務用の大型コンピュータ」などの説明です。

企業の基幹業務などに利用される大型コンピューター。

IT用語がわかる辞典

 

富士通も同じ内容で、オープン系と比較してます。

メインフレーム ~ Mainframe ~
主に企業の基幹業務などに用いられる大型コンピュータのこと。信頼性・安定性・互換性が特長。オープンシステムとは異なり、独自に設計しているメーカーが多い。(富士通 用語集

 

IBMメインフレームの「メイン」の説明なのか「大型で、特に周辺のコンピュータが接続する主コンピュータ」という説明です。

"Mainframe" defined
The IBM Dictionary Of Computing defines "mainframe" as "a large computer, in particular one to which other computers can be connected so that they can share facilities the mainframe provides (IBM Archives - IBM Mainframes)

 

しかしこれだけだと「現在では企業などの基幹業務にも使われているオープン系サーバーも含めて良いのでは?」とも思えてしまいます。

 

しかーし!メインフレーム」は歴史的用語で「当時の各社大型」を指す言葉なので、オープン系や、非オープン系でも「中型」は含めないのです。

 

(オマケ)

日本では「オープン系」でUnix/Windows系を指しますが、世界的には「オープンシステム」は本来ソース公開のUnix系などを指し、独自仕様OSのWindowsも含める場合には「分散系」と呼ぶのが一般的です。恐らく日本では、MS-DOS時代に各メーカー独自仕様のPCが続いたので「Windowsでメーカー依存が消えた=オープン」な感覚かと思いますが、世界は本来のソフトウェア観点、日本はハードウェア観点、という気もします。

 

②でも実は歴史的用語です

実はメインフレーム」との呼称は後からで、当初は単に「処理装置(プロセッサー)」や「コンピューター」などと呼んでいました。しかし1960~70年頃のミニコンUNIXサーバーの普及後に、徐々に「メインフレーム」という通称(俗称)が使われていきました。

メインフレーム」という呼称は、後から生まれたもので、当時のコンピュータは全て大型だったが、その後の小型コンピュータに対して「汎用大型コンピュータ」「大型汎用機」と区分され、「メインフレーム」という通称が生まれた。(IT用語辞典 e-words

 

メインフレーム(mainframe)コンピュータは歴史的な用語で、1960年代以降、
企業、大学、研究所等の組織のあらゆる情報処理を、科学技術計算も事務計算
も一手に引き受けていた汎用コンピュータのことをいう。(小柳研究室

 

例えばIBMは今では1952年の IBM 701 以降を「メインフレーム」と呼んでいますが、当時の発表レターやマニュアルなどには「メインフレーム」との言葉はありません。

www.ibm.com

 

ちょうど、日本の明治時代に「洋服」が普及すると「和服」の用語(分類)が生まれたり、RISC登場で従来のCPUをCISCと呼ぶ分類ができて、技術的な差異が消えた今でも「RISCMIPS, SPARC, Powerなどの総称」との歴史的用語で残っているのと似ていますね。

 

なので、競合比較やアポロ計画までの説明もさすがなコメディ漫画に突っ込んで野暮の極みですが、正確には発表当時には「メインフレーム」との言葉は無かったはずですね。

(中略)

トニカクカワイイ」(畑健次郎)より

 

③だから色々な種類を含みます

では「メインフレーム」には現在どんな種類(アーキテクチャ)があるのでしょうか。

 

大別すると多数派IBM系(IBM富士通・日立)と、全くアーキテクチャの異なる少数派の非IBM系(ユニシスNEC)があり、それぞれ長い歴史があります

 

過去を含めた各メーカーは以下で一覧できます(注:スマホなどモバイルでは表示されません)

ja.wikipedia.org

 

④日本の「メインフレーム=汎用機」はちょっと変

ここで「メインフレーム」の範囲の話に戻りますが、日本では何故か「メインフレームはSystem/360から始まり、汎用機と同じ」との定義が幅広く見られます。

メインフレーム - 誕生と発展の歴史
1964年にIBM社からシステム/360が発表され,コンピュータの第3世代が始まった.(中略)事務計算,科学技術計算を始めとするすべての応用分野をカバーする「汎用コンピュータ」が実現され,汎用コンピュータは「メインフレーム」とも呼ばれた.(コンピュータ博物館

 

メインフレームとは
基幹システムなどに用いられる大型コンピュータシステムのこと。商用メインフレームのベースとなったのは「IBM System/360」。(ITトレンドのIT用語集

 

IBM社のSystem/360シリーズが1964年に発表された。これは種々の多くのアプリケーションを1台で集中実行可能な汎用コンピュータで,現在のメインフレームの原型と言える。(日立製作所

 

メインフレーム・コンピューターは、主に企業の基幹業務処理や大学や研究機関における科学技術計算処理などに利用されてきた「大型汎用機」あるいは単に「汎用機」とも呼ばれる大規模なコンピュータ・システムです。(「メインフレーム・コンピューター」で遊ぼう

 

現在のUNIXサーバーやPCも「汎用」ですが、ここで言う「汎用機」はSystem/360以前の「専用機」との対比語で、つまり同一メーカー内でも商用計算(10進演算)用と科学技術計算(浮動小数点演算)用に分かれてソフトウェアの互換性が無かった「専用機」と対比した「汎用機」です。

 

初期PCで言えば「CPUの8086(10進演算)に、コプロセッサの8087(浮動小数点演算)を追加すれば汎用に使える」みたいなものですね。

 

しかしSystem/360以前のUNIVAC I や IBM 701 なども「企業の基幹業務用」の商用コンピュータなので、日本に多い「メインフレーム=汎用機」の説明は不正確に思えます。

 

以下は想像ですが、当時の日本の通産省や業界はIBM対抗が国策で、仮想敵がSystem/360(とその子孫)だった影響にも思えます。また「第3世代」など半導体視点の分類が非常に多いのも日本の特殊性で、少しハードウェア偏重にも思えます。

 

似た例に「PC/AT」があります。世界的にはPCもソフトウェアも周辺機器も、ユーザー(ソフトウェア)から見た互換性の表記として「IBM PC互換 (IBM PC Compatible)」が一般的ですが、日本では今も「PC/AT互換機」の表現に拘ります。まぁ日本ではIBM PC知名度が低い、ライバルの社名は避けたい、当時はATバスが多くDOS/V前提もWindows表記も「PC/AT互換機」だった、などもありますが、これも日本市場の特殊性で、世界よりもハードウェア偏重にも思えます。

 

現役だけでも色んなメインフレーム

それでは現在の代表的なメインフレーム系列を見ていきましょう。

IBM zシリーズ

トップバッターはやはりこれ。1964年に大ヒットしたSystem/360の子孫で以後の世界トップシェア。日本のメガバンクでは「赤い銀行」や「青い銀行」が使用してます。歴史は以下のサイトがおすすめです。

www.ibm.com

 

富士通GSシリーズ(撤退予定を発表済)

富士通IBM互換路線(いわゆるOS互換)で国内首位です。

 

しかし今回メインフレーム撤退を発表し、ロードマップの図にも「2030年度 販売終息、2035年度 保守終了」と書かれています。

www.fujitsu.com

 

なお「保守終了」と言っても、実際には大手各社は個別見積の延長保守で更に延長できる場合が多いのですが、やはりリスクも考えればユーザーは標準保守終了以前の移行完了が無難でしょう。

 

富士通メインフレームのマスターコンソールでIBMのMVS系OSの表示コマンド("D U,DASD,,123,10" など)がそのまま使えて「本当にそっくり」と思いました(当たり前ですが)。

 

富士通メインフレームは型破りで天才肌の池田敏雄氏の功績が絶大と言われています。

www.fujitsu.com

 

また3代目社長の山本卓眞氏は旧日本陸軍の特攻隊生き残りで、部下の社員を「兵」と呼び、富士通のモーレツ文化を築きました。 

 

なお富士通はコンピュータ専業のためか対IBM全面戦争路線で、IBMスピンアウトのアムダールへの支援、Sun提携、UNIX戦争でのUI陣営、PCでのEISA・NT陣営などもありました。

xtech.nikkei.com

 

更に1980年代頃まではメインフレーム筐体の側面パネルの色も、富士通は赤、IBMは青と、マシンルーム内で勢力分布が一目で判りました(デフォルトの色指定が各社のコーポレートカラーのため)。

 

日立製作所 AP8000(ハードウェア撤退済)

日立もIBM互換路線ですがIBM協調派IBMから技術提供を受けましたが、2017年にはメインフレームのハードウェア製造からは撤退して後継機はIBMメインフレームをベースに独自OSのVOS3を搭載する、と発表しました。

www.hitachi.co.jp

 

日立メインフレームの歴史は以下サイトの「第十五回(2009年8月号) 世界一のコンピュータ製品をめざして」でも触れられていて、I/Oの重要性強調などがメインフレームらしさを感じます。

www.hitachihyoron.com

 

ユニシス ClearPath

ユニシスは日本ではディズニーランドのエレクトリカルパレードのスポンサーで有名ですね。

 

しかし世界的には歴史ある非IBMメインフレームの流れを汲み、大規模用のOS2200モデル(旧UNIVAC・スペリー系)と、中規模用のMCPモデル(旧バローズ系)があり、日本ではBIPROGY(旧日本ユニシス)が提携販売しています。

pr.biprogy.com

 

日本の金融機関も採用していますが、2015年以降は新製品の発表が見当たらないような.....

pr.biprogy.com

 

NEC ACOSシリーズ

国産唯一の非IBM系のNECも長い歴史を持ちます。

 

特に大規模向けのACOS-6系は、祖先はGEのGCOSで、なんとバイトマシンではなくワードマシンです。当時は世界最大の電機メーカーのGEが、後発のIBMの前にメインフレーム撤退して業界に衝撃を与えましたが、その子孫がGEからハネウェル経由でNECに受け継がれています。

 

過去に某金融機関のマシンルームで見たメインフレーム筐体には「NEC」と「Honeywell」の両方のロゴパネルが付けられたダブルブランドで歴史を見た想いでした。

 

しかし!扱えるビットの単位が可変(!)で、9ビット単位の大量データをIBM系に移行すると2バイト(16ビット)に収めるしかなく、ユーザーに「容量が無駄すぎる」と怒られましたが、データ再設計しない限り仕方ありません。独自なのは便利ですが大変です。

 

なおACOS-6のCPUは独自からIntel Itaniumに移行後に独自(NOAR-6)に戻りました。

www.itmedia.co.jp

 

この他に中規模向けのACOS-4や、小規模向けで弟分のACOS-2もありますが、これらはバイトマシンです。

jpn.nec.com

 

NECは「ACOSはまだまだ続けます」宣言を発表しました。

jpn.nec.com

 

ロードマップの図の「次々々機ACOS」との記載はちょっと過剰にも思えますが、NECに限らずロードマップ発表は競合他社からのリプレース攻勢への対抗策でもあります。(ただし損害賠償訴訟防止の「保証ではなく変更の可能性もあります」とのディスクレーマー文言が付いているのも各社同じです。)

 

そして日本のメガバンク勘定系では唯一のACOSとなった「緑の銀行」ですが、次期勘定系にもACOS後継機を使用予定と発表済です(もちろん勘定系の中心部以外はオープン系サーバー群ですが)。

xtech.nikkei.com

 

⑥(おまけ)メインフレームには含まれない中型コンピューター

ところで「メインフレーム」には含まれない中型(ミッドレンジ)にも先進的なコンピューターは存在します。日本では単純に「各社独自仕様のオフコンなんて過去の遺物でしょ」とか思われがちですが少し触れます。

 

例えばHP NonStop(旧タンデム、コンパック)は「無停止コンピュータ」で、全部品の冗長化に加えて障害発生時のデータ損傷ゼロを目指したフォールトトレランス性を持ち、なんというかハードウェアを含んだ全体がデータベースみたいな感覚です。日本の金融機関の対外接続(フロントエンド)などにも使われています。

 

またIBM i(旧System/38、AS/400、iSeries)はIBMの次世代システム(Future Systems)の技術を取り入れて、シングル・レベル・ストレージ(ディスク上のプログラムもメインメモリに移動せず実行できて仮想メモリ不要)、ハードウェアへのRDBMS標準搭載など、かなりユニークです。

www.imagazine.co.jp

 

私が思うメインフレームの本当の特徴は

①身近なメインフレームの影響

メインフレーム由来の技術やトリビアと言えば......

 

また大手銀行のATM入出金も、基本はセンターの勘定系メインフレームトランザクション処理を完了してから結果を返しているので「間接的にはメインフレームを操作している」と言えるかも知れません。

 

②OSが違えばタスク管理も違う

IBMメインフレームの中でも、主力のz/OSの他、中規模向けのz/VSE、オープンなLinux、仮想化OSのz/OS、特殊なz/TPFなど複数のOSがあり、タスク管理なども違います。

 

たまに「いまどきバッチがタイムシェアリングではないなんて!」とかの話も聞きますが、スループット重視ならI/O割り込みの方が有利なのは自然で、要は選択や組み合わせかと思います。

 

IBM

  • z/OS - OS/360やMVSの子孫で大規模向け。ジョブ(JOB)やプロセス(STC)やTSOユーザー(TSU)は、各起動時に生成された独立したアドレス空間内で動くので、堅牢性が高い事が特徴です(複数アドレス空間)。またPOSIX準拠のUNIXシステムサービス(USS)も含みUNIXブランドも取得済です(USSを除いたz/OS自体は技術的にはUnix系とは到底言えませんが、移植には便利です)。
  • z/VSE - DOS/360やDOS/VSEの子孫で、中規模向けでz/OSの弟分。z/OSよりアドレス空間が少なく、ジョブやプロセスなどはアドレス空間内の区画内で動きます。またJCLではなくJCS、TSOではなくICCFなど色々違い、昔からz/OSに統合されると噂されながらも続いているところが互換性・継続性重視の世界ですね。
  • z/VM - CPやVMの子孫で、VMwareXenの元祖のようなオンライン指向の仮想化OSです。仮想マシン(VM)を作成して、ゲストOSとしてz/OSやLinuxや付属の軽量OSと言えるCMSなどを同時に動かせました。このCMSはOS管理のほか、多数を動かせばマルチユーザーの安全な仮想環境が作れるので、今のデスクトップ仮想化のように、教育機関・研究所・社内電子メールなどにも使われました。
  • Linux - IBMメインフレーム上でネイティブまたはz/VM配下で動くLinuxで、SUSEなどが提供してます。専用OSの堅牢性などはありませんが、メインフレームのハードウェアのI/O能力や保守運用が欲しいユーザー向けと思います。
  • z/TPF - 大量トランザクション処理に特化した特殊なOSで、航空会社などで使われています。 

 

富士通

  • MSP - 富士通メインフレーム用のIBM MVSの互換OSとして誕生した。ライバルのMVSは24ビット・アドレッシング(仮想記憶16MB)から、31ビット(仮想記憶2GB)のXA、64ビット・データ空間のESA、64ビット仮想記憶のz/Architectureと拡張しましたが、MSPは31ビット対応までです。

 

(日立)

  • VOS3 - こちらも日立メインフレーム用のIBM MVSの互換OSとして誕生し、基本は31ビット拡張までで、一部64ビット機能があるようです。

 

以下はIBMIBM互換系がまとめて載っていて比較できて便利です。

arteceed.info

 

③現在の信頼性とは

メインフレームは性能と信頼性」と言われますが、現在は規格や製造の共通化も進んで、オープン系と機械自体には極端な差があるわけではなく、残る本当の大きな差は、むしろ地味な設計思想(仮想化、組織役割分担、ロギング、保守性)などと思います。

 

例えばIBMメインフレーム(主にz/OS)では......

  • ハードウェアとプログラムの分離で堅牢性が高い。プログラムからは自分自身のアドレス空間と、データ用の共通メモリ(CSA/ECSA)しか見えず、別のアドレス空間で動く隣のプログラムへの「悪さ」は原理的に不可能なので、バグ・脆弱性・悪意・クラッシュ・ハッキングなども影響最小化されます。これはSystem/360以前からの各種エミュレータ(仮想化技術)や、MVS (Multi Virtual Storage)以降のアドレス空間分離によります。オープン系でも仮想VMやコンテナなどで分離も可能ですが、MVS系では全ジョブ標準です。(これは富士通MSP、日立VOS3なども同じです。)
  • 開発(プログラマ)と運用(オペレータ)も分離プログラマと運用(入出力、使用メモリ上限、優先順位、先行関係など)は、JCLで明確に分離されます。良く「JCLはシェルの一種」との説明を見ますが、オープン系はユーザーがコンピューターを便利に使える事が基本で、シェルは任意の便利機能で、プログラム内でファイル指定もOSコマンド発行もできます。もちろんオープン系でも各種権限を絞って役割分担しますが、考慮漏れ、設定漏れ、脆弱性、運用ミス、セキュリティ攻撃などで差が出たりします。
  • コンソールも分離。OS起動などハードウェア操作はハードウェア管理コンソール(HMC)、OS操作はマスターコンソール、プログラム開発はTSS端末(のエミュレータ)と、こちらも分業です。ISPF/PDFなどTSS端末から一部OSコマンド投入もできますが、基本は分離で、個別に権限付与します。オープン系では権限があれば基本なんでもできて設定やツールで分業するのと、反対の設計思想です。
  • 障害時の原因追及。程度の話なので説明しにくいですが、メインフレームにも障害や原因不明は山とあるものの、各ハードウェアやソフトウェアのログや取得資料がオープン系よりも詳細なため、経緯や内部動作が解明できて原因追及・修正作成できる場合が多いと思います(高価なので当然でもありますが)。
  • 修正時の個別FIX。あまり語られませんが、メインフレームのOSや主要ミドルウェアは、不具合や新機能の修正(FIX、APAR、PTF)を適用する際に、SMP/Eなどのツールで管理して、その前提PTFも洗い出して、必要最小限の修正のみを適用して影響最小化・リスク軽減する事が一般的です(バージョンアップは数年単位で別途計画する)。これがオープン系では、単体FIXはあっても限定的で、累積FIX(フィックスパック、サービスパックなど)の適用しか方法がない場合も多く、変更範囲が増えてリスクが高くなります。(クラウドでは良くも悪くも強制適用が基本ですが)。

arteceed.info

 

④例えるなら

メインフレーム例えるなら電車かな。

 

国や街を作るときに、通勤に普通の自動車を多数使えば、調達も容易で、少ない訓練で済み、急なルート変更も楽々です。しかし電車を整備すれば、莫大な費用と専門スキルが必要ですが、少ない職員が大量の通勤客を載せて環境負荷も少なく正確に運行できます。

 

どちらが良いかは文化にもより、個人の自由を重視するアメリカは車社会、社会秩序も重視するイギリスや日本は電車の比率が高いように、流通業界は安く柔軟なオープン系、金融業界は集中管理でき監査対応もしやすいメインフレームの比率が高いと思います。

 

最初に都市計画を作って進めるか、身軽に個々の課題をクリアし続けていくか、という方法論の違いな気もしますが、リスクは常にある以上、片方が「正解」とか「間違い」と断定はできなと思います。

 

COBOLとバッチで古臭く非効率?

これは両論ありますが、日本では国産メインフレームの機能拡張が止まってしまった事も背景にあると思います。

 

20年前から以下見解がありますが、今も基本は変わっていないと思います。

zシリーズの場合は、オープン系を含めた包括的なソリューションを提供することで、逆に、以前からのメインフレーム系のサポートも続けられる。ところが、そうではない日立、富士通のユーザーはどうするのでしょうか? いわゆるレガシーの問題が大きくのしかかってきていますよね?

 

IBMは、全世界にまたがる多数のユーザーと自らのビジネスを守るために、オープン環境と従来のアーキテクチャが共存できる「zシリーズ」を世に送り出した。この「z」は、C/S方式の脆弱性や運用の複雑化を嫌う世界の大企業ユーザーに受け入れられ、既存のシステムを吸収しながらデータベースサーバーとしての地位を確立しつつある。

 

一方、富士通、日立といった日本のメインフレーム・メーカーはどうしたのか。オープンサーバーの出現でIBM互換機路線と縁を切ることができると考え、早くからオープン環境に適合できるサーバーの開発に傾注していった。当然、既存のメインフレームシステムはアーキテクチャの継続性が保証されなくなり、その時点からレガシーへの道を歩み始めたのである。

 

ascii.jp

 

以下も20年前ですが、似た趣旨かと思います。

日本はメインフレーム大国である(略)日本は世界の中で最もメインフレームを出荷し続けている国となっている。

 

米国のほとんどのメインフレーム・ユーザーは、オープン・ソフトウェアを使っている。そのため、メインフレームが自社の要望に合わなくなれば、すぐにオープン・システムへ移行できるが、日本ではそれができなくなっている。つまり、米国のメインフレーム・ユーザーは、時代に則してオープン・システムに移行できるのに対し、日本のユーザーはメインフレームと心中するしかない状態にあるわけだ。

 

atmarkit.itmedia.co.jp

 

⑥絶滅するの?

10年後にはメインフレームは絶滅する」は、1990年代からマイクロソフトが言い続けていますが、それは技術的見解というより、当時から金融業界や官公庁などへのNT進出に熱心なマーケティングもあったと思います。

 

またIBMなどメインフレーマーは逆に、2000年代以降はあまりメインフレーム(最近ではサーバーも)を前面に出さず、クラウド・AI・ブロックチェーン・量子コンピューティングなどを宣伝しますが、これも企業イメージ戦略を含めたマーケティングでしょう。(ソリューションを提案して、製品やサービスはその中で販売する。)

 

マスコミはマッチポンプで双方に記事を販売でき、メーカーは「自社パンフより中立的」な販促ツールを得て、ユーザーも社内でシステム部門が財務部門などへの説得材料になるという「三方よし」ですね(笑)。

 

そもそもコンピュータは道具なので、オープン系などの汎用機器で済めば通常はその方が有利ですが、差別化として投資する企業がいる事も事実ですし、結果的に成功するかはケースバイケースです。

 

時代と共にオープン系やクラウドの比率が高まるのは自然ですが、メインフレームやオープン系の片方が絶対悪や理想のように言うのは、ちょっとマーケティングに踊らされていると思います。

 

少なくともCOBOLなどの言語自体への批判は見当違いかと思います。COBOLFORTRANに次ぐ元祖業界標準(オープン)言語で、多くの大手ユーザーで現役ですし、多くのミドルウェアでサポートされ続けています。

 

逆に世界的にはメインフレームでCやJavaも多く使われていて、COBOLは単に選択肢の一つにすぎません。(日本では進化が止まってしまったシステムが多く、その言語にCOBOLが多いという話と思いますが、それはCOBOL自体に問題がある話ではありません。)まぁ私はS/370アセンブラーかPL/IREXXでしたが全て忘れました(笑)

 

www.ibm.com

 

(さいごに)

メインフレーム全体で、入門的な記事には以下もあります。これも日本的に、最初のメインフレームはシステム/360と書いていますが。

atmarkit.itmedia.co.jp

 

ブログを書く効率が悪くて2週間かかってしまい話もあちこち飛びましたが、読んで頂きありがとうございました(ペコリ)

 

(2023/5 追記)当記事の1年後に、内容重複しますが表を多用して追加情報を入れたブログも書きましたので、よければご覧ください。

rabit-gti.hatenablog.com

 

ウクライナ侵攻:論点まとめと意見

2月24日開始のウクライナ侵攻から2か月経過したが、短期間で首都陥落との予想を覆して主戦場が東部に移って長期化懸念の中、世間の主な論点に意見を書いてみたい。

 

なお私はこの侵攻はロシア側の明白な国際法違反で、即時停戦して撤収すべきと思うし、微力ながらユニセフとUNHCRに寄付もしたが、同時に安易な勧善懲悪や便乗論も問題で、安全保障は本来は理性的・長期的に考えるべきもの、と思ってます。(最終更新 2022/4/25)

 

 

どちらが悪い?

侵攻開始2日に書いたように、ロシア側の純粋な国際法違反としか考えられない。ロシアはブダペスト覚書でウクライナ主権国家と国際的に認めたので、後から歴史的経緯や軍事同盟の選択を理由にして他国の主権を侵害する事はできない。

 

仮に「ナオナチによるロシア系住民虐殺の救済」なら事前(緊急でも直後)に国連に調査団を依頼すべきで、安保理理事国で親ロ派支配地域なら容易な筈なのに動きなく、ロシアも参加のOSCE監視員からの虐殺報告も無いなど、説得力が無い。

 

歴史的背景がある?

歴史の理解は重要だが、それで国際法上の国家主権が軽視できる訳ではない。この点、好き勝手な私論を述べる一部の歴史学者や政治家も困ったものだ。

 

確かにウクライナはロシア、ベラルーシ白ロシア)と共に中世のキエフ大公国をルーツとするが、東のロシアや西のポーランドなど、どの時代、どの関係を重視するかで結論は自在に変えられるので、きりがない。

 

例えば戦前日本でも任那日本府白村江の戦い、更にはジンギスカン義経説などが強調されて大陸進出の正当性を与えたし、逆に日本は中国の冊封(広く言えば属国)を受け入れた時期も長く、東日本や九州・沖縄は本来は原住民の土地とか言えば、日本も昔から純粋な独立国家だった訳でもない。

 

これら歴史の解釈と、近代国際法上の主権国家は分けて考える必要がある。

 

国際法は意味ある?

普段は「国際法は理想論で信じるのはバカだ、国際関係は力だけだ」と公言している論者が、今回は突然「ロシアは国際法違反だ」と口を揃えているのは奇妙でもある。

 

しかし法律の基本は共通ルール(最低限の社会的規範)だ。確かに強盗罪があっても強盗は無くならないし、法を守らせるには権力(強制力)が必要だし、更にどの程度から強盗かとかのグレーエリアや法解釈もあるが、それでも法があるからこそ罪かどうかの基準が存在し、理性的な議論も可能となる。

 

近代国際社会は国際法を基本として、確かに色々不完全ながらも、覇権国家ですら国際法の形で正当性と安定性を確保しているのも事実なので、単純な国際法無用論も万能論も幼稚で、理性的な議論をして欲しいものだ。

 

国連は機能不全?

安保理常任理事国の拒否権の背景は、第二次世界大戦を防げなかった国際連盟の反省で、戦勝国である五大国が将来も離脱しないための敢えて不平等な規定なので、これを無くす事は極めて困難だろう。安保理改革案も単に理事国の増加案がほとんどだし。

 

ただしアメリカのイスラエル擁護など大国は拒否権を多用しており、国連は世界連邦でもないので、不一致ならば機能不全は従来から当たり前で、今回が特別なわけではない。

 

プーチンは狂った?

独裁者は「何をするかわからない」と恐れられる事を望むので、安易な狂人扱いは良くないと思う。

 

残念ながらプーチンは従来からの路線(旧ソ連支配圏でロシア離れが見られた国では、親ロ派とロシア軍による占領・独立宣言・ロシアへの編入依頼)を継続しており、今回は地域がヨーロッパなので騒がれているだけでもある。

 

特に西側でこれらを軽視したのが日本で、日ロの独自外交は確かに必要だが、クリミア占領という純粋な国際法違反を(日本から遠いからと?)軽視したのは問題だったと思う。

 

バイデンは失敗?

バイデン大統領の「NATO加盟国は防衛するが、第三次世界大戦を防ぐためウクライナへの直接介入はしない」表明は「弱腰で、ロシアに自由度を与えて失敗」との批判も聞くが、多分「軍事行動の意図や範囲は隠した方が威圧できる」との古典的発想なのだろう。

 

しかしNATO加盟国以外の戦争に直接介入しないのは、共同防衛条約であるNATOとしては法的に当然だし、プーチン旧ソ連支配地域の件で威圧に引くとは思えない。

 

また自国内の懸念や反戦運動を事前に抑えて、ロシアからの批判にも「直接介入ではない」と言えるので、民主主義(法治国家)陣営のリーダー格としてはスタンス明確化は適切で、現時点でも有利に働いていると思う。

 

NATOはなぜ参戦しない?

NATOは加盟国間の軍事条約だから、まだNATO加盟国でないウクライナの防衛義務はない。

 

仮にロシアがモンゴルに侵攻したり、中国がベトナムを侵略した場合に、いくら国際法違反でも日本の自衛隊が参戦する義務が無いのと同じ。

 

NATOの東方拡大も悪い?

ウクライナでの戦争がNATOの代理戦争的になっているのは事実だが、NATOの東方拡大はポーランドなど各国の加盟要望の結果で、NATO側(特に仏独)はむしろロシアに配慮してウクライナの加盟も遅らせるなど、NATOが積極的に東方拡大を進めた訳ではない。

 

ロシアは旧ソ連諸国を引き留めようと国際相場より低価格の天然ガス供給を続けたが、西欧の魅力の前に離れていってしまった形で、残念なのは判るが、だからと言って軍事侵攻して良い事にはならないし、それでは「兄弟」は復元不可能だろう。

 

なぜ停戦できない?

ロシアの停戦条件が「停戦」というより「降伏」だから。日本への条件に例えるならば「日米安保を破棄しないと行動を起こす」と脅して、侵攻後は「日米安保を破棄して、降伏して、政権を渡して、北海道を譲ること」と条件を更に吊り上げた形で、どう見ても全面降伏で、停戦条件とは言えない。

 

ウクライナ側は単に即時停戦と撤退、つまりロシア側が侵攻前に戻る事を要求している。

 

ロシア軍は民間人を無差別攻撃?

民間人を狙った攻撃は国際法違反だが、残念ながらチェチェンやシリアでロシア軍は民間人への無差別的攻撃も多数報道されているので、ロシア軍としては特殊な行為ではなく、単に「ヨーロッパで兄弟国にも同じ事をするかどうか」だけの話と思う。

 

これは報道側も同じで、同等の残虐行為が中央アジアや中東より、ヨーロッパだと途端に大騒ぎする傾向があるのも残念ながら事実だ。

 

経済制裁は効いてる?

ロシアの防衛策や中国の天然ガス輸入もあり、既に持ち直し説と長期的には破滅説があるが、経済制裁は各国の運用次第だし抜け穴があれば弱まるので予測が難しいが、少なくとも北朝鮮やイランよりは耐えられるのではないか。

 

金融やスポーツのロシア排除は良いのか?

本来は政治や軍事から中立であるべきだが、今回は被害の程度も考えて特別にやむを得ない、というところか。

 

ただし問題(副作用)はある。SWIFTは政治的中立を前提にした国際決済システムなので、今回のロシア銀行の一部排除は約束違反だし、中国などが独自の決済網を拡大して世界金融が非効率になる恐れはある。

 

スポーツも、アラブ諸国から見ると従来より占領者イスラエルとの試合を拒否して、スポーツの政治的中立性規定から処罰を受けてきたのに、今回は欧米がロシア排除とはダブルスタンダードで人種差別、との批判もある。確かに国際世論が欧米視点で日本も影響を受けているのは事実と思う。

 

ロシア軍は弱い?

もともと多くの軍事筋は「投入兵力からウクライナ全土占領は無理だが、首都など主要都市は数日で陥落」との観測だったので、色々な推測が飛び交っている。ジャベリンだけで抗戦できる訳でもなく、仮に当初の電撃作戦は失敗でも、制空権確保が不十分とか、全体の指揮官が不在だったとか、大量の兵器を破壊せずに残して敗走とか、近代化された軍とは思えない。

 

推測の中では、権威主義汚職が蔓延して肝心の装備・訓練の手抜きや横流しが横行していた説が有力なのではないか。アメリカが莫大な支援をして実態が無いイラク軍や旧アフガン軍のように。

 

ロシア軍は現在も兵力で圧倒だが、他国への輸出や軍事顧問の評価は暴落中だろう。

 

ロシア語やロシア料理も悪い?

日本でロシア語の看板や料理店へのクレームも報じられており、愚かしい。

 

ウクライナでもロシア語は地方言語で、ゼレンスキー大統領もロシア語が母語なので、演説も常にプーチンや残虐行為を批判しても、ロシア人やロシア語は批判しないよう配慮している。

 

排斥行為は、むしろプーチンの「ネオナチや過激な民族主義者がロシア系住民を迫害しているから」との主張に正当性を与える愚かな行為だと思う。

 

降伏すべき?

人生観にかかわる話は極論が多いが、最後に決めるのは本人だろう。

 

「まずは人命最優先で降伏しろ」とか「いや、降伏すれば虐殺や強制移住させられる」とか言うが、降伏で100%助かる保証もなく、逆に占領地のウクライナ人が100%虐殺された訳でもない(キーウ近郊の同じ村内でも地区により大差があるようだ)。

 

人類の歴史ではガリレオなど服従した人も多いが、ソクラテスなど自分の命より信条を優先した人もまた多く、アドバイスは自由だが命令するものではないだろう。

 

日本の防衛費を倍増?

防衛予算は周辺の脅威状況を見て長期的に計画整備するもので「プーチンが恐いから倍増」とか「もしプーチンが辞めてソフト路線のメドベージェフとかが就任したら半減」とか、政治家が票目当てで安易に提案すべきものではない。

 

ウクライナの例を見て防衛意識を再認識するのは普通だし、中ロが警告的な行動を増やしているので偶発リスクは増加中だが、実は日本への軍事的脅威は冷戦期より高くないと思う。

  • ロシア・中国・北朝鮮はそもそも対日侵攻能力がほぼ無い
  • ロシアは長期間ウクライナと周辺にリソースの大半を割かざるを得ない
  • 中国が離島侵攻しても反撃容易、ロシア苦戦を見て台湾侵攻も後退か
  • 北朝鮮は韓国より弱小なので、対日は無視で対米の瀬戸際戦術ばかり

 

仮に自衛隊強化なら、高価でアンバランスな対米従属の正面装備お買い物より、まずは定員充足や基本装備改善だし、NATO諸国の装備も当て馬でなく検討すべきではないか。

 

憲法自衛隊明記?

ウクライナは戦力不保持で侵攻された訳ではないので、日本の憲法9条は全く関係ない便乗論。自民党案の自衛隊明記も、憲法は組織名を記載するものではないし、記載しても何も変わらないとの説明ならば、政治家の実績作りだけで意味は無い。

 

日本も核共有?

「日本独自の核武装は大変だが、共有なら容易かも」と思っているのかもしれないが、実現可能性が無く、政治的に無責任な議論だ。

 

NATOの核共有は、英仏より前線に近いのに核兵器保有の独・伊・ベルギー・トルコなどが、アメリカの保有する核兵器の運搬(戦略爆撃機)任務を分担(共有)するもので、核兵器自体の保有の共有ではないし、使用にはアメリカの承認が必要だ。

 

日米安保核の傘では、アメリカが第三次世界大戦のリスクを負ってまで日本を守るか信用できない」が理由の人もいるが、各共有もアメリカの承認が必要だから変わらない。

 

そもそも「アメリカは対日防衛義務があり、核の傘も提供しているので核共有は不要」と主張しているアメリカに「貴国は信用できないから共有させて欲しい」と交渉するのか?アメリカから見れば自由度が減ってリスクが増えるだけで合意可能性は皆無だろう。国内向けのやってる感アピールのために同盟国に迷惑をかけるようなものだ。

 

また核兵器戦略爆撃機の基地は敵側からの攻撃対象になるが、平地が限られる日本は軍事的に有利とはいえない。

 

今後は?

ウクライナの抗戦意思が強く、プーチンも妥協しないはずなので、チェチェンのように10年など長期化しうると思う。その場合はロシア軍は更に消耗して軍事強国とは呼べなくなるかもしれないが、ロシア連邦自体の解体説は可能性が高くない気がする。構成共和国は中央への依存が大きいので独立すれば弱体化しそうなので。

 

可能性が高いのは、東部2州を何割か占領した頃に停戦するが、帰属は絶対に合意できないので分断国家が長期間続く。つまりジョージアモルドバと同じ。

 

プーチン失脚の可能性だが、軍、治安部隊、報道機関、オリガルヒなど部下による財閥、正教会なども広く支配する利権が絡み合った権威主義体制なので、仮にプーチン本人が死亡や追放されても類似の後継者が表れて、社会が短期間で変わるとは思えない。権威主義体制とはそういうものだ。(北朝鮮と同じ)

 

そもそもロシアは中国や北朝鮮とは異なり法律上は民主的な資本主義社会だが、経済不安克服を背景に徐々に政府批判を統制して野党を弾圧して今の社会になった。これはムッソリーニヒトラーやトランプも類似で、どの民主国家も不安を背景に自由を軽視すれば容易に権威主義体制に陥りうるので、自由と民主主義は地道な努力が無いかぎりは続かない体制、と思う。

 

以上

 

ウクライナ侵攻:プーチンの主張と国際法

2月24日にロシアのウクライナ軍事侵攻が始まったが、まずは冷静にプーチン大統領の主張を国際法に照らし、次に現実的な予想と、最後にアホ論批判を書いてみた。(記 2022/2/26、最終更新 2/27)

 

 

1.プーチン国際法

プーチン大統領は侵攻前の2月21日に1時間のテレビ演説でロシアとウクライナの歴史的経緯について述べたが、現時点ではこれが一番プーチンの見解として詳しいと思われる。欧州政治専門家として活躍中の今井佐緒里氏による翻訳(英文経由)より引用。

 

ウクライナは我々にとって、ただの隣国ではないことを改めて強調したい。私たち自身の歴史、文化、精神的空間の、譲渡できない不可分の (inalienable) 一部なのです。

 

現代のウクライナはすべてロシア、より正確にはボルシェビキ共産主義ロシアによってつくられたものであるという事実から説明します。

 

ソ連の崩壊後に(中略)我々の国は、ウクライナの尊厳と主権を尊重しながら、この支援を提供しました。

  

ウクライナには、実際には、真の国家としての安定した伝統がなかったことには留意する必要があります。 

 

ウクライナでは、安定した独立国家の状態が確立されたことはなく

 

ウクライナの人々は、自分たちの国がこのように運営されていることを認識しているのでしょうか。自分たちの国が、政治的・経済的な保護国どころか、傀儡政権による植民地に落ちていることに気づいているのでしょうか。

 

news.yahoo.co.jp

 

どうでしょう。「ウクライナはロシアが人為的に作った国で、ソ連崩壊後に主権を認めて援助したが、その後も独立国家になっていない」(だから侵攻しても良い?)との趣旨の反復で、かなり露骨です。

 

実はプーチン大統領は従来より「主権」の概念を大国主義的に使用して「外国の影響を受ける国は真の主権国家ではない」(真の主権国家覇権国家の米露中くらい?)というような表現を使用しています。

 

ウクライナの真の主権はロシアとのパートナーシップがあってこそ保持できる

www3.nhk.or.jp

 

ウクライナには「真の主権」は無いのか?ロシアの属国なのか?

 

プーチン氏は、米軍基地問題について「日本が決められるのか、日本がこの問題でどの程度主権を持っているのか分からない」と指摘。

www.asahi.com

 

→ 日本も限定的な主権国家なのか?(現政府の決定権が不明、ならともかく、他国の主権への疑問とは)

 

当然ですが国連憲章では加盟国の領土保全が明記され、ロシアも加盟国で安保理の常勤理事国です。

 

第2条
この機構及びその加盟国は、第1条に掲げる目的を達成するに当っては、次の原則に従って行動しなければならない

4.すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない

 

www.unic.or.jp

 

もちろん第二次世界大戦以降も国際社会で武力侵攻は多々発生しているのが現実ですが(後述)、それでも多くの場合は「自衛」や「自国民保護」などを名目にしていて、大国が相手国の主権自体を認めない例は少ない。

 

そもそもキエフ公国などの歴史的経緯は国際法上の主権の話には関係ないアメリカ合衆国の領土拡大など領土変更は普通なので、国際法上は最後の変更が合法かどうか(仮に違法と思う場合は少なくとも継続的に抗議しているか)がポイントですね。

 

余談ですが日中韓が領土問題で繰り返している「近代以前の地図にあるから固有の領土」の主張合戦も同じで、国際法上は全く無意味と思います。そもそも「固有の領土」も歴史を遡れば各原住民が住んでいて、更に人類のルーツならアフリカですね(笑

 

近代以降で見ても、ソ連はロシアやウクライナなど各社会主義共和国が構成する連邦国家でしたが、実はレーニン主張の民族自決原則により、ウクライナなどの各構成共和国は名目上は主権を持ち、連邦離脱権もありました。もちろん実際には、特にスターリン後にソ連共産党による中央集権的支配が続いたものの、この規定と各国国家制度があったことで、クーデター失敗後のソ連共産党解体後に各共和国が迅速に離脱して「連邦解体」できたのも事実です。

 

なおソ連当時でもウクライナは(ソ連とは別に)国連に議席を持っており、主権国家扱いされていました(ベラルーシも同様です)。更に余談ですが、レーニン民族自決原則を広めたのがウィルソンで、後にナチスの侵略に悪用されました。

 

そしてここが一番重要ですが、ソ連崩壊後の1994年にロシアはウクライナの「独立的主権」を認めました

ウクライナは1994年12月7日、米国・英国・ロシアなどと「ブダペスト覚書」を締結し、当時世界3位規模であった核兵器を放棄するかわりに、領土の安全性と独立的主権が保障されることになった。(略)この文書は国連安保理が履行を保証した国際的合意

news.yahoo.co.jp

 

上記引用部分の記事内出典元がウィキペディアなのがいまいちですが。

 

 ところでこの合意を米英も守っていないとの批判もありますが、基本は各合意国のウクライナ主権尊重義務で、各合意国のウクライナ防衛義務まである(軍事同盟)と読むのは無理がある。つまり違反は侵攻したロシアだけです。

 

ではプーチン大統領は、上記のブダペスト合意は、どう説明しているのか。

 

2014年3月4日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はブダペスト覚書の違反に関する質問への回答として、ウクライナの現状は革命だとして「新たな国家が起ち上がった時で、しかしこの(新たな)国家との、この国家に関しての、義務的な文書には何ら署名していない」と述べた。(略)ロシアは、米国がブダペスト覚書に違反していると言い出して、ユーロマイダンは米国が扇動したクーデターだと述べている。

 

sn-jp.com

 

ウクライナで親ロ政権が倒れて新欧米政権になったが、それはクーデターで新国家なので、過去の合意は無効だ」という、かなり凄い論理ですね。

 

ロシアが日ソ友好条約を、もはや前提が変化して無効、と時々言うのと似てますが、しかし条約等は国家間の約束で、政権ごとの約束ではない。仮にその国内で違法なクーデターや暴力革命でも同じで、今のロシアが「ソ連の継承国家」として国連安保理常任理事国でいるのと同じです。

 

プーチン大統領の主張は「自国には完全な主権があるが、影響圏の周辺国には限定的な主権しかない」という大国主義・権威主義で、対等な主権を認めたウェストファリア条約(1648年!)以来の近代国際法の原則から逸脱しており、19世紀的な古典的帝国主義で、ロシア帝国ソ連の再来、などと言われて仕方が無いレベルです。

 

なおナチス・ドイツによるオーストリア併合・ズデーテン併合などの大ドイツ主義と比べると、ロシアは現状では「ナチス的なウクライナ政府から迫害されている2州の独立を支援」との主張ですが、2州のロシア系住民にロシア国籍を与えて同一化を進めているなど、発想としてはヒトラーの極端な民族自決1つの民族、1つの帝国、1人の総統)に類似しています。(恐らく「独立」後に「住民投票でロシア編入」が次のカードになるクリミアパターン。)

 

ここまで、ロシアのウクライナ侵攻は、国連憲章にもブタペスト覚書にも反する明白な国際法違反で、力による現状変更(他の主権国家に対する侵略行為)であり、そしてロシア側主張は近代国際法の基準を逸脱している(つまり無意味)、との見解を書きました。

 

しかしウクライナと欧米側も単なる被害者とも言えない

  1. ウクライナは2014年マイダン革命(クーデター)以降の親欧米政権で、少数民族言語の地位縮小などナショナリズムを強化し、少数派のロシア系住民から見てナチス的との批判の余地を与えた。
  2. 欧米はコソボ独立やイラク戦争などで、国連決議を踏まえない武力行使や分離独立承認(力による現状変更)に踏み切り、ロシアはジョージアグルジア)やウクライナで同等の行為をするようになった。

従来は、東ティモールアフガニスタンへのアルカイダ引き渡し要求など国連が介在していたものの、「対テロ戦争」を理由に「欧米有志連合」が国連安保理を踏まえず軍事行動(相手国の主権の軽視)をするようになり、ロシアはチェチェンで、中国はウイグルなどで同様の主張をするようになった。

 

問題はあっても一定程度に有効だった法的秩序を軽視すれば、「自分も同じ事をやって良い」という者が出現するのは時間の問題で、ロシアはジョージアでもウクライナでも「ネオナチ的なナショナリスト武装勢力が住民をジェノサイドしているため、人道的見地から止む無く分離独立を承認する」と、コソボの欧米とそっくり同じ表現を使っています。

 

勿論、A国が国際法違反すれば、B国も違反して良い訳ではありませんが、国際法は国内法以上に裁判所などの仕組みも弱いので、例外を黙認すると形骸化しやすく、現状には欧米側の責任(更には追随した日本等)も一部あると思います。

 

良く「国際法は理想だ、現実は力だ」という人もいて、それも一面の真実ですが、しかしルールを軽視すればいずれ相手も真似し、最後は単なる弱肉強食な無法地帯で、自分が困った時に主張もできず、今回のロシアも批判できません。

 

力を背景にしながらも説得力ある明文化したルール(法)を合意し運用して平時には安定共存を狙うのが、古代ローマ帝国や秦などの覇権国家であり、人類の知恵と思います。

 

2.現実的な予想

テレビやネットでは「NATOが反撃して第三次世界大戦か」など極論も見られるけれど、国際法上は許容できない事態ながら、現実的に見れば(ウクライナには気の毒ですが)「旧ソ連内(ロシア影響圏内)の地域紛争」で、常に偶発戦闘のリスクはあるものの、恐らく以下でしょう。

  1. 空爆で制空権を握り「武装解除・中立化」(=NATO加盟放棄)を強要
  2. 必要なら首都キエフ占領(親ロ政権樹立?)
  3. 必要なら東部2州の親ロ派支配地域に公式進駐、更に2州全体の占領
  4. ウクライナ全土占領は不要(しても一時的か)

 

ロシアは欧米と異なり長期政権で長期戦が可能で、上記2-3は即実行しなくてもカードとして温存し圧力をかけられる。チェチェン戦争では親ロ政権を立てて延々と戦争を続けた(イスラム主義者を敵にしたが「対テロ戦」扱いにした)。

 

他方のNATOは、増強は周辺のNATO加盟国への小部隊のみという外交的&国内向け姿勢だけで、ウクライナでロシア軍と戦う意図はアメリカもNATOも当初からなく、そもそもウクライナ防衛義務は無いので、仮に参戦したら自国民に説明がつかないです。(アメリカでもウクライナ支援の参戦論は低く、バイデンも「民主主義 v.s. 権威主義」は掲げたいが本音は中国に集中したい。)

 

そこで経済制裁はするが、実はロシアにはクリミア侵攻で制裁済で、各国とも大きな追加は困難でしょう。そしてロシアの次の対応を抑止するには、その次の経済制裁も残す必要もありますが、上記のようにロシアは長期戦で「次」のカードも山とあります。

 

ロシア側には占領のコスト(ゲリラ戦による損害の他、ウクライナは欧州貧困国で、既に2州新ロ派支配地域もロシアがインフラ負担中)、制裁による経済失速、国内の反戦運動ウクライナ(更にはバルト三国フィンランドなど)を更に親NATOにするリスクはあるけれど、マスコミを握って国内の政敵は「外国の代理人」(外国のスパイの意味)扱いで国内は安泰、当面は天然ガス高騰で有利、長期的にも本気度を見せた方が交渉も有利、との判断ではないでしょうか。

 

ところで過去のバルト三国ポーランドなどのNATO加盟容認は、当時はロシア経済も上向きで西側との関係改善の期待もあったから、との説があり、経済停滞で国民の不満を外に逸らすとの古典的パターンならば今後も永く続きそうです。(日本も経済停滞後に排外主義的主張が増加しましたが。)

 

3.アホ論への批判

上述のように、国際法的には主権国家に対する許容できない純然たる侵略行為ながら、残念ながら現実には過去に多数ある地域紛争の1つにすぎないのも事実なので、よく聞く無理解または便乗論を批判します。

 

NATO応戦で、第三次世界大戦の危機だ」

  • 上述のようにNATOは周辺国警戒のみでウクライナ防衛義務もない。ロシア軍はウクライナ以外へ行く必要性は無い。黒海などで偶発戦闘リスクはあるが、両者開戦の可能性は常識的には極めて低い。

 

常任理事国による他国侵攻で、国連安保理は機能不全の大事態だ」

  • 残念ながら、全く珍しくなく大袈裟。植民地独立戦争を除いても以下もある。
  1. ソ連(ロシア)のハンガリー動乱プラハの春アフガニスタングルジア、クリミアなど
  2. 米国のベトナムパナマイラクなど(朝鮮戦争は一応国連軍)
  3. 英国のフォークランド紛争
  4. 中国のチベット侵攻中越戦争

 

ウクライナ核兵器を放棄したから侵攻された」

 

「トランプなら断固対抗した。バイデンは弱腰だ」

22日に出演したPodcastでトランプ前大統領はこう語った。

「『これぞ天才だ』という言葉が口をついて出た。プーチンウクライナの……大部分の地域の……独立を宣言した。ああ、見事だ……『なんて賢いのだろう?』。彼はこのまま進み、平和の使い手となるだろう。最強の平和軍だ……我が国の南部国境にもあったらどんなにいいだろうに。私が目にした中で最強の平和軍だ。かつて目にしたことのない数の戦車だった。彼らなら見事に平和を維持するだろう。非常に頭の切れる男だ……私は彼のことがよくわかる。とても、とてもよくわかる」

news.yahoo.co.jp

 

 

「日本も憲法改正が必要だ」

  •  ウクライナは軍保持なので、一国では大国から防衛困難とは言えるが、日本の憲法9条とは関係ない。そもそも9条1項の戦争放棄は、不戦条約や国連憲章と同等の侵略戦争禁止(自衛戦争禁止ではない)、というのが学界多数説かつ政府見解で、数十か国の憲法に類似の規定があるらしい。

 

「日本もNATOに入るべきだ」

 

「日本も核兵器を持つべきだ」

  • これもアメリカが容認しない(アメリカは自国の手足となる各国軍備を要望)。仮に持つならば狭い国土に核実験場や運搬手段や廃棄施設も必要で、NPT脱退すれば韓国・台湾・フィリピン・ASEAN諸国などの核武装ドミノで地域不安定化の恐れも。それともアメリカから自立して自国防衛?
  • 仮に核武装して大国が侵攻した場合、自国内で敵に核攻撃するのか、それとも敵国に運搬できるのか。(なお北朝鮮への攻撃困難は、ロケット弾でソウルが火の海になるためで、核ミサイル開発はグアム米軍への牽制用なので、核保持により攻撃されない訳でもない。)
  • 核武装すれば国際社会で常任理事国(五大国)扱いされる(尊敬される?)と思うのは単純すぎる。北朝鮮やロシアやパキスタンを批判できなくなる。

 

「日本も核シェアリングの議論をすべきだ」

  • 目的は非核三原則の一部緩和のようだが、実現性は低い(ドイツ等の核兵器シェアリングは、NATOが前提で、アメリ保有核兵器を各国が保管・使用できるが、敵国領土への使用にはアメリカの承認が必要など、基本はアメリカの核の傘。また国土の狭い日本では保管基地への攻撃リスクも高い。)

 

以上です。

ネトゲ「ラスバレ」無課金で強くなる(3) 1周年を目前にして

「アサルトリリィ Last Ballet」(ラスバレ)のリリース1周年(2022/1/21)を目前に、完全無課金でどこまで遊べるか、強くなれるか、をゲーム素人ながら試した話です(2021年5月の1回目2021年7月の2回目の続報で、今回で最後です)。

 

もちろん重課金ユーザーと比べると強さは何割か落ちますが、遊べる内容や世界はほぼ変わらずに長くプレイ出来て、中位?ユーザーとして活躍できる印象です。

 

 

1.無課金のコツは?

課金アイテムの石(マギジュエル)の節約(効果的使用)に、前回7月に書いた内容ですが...

  • 使うのは11連ガチャだけ(初期はデイリーの回数倍増もあり)
  • 運営は色々な記念で大量配布して、2週間ほど兵糧攻めのパターンなので、「一定数溜まったらガチャ」ではなく、自分の使用ポリシーを決めておく
  • イベントガチャ(星5割合3%)での特効メモリア狙いは避けたい(単純計算では特効2%なら11連x10回で2枚の割合だが外すリスクも高い)
  • お得ガチャ(星5割合5%、月別メダルやメモリアメダルあり)でメダルを溜めておいて、新イベ開始時にその新イベ用特効を即2枚ほど入手したい(メモリアメダルは有効期限が長いが、月別メダルは短いので新イベ開始日を睨んで)
  • 仮に微課金なら、有効期限の近いメダルがメモリア交換に少しだけ不足の場合や、汎用性ある課金オーダー付が良いと思う

 

どうしても強いメモリアは少な目となり、課金ユーザーとの実力差は出ますが、決定的な差は上記の課金オーダーの有無くらいなので、日々こつこつやればある程度はカバーできる気がします。

 

2.強くなれた?

2021年1月のリリース月から始めた2アカウントとも以下で、まぁ中堅レギオン(チーム)なら末端ですが、下位レギオンならエースも狙えます。

  • ランク 122
  • 総戦闘力 28万(マルチ用ユニット)
  • 総戦闘力 59万(ソロ用ユニット)

 

1カウント当りの所用時間は、毎日デイリーミッションやレジェンダリーバトルの消化の20分、週2~3回は夜の仲間(レギオン)とのマルチバトル(レギオンマッチや外征任務)30分に加えて、週1回ほどイベントや編成見直しなどで2-3時間でしょうか。

 

3.ラスバレは変わった?

2021年7月のハーフアニバーサリー以降に感じたこと。

  1. 自動巡回が楽に。当初から「自動巡回で放置しとけば強くなるゲーム」と言われたものの、スマホは数時間占有で発熱も大変だったが、省電力オプション、各イベントの巡回容易化(最終ステージの1 WAVE化)、スキップチケットの大量発行などで、各段に楽になった(ID引継ぎ機能で、就寝時にPCアプリで巡回し、朝はスマホに戻す事は元々できる。)
  2. 上位アイテムの次々リリース。差別化で必要ながら、レジェンダリーCHARM、レジェンダリーメモリア、衣装レベル14、覚醒メモリアなどが登場して、当初の「どのキャラや武器を選んでも大差ない」気軽さは薄れた(ただ上述のように課金オーダー以外は、無課金でもコツコツやれば順次入手できる)
  3. 深刻な不具合は減少。今もバトル中のアプリ突然死など1日1~2回は遭遇するが、バトル結果の報酬が得られないような痛い不具合(無限Loading)は減った。
  4. ギオン参加者は減少傾向?レギオンリーグでのレギオンメモリア入手など、運営は盛んにレギオン参加誘導しているが、多くのレギオンはアクティブメンバーの確保に苦労している(かたや自動承認だけでメンバー急増レギオンもありますが)

 

4.今後は?

ソロ編成で総戦闘力30万(常設イベントのケイブの最上位ステージ)を超えると、以後のソロのイベントもみなクリア容易な消化試合となって、以後は新イベントのストーリーを楽しむ他は、チーム戦(レギオンマッチ等)しか楽しみがなくなるので、レギオンはガチから完全無言まで色々ながら、相性の良いレギオンや仲間を見つける事が以後も楽しむポイントかな、と思います。

 

(おまけ)

復刻イベント「守護天使の誓い」良かったです!

 

以上です。

映画「アイの歌声を聴かせて」の新しいロボットの描き方

「アイうた」の感想の続きで、AI(ロボット)の描き方について改めて3点。

 

なお早期打ち切りが懸念された本作は、一部ファンによる熱心な布教もあり、なんと公開2か月後の現在(12月下旬)も一部都市で上映中なので公式サイトの上映情報を見て劇場での鑑賞がオススメです(中身の無いこのブログでも「アイうた」感想だけアクセス多めが続いていて熱心なファンが多い印象です)。

 

 

1.IoT(モノのインターネット)が普及した街

多くの方が言及のように、舞台は一見すると平凡な日本のローカル都市ながら、IT会社の実験都市との設定で、自宅の壁カレンダーにも玄関にも田植ロボットにもAI、つまりネット接続のインテリジェントデバイスが組み込まれていて、アレクサのように音声応答で気軽に指示できるのが、今風のIT展開イメージでリアルだ。

 

一番なるほどと思ったのは、ロボットは誰でもスマホらしきデバイスを向けて簡単に緊急停止できること。つまり、故障や暴走の可能性は一定程度は社会に許容されていて、非常時は近くにいる人が気軽に止めれば良い、との超ポジティブな発想で、これは新しいと思う。

 

古典的SFではロボットや人工知能の暴走や反乱防止のため、有名なアシモフの「ロボット3原則」などの信頼性設計や、それにまつわる推理や展開、そして非常停止手段などが大きなテーマだった。つまり高いレベルの安全性の保障の実現が、ロボットの社会展開の大前提とされていた。

 

しかし実は人間は日常的に自動車や医療機器などのリスクも高い道具を、故障すれば停止して交換すれば良いと思って多数使っているので、ロボットも動作中はなるべく近づかず、異常に気づいた人が気軽に非常停止して後はメーカーを呼べば良い、という割り切った発想は、実は実現可能性が高そうで、なるほどだ。

 

 

2.シオンがロボットとの描き方

シオンは緊急停止時に、腹からいきなり角ばった機器を射出して停止するのが凄い(笑

 

水着でもクラスメートにバレない精巧な人間型ロボット(アンドロイド)なのに、「そこだけ古風メカか、んなバカな!」なギャグシーンでもある(強いて考えれば、周囲にも一見して停止済がわかるし、駆け付けたメーカー技術者用のローカル操作パネルや交換可能バッテリとかが入っているのだろうけど)。

 

しかし古典的ロボットの鉄腕アトムDr.スランプのアラレちゃんのようにポロリと首がとれたりはしないし、機器射出時の腹も実は服に隠れて毎回見えないし、社内で多数の機器にケーブルで繋がれているシーンも実はベッドの病人のようにも見える。

 

シオンはロボットだけど、露骨にロボットとの映像は実は無いので、観終わった時には人間が演じた演劇を見たような感覚が残り、何でも自由に描けてしまうアニメの自由度を敢えて抑えて、シオンを含めた若者数名にフォーカスしているようで、うまいと思う。

 

 

3.ロボット(AI)は意思を持つのか?

最後に一番重要な点だが「シオン(AI)は意思を持っているといえるのか」「製品ではなく友人なのか」などの良くあるテーマには映画としての結論が無いのが良い

 

観客は登場人物に立ち合うだけで、そんなテーマは考えずに単に楽しんでもいいし、解釈は観客に任されていているのが、作品として潔いと思う。

 

良くある作品での「ロボットも感情(生命)がある」とか「主人公を助けるために想定外の動き(奇跡)を起こした」などの感情移入用のアニミズムなファンタジーもいいけれど、それでは逆に「いや、ロボットやAIは人間が製造した道具だろう」とか「仮に新生命ならば将来反乱もあるうるよね」とも思ってしまう。

 

しかしシオンは献身的だけど、結局は「命令」通りに機能しただけとも思えるし(実現のためのAIによる自律的な探索・推論・試行錯誤も含めて)、山場で信じられない特殊能力を発揮した訳でもないのが、ツールとしてのロボット(AI)の描き方としてリアルだと思う。

 

観客が感動する対象は健気なシオン(AI)なのか、それとも昔のトウマの「命令」に込められたサトミへの想いなのか。解釈は観客に任されているのが、逆に想像が広がって良い作品と思う。

 

なお監督は幼少期からアシモフのロボットシリーズに詳しく、登場人物のネーミングにも反映しているそうですが、小説「私はロボット」は古典ながら推理小説として面白いです。

www.tsogen.co.jp

 

吉浦監督と大河内脚本へのインタビューでは、最初は歌の要素は無かったというのは驚きですが、ミュージカル主導の作品ではないからこそ、本来のロボット(AI)の描き方の筋が通ったのかなーとも思います。

v-storage.bnarts.jp

 

以上です。

映画「アイの歌声を聴かせて」実は名作説は本当だった

10月29日公開で既に打ち切り懸念の「アイうた」だが、ツイッターで実は名作説が聞こえて試しに観たら、普通にとても良くできた映画だった。騙されたと思って無情報のまま観るのが吉。アニメというより映画ファンに。(最終更新 2021/11/14)

 

ポスターなどの画像は、悪いけどキャラデザ、美術、作画どれもキャッチーでないし、新しさが感じられない、つまり地味すぎ。歌の土屋太鳳のファンだけが行く作品かな、とか思う(失礼

www.youtube.com

 

ところがSNSで一部ファンから熱狂的な評判が聞こえてくる。ほんとか?

SNSで広がる『アイの歌声を聴かせて』の感動!ミュージカルアニメ映画史上最高の名作を絶対に今週末に観てほしい理由 | cinemas PLUS

 

公開2週間後の11月13日、早くも渋谷で上映館が消え、109シネマズ二子玉川でも早朝8:30のみで、館内にはポスターなど皆無の扱いで、10シアター中で一番座席の少ない部屋なのに空席半分の中で観ながら思った。

 

クチコミ人気爆発作品は事前認知度は低くても、「カメラを止めるな!」は一見してうまいカメラワーク、「この世界の片隅に」は原作通りのキャラと映像美、そして「若おかみは小学生!」は全編驚きの作画・美術・音響レベルと、冒頭から誘因力があるのに「アイうた」は冒頭もやっぱりキャラデザも美術も作画も平凡な感じだ。

 

最初は「サマーウォーズ」チックに始まり、少しローカルな普通の街で各デバイスだけ最新AI搭載の描写は今風で良いなーとか、主人公サトミがAIシオンに会ってすぐ秘密を守らねばと思うあたり説明セリフが最少でうまいな、と思う程度だったが、典型的な勘違い嫉妬のヤナ女役で出てきたはずのアヤが教室の画面の左下隅で微妙なリアクションをするあたりから、あれ、実は群像劇で演技が細かいんじゃないの、と。

 

そして「ポンコツAIが引き起こす学園ドタバタコメディ」なのに早々に皆にバレて、残り時間は何するんだーとか思ってると、万能イケメン風なのに悩みもあるゴッちゃん、それを理解はできないままで友人達でもある、マニアなトウマや柔道一直線なサンダーとの会話がリアルでホントにありそうだ。

 

そう、2階に居るシオンをサトミの彼氏と誤魔化すトウマが画面隅ではたかれたり、サトミのためのトウマの歌に「歌詞も違うし」と突っ込んだり、アヤがシオンの身代わりに歌おうとしてすぐ諦めてゴッちゃんに突っ込まれたり、登場人物ごとの背景ある細かいセリフや演技が、画面の端を含めて全編続くのだ。実写なら俳優のアドリブもあるけど、アニメでこれって凄いんでは。

 

とまあ細かい発見は以下の長すぎるタグが面白いし、再発見が沢山あるくらい実は凝っている。

#細かすぎて伝わらないアイの歌声を聴かせてのここが好き選手権 - Twitter Search

 

アヤとゴッちゃんだけで1本作れるのでは、なんてツイートも見かけるようにサブキャラも実在感がある。

 

つまり「アイうた」には、宮崎アニメの超絶作画とか、「天気の子」の主観的リアル新宿美術とか、「竜とそばかすの姫」の魅力的な細田キャラとか、そんな花は一切ない。星間エレクトロニクスのツインタワーの外見は最後まで平面的だし、滅茶苦茶動き回るようなアクション作画シーンもない。

 

むしろ、星間に捕まって個別に説教を受けるシーンで、椅子だけ映ったらサンダーが窓に壁を押し付けられる(単細胞!)とか、ベッドでシオンが眼を開けるとか、無暗に枚数を使わずに効果を出しているのがうまい気がする。

 

観終わってから、この作品は地味なキャラデザや作画や美術で正解なのではと思えて来た。シオンの美少女やゴッちゃんのイケメン扱いも所詮はこの高校内の話だし、「桐島、部活やめるってよ」みたいに普通の高校生の登場人物数名に実在感があれば良くて、アニメで映画してて凄いんじゃないか...とか。

 

なおIT関係者としては、古典的な人間vsロボット対立ではなく、代わりに一般人がみな非常停止ツールを持ってるのは納得感あるし、ファイヤーウォールとかビル全体オフラインとか最低限のセリフでうまく済ませてたし、ラストの「空へ」は歌詞だけでなく、ネットへ脱出では別れにならないし人類の生死をAIが握ったホラーで終わらせない配慮もあると思う。まぁパスワードに誕生日(数字8桁だけ?)は、半沢直樹じゃあるまいし、今ではありえないが一瞬のセリフなのでご愛敬スルー。

 

まぁ巨大企業とのバトルはちょっとテンプレ感だけど、最後のカタルシスには仕方が無いし、単純な善悪では終わらないし。

 

そしてミュージカルだけど単なるファンタジーパートではなく、劇中で実際に歌ってるシーンだし、歌詞がいちいち話にシンクロして、エンドロールの後まで旋律が残るのが良い。

 

最後にネタバレは避けるが、AIものなので、やはりアシモフの古典的SF名作「私はロボット(われはロボット)」や、その影響を受けた手塚治虫の「火の鳥」シリーズ、そしてスピルバーグの映画「A.I.」などに流れる、ロボットは果たして自己学習(自己進化)ができるのか、できるならばそれはもはや生命(友達)と言えないのか、といった哲学的発想も共通するし、また作中ではそんな話に触れないのもいいと思う。今もいるのかもって夢があるし。

 

そして一般的日本人が最初に身近な学習型AI(育成ゲーム)としてすりこまれたのは、やはり「たまごっち」と再認識させられた。(オタク向けには赤井さんキャラのPCゲーム「プリンセスメーカー」が先でしたが。)

 

という訳で、地味要素満載ながら、実は映画好きにはお勧めしたいし、伏線回収の嵐なので映画館でじっくりが向くけど、果たして打ち切りか逆転ロングランか注目されますね。

 

PS. これ書いてる途中でTV CFを初めて見たけど、やはりとっても地味~(苦笑

 

(了)

 

消費減税論に反論する。

衆院選から1週間だが、4野党共闘の共通政策にも含まれた「消費減税」に遅まきながら反論したい(4党中、立憲民主党は抵抗したが最後は共闘を優先して合意した)。

 

まずネットで見かける以下の二元論は(一面の真理は含まれているが)単純すぎると思う。

  • 消費増税=緊縮=財政健全派=財務省=高齢者向け政策=悪
  • 消費減税=景気=庶民の味方=市民派=若者向け政策=善

 

結論を先に言うと、私はコロナ禍など非常事態下での一時的な減税は必ずしも否定しないが、消費税(間接税)は世界的に一般的で、それ自体を敵視するのは間違っているし、最後はバランスだと思う。

 

まず自由放任だけで理想の所得分配はできない以上、富裕層への課税と貧困層への再分配は必要で、社会安定化は資本主義のためにもなる。(富裕層による自発的寄付だけで済むというフリードマンなどの極端なリバタリアニズムや、無限に赤字国債を発行して大丈夫という無謀なMMT理論などでない限りは。なお岸田首相の表現は単なる賃上げ誘導を含めた「分配」で、課税強化を含めた「再分配」とは比重が違う。)

 

北欧で「税金とは何か」と聞くと「投資」と返って来るという記事を見たが、民主主義(人民支配)らしい発想で、うらやましい。日本なら「お上が召し上げて勝手に使うから、取られるのは少ない方がいい」などの被支配者の発想が根強い気がする。確かに国庫に亡者が群がるのは万国共通だが、家計でもサークルでも国家でも、課題を整理して議論して透明性を上げて徐々に改善するのがオーナーシップ、しかし不信感で忌避するのは懐疑で、結果はその集団全体の弱体化だろう。

 

では何に課税するか。所得課税は基本だが、景気次第で不安定だし、所得捕捉率次第なので税率が上がれば業種間の不公平感は増す。ブラック経済など豪華消費も課税対象外な現実が広くあり、税務署よ摘発がんばれ、だけでは限界がある。

 

次に資産課税は判り易いが、今は法人化や海外移転など回避策も多く、相続家屋の分散など弊害もある(将来的にはグローバル税制ですが)。

 

消費税(間接税)は消費額に比例するので、富裕層が贅沢するほど沢山払う。なお庶民のマイホーム購入や高額医療などは個別の緩和制度がある。ランチに500円も5万円も個人の自由だが納税額は100倍で、これは節税大企業も暴力団も貧乏人も平等だ。

 

ここで主な消費税批判にコメントしたいが、一部は知られてないだけ、一部は消費税題というより日本の政治の問題と思う。

  • 貧困層エンゲル係数(生活必需品)も高く不利→実は消費税導入時の減税で相殺済、富裕層は全体の消費も多い
  • 贅沢品は高くすべき→それは昔の物品税で、ピアノやワインは税率高いなど、基準が恣意的で業界団体の政治介入を招き、今は貿易条約上も困難で、酒税の発泡酒競争など不毛な企業努力や税金逃れを誘発する
  • 財源あるだけ使われる→事実だが、それを許さないのが民主主義では(悪循環)
  • 全額社会保障が裏切られた→裏切者を批判して戻すべきでは(三党合意では全額社会保障だったが、安部政権は消費税の用途変更を選挙公約に解散し大勝した。)
  • 増税分が法人税減税に充てられている→これは本当で、背景にはグローバル化での各国の減税競争があるが、ピケティ提案のグローバル税制の整備を待つしかないかも。

 

そして「インボイス導入個人事業主が大変」について。

  • インボイスは間接税の追跡可能性、つまり公正な課税の証明だから、先進国の常識で、日本も消費税導入時に「最初は5%なので省略、今後の税率アップ時に検討する」とされたのに放置されてる。これは「関係者も利益を得れば消費税反対しにくいよね」との不健全な益税(日本的買収)なので、早々に正常化すべきと思う。領収書の発行や保管と同じだ。

 

最後にまとめ。そもそも左右とか、若者と高齢者間の対立の話ではない。

  1. 一定の税金は必要だ(再分配=社会安定=進歩主義
  2. 税制の柱として消費税は重要だ(安定性、網羅性、物品中立性)
  3. インボイスも是非必要だ(公正性、不明朗な益税の排除)
  4. 非常時の消費減税はあっていいが、会計や小売りの手間もあり長期的に

 

最後の最後に、上記の「増税進歩主義」の補足です。よく「世界的には左派は増税(大きい政府)なのに、日本の左派は増税反対でおかしい」と言われるが、この理由は小熊英二(慶大教授)の「日本は戦前戦中の軍国主義全体主義・重税)が激しかったため、戦後の左派は平和主義(自由主義増税反対)になった」が妥当に思える。米国では建国の経緯で「右が反中央集権(反連邦)」となり、ドイツは戦間期ハイパーインフレの影響で左右問わず財政規律に厳しくなったように、各国の経緯があるのは自然と思うし、細かく見れば左にも右にも色々な意見があると思う。

 

以上です。

 

(出典集)靖国神社は「英霊の顕彰」(戦死兵士の表彰)施設で、「全戦没者の追悼・慰霊」施設ではない

靖国神社の趣旨を、靖国神社自身やその支持者側、そして批判者側のそれぞれがどのような表現で説明しているかをまとめたミニ出典集です。簡単に確認できる出典から引用し、一言コメントを付けました。

 

先に結論を言ってしまうと、靖国神社は明治の創建以来一貫して「英霊の顕彰」(天皇側で戦死した兵士を優れた霊として祀り、その功績を広く知らしめ表彰する)ことを目的とした施設で、批判的立場からの「死者を選別して戦死を名誉と美化賞賛している」なども立場や表現は異なるものの、基本的な認識は一致しています。つまり、どちらも正しい。

 

しかし「戦争犠牲者全体の追悼の場」とか「不遇な死を哀悼・慰霊する場」とか「不戦を誓う場」などは、どの立場であれ、純粋に間違いとしか言えない。勿論、何を信じ何を祈るかは個人の自由ですが、施設の基本的性格を出典により再確認してみました。

 

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靖国神社(明治時代)

 

1.用語について

もちろん時代や立場により幅や変化もありますが、一般的には以下でしょう。

  • 英霊:特に戦死者の霊を尊敬していう言葉(明治以降)
  • 戦死者:戦死した兵士(民間人犠牲者は通常含めない)
  • 戦没者:戦死と同じだが、全国戦没者追悼式では民間犠牲者も含めている
  • 顕彰:功績を広く知らしめ表彰すること(哀悼や慰霊とは異なる)

 

高橋哲哉著「靖国問題」(ちくま新書)では「追悼・哀悼」と「顕彰」の相違を説明しています。

靖国の祭(祀り)は(略)本質的に悲しみや痛みの共有ではなく、すなわち「追悼」や「哀悼」ではなく、戦死を賞賛し、美化し、功績とし、後に続く模範とすること、すなわち「顕彰」である。

→これは戦前から仏教会と靖国神社の間で議論が続いています。

 

三戸修平「靖国問題の深層」(幻冬舎)も靖国神社と、それまでの伝統的な仏教や神道との相違を説明しています。

靖国神社の起源は、幕末の動乱の中で勤王の志士たちが営んだ同士追悼の招魂祭にある。(略)官軍側の戦死者のみ神道形式で祀り、賊軍の死者は捨ててかえりみないという彼ら独特の追悼方式が確立されていく。これは、怨親平等を宗とするこれまでの仏教的な戦死者追悼のあり方とは異なっていた。また敗死した者の怨霊を恐れて神として祀る御霊信仰菅原道真を神様にするような信仰)の系譜にも、直接は結びつかないものであった。

 

(略)さらに靖国神社の場合(略)それまでの伝統にはなかった「祭神を次々に増やしてゆく神社」という特異な存在となっていった。

 

2.靖国神社

 

「靖国神社社憲(昭和27年9月30日制定)」首相官邸ホームページ)

本神社は明治天皇の思召に基き、嘉永6年以降国事に殉ぜられたる人人を奉斎し、永くその祭祀を斎行して、その「みたま」を奉慰し、その御名を万代に顕彰するため、明治2年6月29日創立せられた神社である。

靖国神社自身による戦後の社憲でも、「顕彰」との表現が使われています。

 

 

靖国神社ホームページ「靖國神社の由緒」(2021年現在)

靖國神社は、明治2年(1869)6月29日、明治天皇の思し召しによって建てられた招魂社がはじまりです。
明治7年(1874)1月27日、明治天皇が初めて招魂社御親拝の折にお詠みになられた「我國の為をつくせる人々の名もむさし野にとむる玉かき」の御製からも知ることができるように、国家のために尊い命を捧げられた人々の御霊みたまを慰め、その事績を永く後世に伝えることを目的に創建された神社です。

→ 一般向けのためか曖昧で無難な表現に見えます。このホームページを更に見ていきます。

 

 

 靖国神社ホームページ 「靖国神社崇敬奉賛会  ご挨拶」(会長 中山 恭子)

靖國神社は、国家のために亡くなられた方々をまつり、平和な世界を実現しようと創建された神社です。本来は国家によって維持される神社ですが、戦後はそれが許されない状況にあります。

→こちらも一般向けのためか曖昧ですが、後半では戦後批判と靖国国家護持(再国営化)の想いが伺えます。

 

 

靖国神社崇敬奉賛会 青年部 あさなぎ 入部のしおり

英霊を崇敬し遺徳を検証することは、今に生きる私達の務めであると考えます。

→こちらは靖国神社ホームページからリンクされているが、少し内輪な別サイト(別ドメイン)のためか、「英霊を崇敬」との従来通りの表現が現在も使われています。

 

 

神道政治連盟「神政連が目指す国づくり」

日本を守るために尊い命を捧げられた、靖國神社に祀られる英霊に対する国家儀礼の確立をめざします。

→神政連は神社本庁関連の政治団体で、靖国の首相参拝や天皇参拝を主張しています。参加国会議員295名。「国家儀礼」とは首相公式参拝天皇参拝、再国営化などと思われます。なおホームページには表面的な内容しか掲載されていません。

 

 

日本会議 「靖国神社Q&A」

Q3 靖国神社に参拝する目的は何か?

人によってさまざまだが、国のために生命を捧げた人々感謝し、敬意を表し、その霊を慰めるという点で共通している。

→近年注目度の高い日本会議ですが、一般向けQ/Aのためか、意外とマイルドな表現が使用されています。なお、こちらもホームページには表面的な内容しか掲載されていません。

 

 

安倍前首相(2021年)

ご英霊に尊崇の念を表した

→典型的な保守派として、基本的な表現を踏襲しています。以下は「英霊」を説明した記載を見ていきます。

 

 

西部邁(「妻と僕 - 寓話と化す我らの死」2008年)

英霊と言うのは、優れた魂ということです。

→保守派の文献では意外と「英霊とは何か」を説明した記載は少ないですが、通常の霊(死者)よりも格上な霊(死者)で、崇敬すべき対象、というニュアンスがあります。なお靖国神社で「英霊」の語を使用したのは明治44年が初出、のようです。

 

 

なお1934年 靖国神社の賀茂百樹宮司は、戦死した兵士は「陛下の万歳を叫んで」死に、「国家大生命に合一した大安心、歓喜」を抱いており、天皇の認可によって靖国神社の祭神となった事を兵士の霊も遺族も「臣子たるもの最高裁上の栄誉として感涙すべき」と説明しました。(高橋哲哉著「靖国問題」より)

 

→これは上述の仏教的な「無念ながらも倒れた者への哀悼や慰霊」ではなく、「国のために歓喜して死んだ英霊への感謝感激」という発想と一致しています。

 

 

自由民主党「自民、靖国巡り「不戦の誓い」削除 運動方針最終案」(2014年)

靖国神社について「参拝を受け継ぎ、国の礎となられた方々に対する尊崇の念を高め、感謝の誠をささげ、恒久平和への決意を新たにする」と明記した。例年とほぼ同じ内容。原案にあった「不戦の誓いと平和国家の理念を貫くことを決意し」との表現は削除した。党内で「不戦の誓いをする所ではない」などと反発が出たため。

→「国の平和を祈る」とは言えても、「不戦」は靖国神社の趣旨には無いので、削除は正しい(というか当然)と思います。削除しなければ、欺瞞になってしまいます。

 

 

3.批判的立場

 

全日本仏教会「首相及び閣僚の靖国神社公式参拝に関する見解並びに要請」(2021年)

国家神道の象徴的な神社(中略)先の大戦まで戦争遂行の精神的支柱の役割を果たした(略)靖国神社特定の基準をもって合祀の対象とした戦没者をまつる神社(略)国家の中心的な戦没者追悼施設であるかのような誤解を招く

→政府主催の全国戦没者追悼式典や、仏教系各派が千鳥ヶ淵戦没者墓苑で行っている慰霊追悼式などと比較して、靖国神社は戦争遂行目的で、民間の空襲犠牲者なども対象としておらず、国の中心的な戦没者追悼施設ではない、との見解。(仏教系各派は戦前・戦中に国家神道により弾圧された。)

 

 

浄土真宗本願寺派 「首相の靖国神社参拝に対する抗議」(2001年)

靖国神社は、軍国主義を推進する政府のもとで、戦争に携わり亡くなられた方を英霊としてまつりあげるため、政治的に創設されたものであります。

→これも立場は批判的だが、「英霊を顕彰(表彰)」との基本性格は一致している。

 

 

真宗教団連合 「首相・閣僚による靖国神社公式参拝中止要請のこと」(2021年)

靖国神社は、国難に殉じた戦没者を「英霊」として顕彰し、祀る神社として創設され、先の大戦まで戦争遂行の精神的支柱として国家神道体制の中心的な役割を担ってきた

→これも同じ。(真宗10派で組織し、1969年の結成より要請している。)

 

 

新宗連靖国神社の政治利用に関する意見書」(2001年)

政府を代表する総理はじめ閣僚が、靖国神社に国の役職を表明して「公式参拝」をすることが、憲法に定める「政教分離原則」に違背し、「信教の自由」を侵害する

靖国神社の基本性格には触れず、憲法上の問題を挙げている。新宗連新興宗教系の立正佼成会、PL教団などが加盟。(各派は戦前・戦中に国家神道により弾圧された。多くは自民党の有力支持団体でもある。)

 

 

日本キリスト教協議会「靖国神社問題委員会 首相へ参拝中止の要請」(2021年)

靖国神社明治維新以来、天皇の側に立って死没した者たちを、神道式で「神」として祀る神社です。(略)戦後靖国神社は、一宗教法人となりましたが、侵略・加害への反省はなく、戦前・戦時下と変わらず戦没者を神として祀り、その死を殉国行為として無条件に美化する思想を推し進めています。

→これも批判的表現だが、靖国神社の基本性格としては正しい。(キリスト教各派は戦前・戦中に国家神道により弾圧された。日本キリスト教教会は「天皇制強化」にも反対している。)

 

 

公明党「国立追悼施設の検討必要 山口代表」

一つの解決策として、わだかまりなく国民や外国人、天皇陛下も含めて追悼できる施設の在り方は積極的に模索されていい。

→後述の政府の追悼・平和懇と同じ。(創価学会は戦時中に弾圧された過去がある。)

 

 

日本共産党 「靖国神社って何? 「参拝」何が問題?」

靖国神社は、明治時代の1869年、新政府軍と旧幕府側との間で戦われた戊辰(ぼしん)戦争で戦死した軍人をまつるために創建された「東京招魂(しょうこん)社」が前身です。(中略)天皇制政府と軍部は、天皇への「忠義」を尽くして戦死し「靖国の英霊」になることを最大の美徳として宣伝。靖国神社を、侵略戦争に国民全体を動員するための精神的な支柱として持ち上げました。

→これも立場は批判的だが、「英霊の顕彰」との基本性格は一致。なお日本共産党は、綱領から「君主制廃止」を削除して、当面の政権では天皇制維持だが、将来的には共和制を主張している。

 

 

社会民主党「敗戦76年の千鳥ヶ淵靖国」(2021年)

日本の閣僚による靖国参拝は、自らがどう「思い」を語ろうと、日本の戦争責任の否定に直結する。玉串料や真榊(まさかき)の奉納についても同じだ。これらの行為は、憲法20条3項の「政教分離原則」に抵触する可能性も高い。

別の記事の「先の戦争でアジアの国々で犠牲者2,000万人、日本人310万人の戦死者を出しながら、先の戦争は正しかったとする靖国歴史観こそが問題にされている」のように、靖国神社歴史観と、憲法政経分離原則を問題にしている。

 

 

4.その他

 

政府「追悼・平和懇」(2001~2001年、小泉内閣、主催 福田官房長官

何人もわだかまりなく戦没者等に追悼の誠を捧げ平和を祈念することのできる記念碑等国の施設の在り方について幅広く議論するため

→婉曲的ながら「現在の靖国神社では、人によっては、わだかまりがある」との表現。1960~70年代に靖国神社国家護持法案が廃案となった以降も、靖国神社や支持者は「靖国神社が唯一の国の追悼施設」と主張し、これに対して千鳥ヶ淵戦没者墓苑の拡充案などもある。

 

 

全国戦没者追悼式(政府が毎年の終戦記念日に主催)

先の大戦戦没者に対し、国を挙げて追悼の誠をささげるため

靖国神社とは異なり、対象は「先の大戦の全戦没者」(空襲など民間人犠牲者も含む)で、国営で、追悼(顕彰ではない)で、いわゆる無宗教形式(特定の宗教形式にはよらない)。

 

 

国立千鳥ヶ淵戦没者墓苑

千鳥ケ淵戦没者墓苑は、昭和34年(1959年)国によって建設され、戦没者のご遺骨を埋葬してある墓苑です。先の大東亜戦争では、広範な地域で苛烈な戦闘が展開されました。この戦争に際し、海外の戦場 において、多くの方々が戦没されました。戦後、戦友等によりご遺骨が日本に持ち帰られ、又昭和28年より海外の遺骨収集が開始されました。この墓苑は日本に持ち帰られたご遺骨において、お名前のわからかない戦没者のご遺骨が 納骨室に納めてある「無名戦没者の墓」であるとともに、この墓苑は先の大戦で亡くなられた戦没者の慰霊追悼のための聖苑であります。

靖国神社とは異なり、国営の墓苑(法的には遺骨保管場所)だが、全戦没者の追悼施設で、拝礼式や慰霊祭には首相、皇族、自衛隊、諸宗教団体、各国大使などが出席。施設としては、いわゆる無宗教形式(特定の宗教形式にはよらない)。

 

 

防衛庁・自衛隊 第一師団 その他の活動千鳥ヶ淵戦没者墓苑秋季慰霊祭)

六角堂に安置された36万余りの御柱をはじめ、先の大戦で亡くなられた全ての戦没者に対して 、整然と捧げ銃の敬礼を行い、哀悼の誠を示しました。

 

 

【各施設の特徴比較】

  靖国神社 千鳥ヶ淵 全国戦没者追悼式 (参考)
米国アーリントン墓地
国営 ×
常設 △ *1 ×
民間犠牲者 ×*2 ×
性格 顕彰 追悼 追悼 追悼
特定宗教に
よらない
×

*1 大規模式典には拡充が必要

*2 空襲・原爆犠牲者を含め民間人は原則含まない(軍属、準軍属など例外はある)

 

→色々確認した感想としては、ホームページなどでは一般向けに無難な表現を使用しているが、内輪になるほど「顕彰」や「崇敬」の用語が現在も使われている。また最近では「中韓外交問題視」との報道ばかり多いが、靖国神社の性格を巡る議論は戦前から続いており、戦後は憲法問題が加わり、仏教系、新興宗教系、キリスト教系、左派政党などの公式参拝批判は現在でも続いている。

 

→共通する事は、立場により色々な表現はあるが、靖国神社は過去も現在も「英霊の顕彰」つまり「天皇側の戦死兵士の賞賛」施設で、政府主催の全国戦没者追悼式と比較すると、国営ではなく、空襲など民間人犠牲者は含まず、内容は追悼というよりも顕彰であり、特定の宗教形式による、ところが異なる。

 

以上です。よければ過去の以下も見てね。

 

東京五輪の話題(競技以外)を振り返る

東京オリンピックも8月8月に閉幕したので、前回の開催是非議論に続いて昔の関係者として、競技以外の話題に軽くコメントしたい。

 

1.最初にフランス語はなぜ?

オリンピックの第一公用語はフランス語だから。公式資料はフランス語・英語・現地語が最低必要で、解釈相違時はフランス語が優先される。長野でも組織委員会にフランス政府から翻訳者が数年間派遣され、最初の頃は内部会議で他の職員から「フランス語版も作るけどしまっておくだけだけどね、あはは」などと言われてちょっと可哀そうでしたが、フランスの国際語の地位を維持する強い意思を感じました。

 

2.映像に納得できない

各国・各局の独自映像ではなく、国際映像を共有しているので仕方ない。個人的には開会式でのライブと事前準備映像の見分けが付きにくいのは抵抗ありました(閉会式ではアナウンサーの説明があった)。

 

3.開始後は各局一斉に五輪ばかりは異様

大本営発表との批判もあったが、これは国家圧力ではなく各局の経営理由と思う。高騰一方の放映権を、日本のNHK民法各局はJC方式で集団一括契約したので、莫大投資で事前購入した担当分を放映しない経営判断は困難かと思う。

 

4.ミライトワをみかけない

実は珍しくない。各会場などは大会ロゴとピクトグラムで厳密に統一デザインされるが、キャラクターは元々オマケでデザインも公募などで一致ではなく、基本使われない。前回も書いたがアトランタのイジーは開会までにほぼ消えた。成功例はモスクワのミーシャ(リンク先の2分目の閉会式マスゲームの涙は有名)などか。なおミライトラは着ぐるみが会場を回る計画が無観客で消えたそうです。

 

5.ボランティアは完全無給

やりがい詐欺との批判もあるが、五輪ボランティアは長野でも交通費含め自腹が基本(当初は昼食も自腹と言われていたが結局出ていた)で、ボランティアとはそういうものだ。ただ支給されたユニフォームや身分証(アクレディテーションバッジ)などは記念に貰える。

 

6.旭日旗は禁止なのか

勘違いの主張も多いが旭日旗自体の善悪の話ではない。旭日旗自体は大漁旗朝日新聞の社旗海上自衛隊などでも広く使用されているが、FIFAは「相手チームのサポーターが許容できない挑発や攻撃的な」旗を禁止し、シャルケは「軍事標章」を禁止し、そしてIOCは「政治的な宣伝活動」を禁止している。事実上の軍で使われている以上は禁止されて不思議は無いが、それはこのデザイン自体の善悪とは関係ない。

 

7.スピーチが長い

予定時間超過はどうかと思うが、IOC会長の公式発言は細部まで歴代大会と比較されるので各方面への謝礼や評価などは長々しくても簡単に省略できない事情もある。例えば閉会式では「過去最高の大会だった」と言うのが基本なので、これを言わなかったアトランタIOCとして相当な不満があったという意味を持ったので、長野で先輩職員はこれを聞いて「よっしゃー」とガッツポーズしていた。

 

8.開閉会式の演出が...

開会直前のドタバタもあった、と庇う人もいるが、歌の4分間差替以外は変更無く、最終調整への影響はあったにせよ、基本はリハーサルを繰り返した当初からの構成演出のはず。ロンドンやシドニーと比べてもストーリーなく散漫で、懐古と内輪受けが多く、一番センス良かったのは次回パリの映像だった。長野では長くて退屈とも言われたが、演出とストーリーはしっかりあった(演出は浅利慶太)。推測だが、政治家など各方面から、あれを出せこれをやれと言われてツギハギになったのではないだろうか。 

 

(追記)開閉会式演出家の置貴之氏は「カオス」と語ったが、想定外の連続と、ただの断片は違うと思う。

 

9.コロナ禍での大会

これも前回書いたが、オリンピックは大規模なスポーツイベントに過ぎないので、他のスポーツイベントと同様の合理的な制限や中止ならば当然と思うが、五輪だけ政治案件化しての賛成論も反対論もおかしい。日本人は五輪信仰が強すぎるし、開催を選挙狙いに利用しすぎだ。諸外国では各スポーツのファン以外は開催されている事も話題にならないのが普通だ。なお五輪終盤の朝日新聞世論調査で内閣支持率は最低の28%、五輪開催「よかった」が56%で「開催すれば、やって良かったが増える」との予想通りの結果だが、これが大衆社会というものか。

 

(追記)2週間前の無観客決定、前夜の競技開始時間変更など、政府のコロナ対策と同様に「ギリギリまで代替策なし、唐突に思い付きで変更」が多く、背景には「別案を出すと劣勢になるから当初案で突進」という旧日本軍・官僚的的な日本の政治文化が背景にあると思うが、会社経営や戦争と同じくリスクと複数案を比較考慮してスケジュールを立てて関係者と認識合わせて順次決めていく合理的なマネジメントが欠落していると思う。

 

以上です。

 

オリンピック開催vs中止議論でおかしいこと

今日(7/23)は東京オリンピック開会式で、コロナ禍拡大中の開催批判や中止論も根強いが、長野オリンピック組織委員会事務局(NAOC)に4年、アトランタ同事務局(ACOG)に半年ほどスポンサー会社から出向して所属した縁もあり、議論の前提がおかしいと思う点を個人的に書いてみたい。(2021/8/1追記)

 

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写真は左上は1996年アトランタ大会のロゴ、左下はそのキャラクターだが絶不評で大会当日までに姿を消してしまった不憫なジー(Izzy)、右上は1998年長野冬季オリンピックのロゴとピクトグラム、右下はそのキャラクターで手描き風のデザインが新鮮なのに余り人気の出なかったキャラクターのスノーレッツ(SNOWLETS)の、それぞれピンバッチ。関係者間の交換や、路上販売などがされた(ネット販売は一般普及前)。

 

(2021/8/1追記)やはり同じパターンのようです。

smart-flash.jp

 

 

 

⓪最初に

  • 無観客決定後の世論調査「無観客開催」「中止」各4割(読売新聞、7月)
  • 政府への批判が強いが、オリンピックは大規模ながらスポーツ大会の一つなので、過剰な賛美推進も過剰な非難攻撃もどちらもおかしい
  • コロナ禍でのスポーツ大会の客観的な開催基準、判断日程が必要だった
  • 背景には「自粛はお願い、補償なし」の国民忍耐頼りの政治的無策がある
  • 過剰な政治利用は「盛り上がれば成功、問題点は忘れよう」にも繋がる

 

①開会当日まで盛り上がらない

実は大会の多くは事前に盛り上がってない。近年の多くの大会は財政・環境・警備問題などを抱え、2012年ロンドン大会ではテロ対策や交通渋滞、2016年のリオ大会では貧困問題などで批判が続き、批判が表面化しないのは中国やロシアなど権威主義的な国ばかりだ。

 

特に長野大会では招致疑惑での帳簿問題、環境五輪を掲げての競技場建設や国立公園を通過するアルペンスキーコース、多数の新設競技会場の後利用不安、長野新幹線開業に伴う在来線廃止などもあり、開会式後もチケットもグッズも大量に売れ残り、通勤経路の競技会場や各種ブースや長野駅前も閑散で「これで本当に開催中なのか」と皆で話していた。

 

事前に国際オリンピック関係者から「オリンピックの成功は、メディアの満足と開催国選手の活躍次第」と聞いた時は「乱暴すぎ」と思っていたが、白馬のスキー・モーグルで里谷が予想外のメダルを獲ると、わずか数日で不人気競技や更には(閉会式後に行こうと狙っていた当時は別大会の)パラリンピックのチケット、各種グッズまで完売し、駅前も競技会場も人だかりで歩く時間も倍増、盛り上がりは最期まで続いたが、その前後の露骨な明暗は、何年も準備した大会の内容は同じなのにと関係者としては複雑な想いでもあった。

 

「勝った、やって良かった、問題点は忘れよう」は、第一次世界大戦日清戦争での日本と同様に流されやすく懲りない国民性で、今回も「コロナ禍の逆風にめげず努力しメダルの選手、感動をありがとう」の安易な掌返しになる気もしている。

 

(オマケ)上述の「メディアの満足次第」も1996年アトランタ大会で実感した。ボランティアを大幅活用したシステム運営が大混乱で、到着時の認証から直後の輸送宿泊、情報提供とメディア関係者を直撃した結果、大失敗との評価が確定した。IOC組織委員会がメディアに非常に気を遣う理由はここにある。

 

②コロナ禍での開催是非

中止ならば感染リスク最小化となる事は当然だが、サッカーやプロ野球など他のスポーツイベントは制限下で開催中でオリンピックだけ中止ではダブルスタンダード(統一基準で全スポーツ禁止ならば判るが)。

 

オリンピックは規模は大きいが無観客となり、選手・関係者・メディアの入出国やバブルなどゾーニングの不備は常にある(現実の人の流れの100%制御は不可能)ので、これは運用改善を重ねるしかないのも他イベントと同じだ。

 

確かに「オリンピック開催と聞いて、自粛疲れの反動で蔓延」の影響は大きいと思うが、その原因は従順な日本人に依存の「自粛はお願い、補償はしない」政策で、蔓延状況に応じた客観的な開催基準と判断時期を明確化せずに、直前まで「ワクチン接種が進めば有観客で大丈夫」との楽観論だけでイケイケドンドンと強行したお粗末な政治(特に官邸)にあり、大会が悪いわけではない。

 

本来は政治は国民全体の公平なプロの調整者であるべきで、特定大会は政策の1つにすぎず、過度な政治利用はおかしい。そもそも「大会成功後に解散して衆院選すれば勝利」とか「政府のコロナ対策に不満なので、政府の進める大会は中止せよ」などの安易なスポーツ政治利用に疑問を持たない国民も、自ら愚民に甘んじているのではないか。

 

③オリンピックは特別か?

日本人は1964年東京大会の経験からオリンピックを特別視し、過度な美化や非難が多いと言われるように、他の先進国の高級紙の一面にはオリンピックは載らない。「日本語は世界でも難しい言語、単一民族」など学術的根拠のない「日本特殊論」は多いが、過剰な「オリンピック特殊論」も同類と思う。繰り返すが、大規模ながら商業スポーツイベントにすぎない。

 

④オリンピックは商業主義か?

もちろんオリンピックは商業イベントだが、特にロス五輪以降は商業五輪で、中でも巨額のTV放映権料の欧米視聴者の時間帯に開会式や競技の時間帯を合わせるなどの選手・開催国軽視の弊害は批判されるべきと思う。

 

ただ商業イベント自体はJリーグプロ野球やプロテニスも同じで、逆にオリンピック会場では指定箇所以外はスポンサーの社名やロゴは表示されない(ブランディング戦略上)。またIOCの収入の大半は競技運営を行う各競技連盟に流れ、特にマイナースポーツでは貴重な収入源になっている。IOCは建設業なら元請け、IT業界ならインテグレーターのような共存共栄の形だ。更に運営には多数のボランティアが不可欠で、全体が商業主義とも言えない。

 

商業主義自体が悪なのではなく、その弊害の程度と、それを補完する税金による公共スポーツ振興とのバランスが議論されるべきで、極論は不毛と思う。

 

IOCは貴族か?

実はIOC委員には本物の欧州貴族や独裁者一族も多い。もともとスポーツは特権階級の遊戯で初期の近代五輪はアマチュアリズムを掲げて下層階級の多いプロ選手を排除したし、世界を廻れる名誉職でイラクフセイン元大統領の長男のウダイ・フセインは乱暴者で有名だった。書籍「オリンピックの汚れた貴族」も有名で、IOCはその後の改革を主張するが、評価は色々だ。

 

もちろん帳簿外の賄賂などの利権構造は継続的に批判されるべきだが、単なる悪者視のレッテル張りでは差別的で不毛と思う。

 

⑥バッハ会長個人が悪人か?

氏を擁護する義務はないが、権力者であれ個人へのネットリンチは良くないし論点をずらしてしまうIOCの背景には競技連盟とスポンサーがいるので「できれば有観客」との代弁自体は自然だし、日本の村社会な「問題視された側は謙虚に沈黙すべき」感覚の非難の方が世界的にはおかしい。

 

迎賓館の歓迎会は日本側主催で飲食なしディスタンス確保と報道されているし、開催に迷いやあった事や、広島訪問なども批判するのは過剰と思える。

  

コロナ関係では昨年はWHOテドロス事務局長が叩かれ、東京オリンピックでは新国立競技場デザインのザハ氏が叩かれた。しかしWHOの説明自体はほぼ適切だったし、ザハ氏は要件に従って設計し選出されただけなのに、政府の国土強靭化の公共事業の影響で費用高騰すると主犯扱いされて、再設計には候補参加も許可されず、結局ベースはほぼザハ案が使用されたというスケープゴートであった。

  

問題はバッハ個人の些細な言動より、政府やIOCを含めた構造的な話で、仮にバッハが辞めれば「ざまぁみろ」で終わりで良い話ではないだろう。

 

⑦オリンピックは平和主義か国家主義

 良く議論されるがこれも本筋ではないと思う。

 

古代オリンピックの開催期間中は古代ギリシャ人の間で休戦した事を理由に、近代オリンピックは平和を掲げて、南北朝鮮統一チーム、台湾(中華民国)の参加など緊張緩和に貢献しており、これらは参加単位が国家・地域単位の各国オリンピック委員会(NOC)な事もあり実現できている。

 

他方、ナチスがベルリン大会で国威発揚に発案した、西洋文明発祥の地であるギリシャからドイツまでを辿る聖火リレーや、表彰時の国歌・国旗などは、スポーツに国境は無い筈なのに演出効果が高く人気があり継続され、批判もある。

 

平和の理念はムーブメントやブランディングに重要だが、オリンピックは国連でも主権国家でもなく、実際に第二次世界大戦ベトナム戦争も休戦はなく、個別の緊張緩和への貢献しかできないのが現実なので、平和の理念が本物か表面だけかを議論しても余り意味は無いと思う。(なおナチスも開催を前に緊張緩和政策を行ったが、政治は常に情勢次第なので、これを一定の成果と見るか最初からの偽装と見るかは後世の判断次第と思う。)

 

組織委員会の意見が見えない

森元首相の辞任と橋本聖子就任の際も「指導力を期待」との報道も見たが、元々組織委員会指導力を発揮すべき組織ではないから無理筋な願望と思う。

 

オリンピックはIOCの資産で、開催するのは都市(東京都)、スポーツ界のトップはJOC、コロナ対策は政府と自治体、そして各競技の運営は各競技連盟で、各会場にオーナーがいる。組織員会はJOCと都に出資されて、実態は都・政府・スポンサーなどの時限出向者による時限的な寄り合い所帯(一部は翻訳者、デザイナー、警察など)で、調整が主任務だ。

 

「こんな大会にしたい」などオーナーシップを発揮できる組織ではなく、案は出しても決定権はIOC・都・政府などにあり、下手に発言して責任のとりようがない。実際に無観客は組織委員会と都は早くから提案していたが、官邸が有観客をギリギリまで粘ったと報道されており、未決定時点では対応しようが無い。

 

⑨コロナ対策の問題点

最後に、政府のコロナ対策には問題点が山とあるが、構造的な問題と現政府の問題は分けて考えるべきで、仮に政権交代してもどこが変わる可能性があるのかは重要だと思う。

  1. 先進国内でワクチン供給が遅れた事自体は、日本の感染者比率やメーカーとの関係から見て、ある程度は仕方が無かったと思う
  2. ただしワクチンの国内生産力衰退、保健所減少などは日本の長期的で構造的な問題
  3. PCR検査・給付金配布・ワクチン供給などの混乱と遅延は、中期的で構造的な問題で、法制度見直し・IT活用などが必要。これは仮に政権交代があっても急には変わらない。原因には過去のSARS対策の反省点の未共有・未実施もある。
  4. 最後に突然の小学校休校・アベノマスク・GoTo・1回限りの給付金・直前の無観客決定などの混乱は、純粋に安倍・菅両内閣の弊害。官邸主導の場当たり的な思い付き政策の強行を、政治的リーダーシップと勘違いしている。

 

最後の点だが、安倍氏が影響を受けた小泉政権は大衆人気を背景に劇場型と呼ばれたが、実際には審議会などを利用する、観測気球を上げる、不利になると諦めた振りをして逆襲の機会を伺う、など色々な組織や専門家も活用して進めた。田中角栄も官僚をうまく利用した。

 

プロの経営者や管理者は、部下や外部の提案を評価し判断すべきで、自分自身がアイディアマンである必要はなく、むしろ有害だ。専門家によるメリデメを無視して安易に「私にはアイディアがある」などと言う候補者は落とすべきだと思っている。

 

以上です。

 

 

映画「竜とそばかすの姫」は細田ワールド集結で面白かったけど少し気になった事

7月16日の公開初日に見たけど面白かったし観て良かった。写真は映画館の壁画像で右下はオマケ配布のシール。 (ネタバレないです)

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映画は予備知識なしで見る派だけど今回は予告編も見ず、カンヌ映画祭で上映されたと聞いたけど、仕事の代休で近所の映画館の上映予定見たら公開初日だったので急いで予約。

 

細田守監督の劇場6作品目で、劇中の現実世界と仮想世界でキャラクターデザインが違うので、どれを目にしたかで第一印象が随分変わる。実は最初は仮想世界のベルを見て、趣味じゃないからパスと思ったが、現実世界のいつもの細田キャラを一瞬見て、やっぱり見たいと思った。

 

細田キャラは単に「絵があって、動く」ではなく、「動かすために作ったデザインで、少ない線で微妙な表情も表現できる手書きチックなタッチ」なのが魅力的で常習性がある。キャラだけで動きが見えてきちゃう感じだ。

 

予約した二子玉川の109シネマズはいつも混みすぎず観客もマナー良くお気に入り。午前11時にコロナ制限客数の1/3くらいだった。

 

まず前半は「サマーウォーズ」の世界観、「バケモノの子」みたいな巨大クジラ、そして「時をかける少女」風の周囲の登場人物や三角関係など、細田ワールド集結な感じが楽しい。

 

そして中盤の仮想世界ではディズニーアニメ版「美女と野獣にここまで瓜二つにしなくても、とも思う。まぁ主人公の「すず → ベル → 映画副題に BELLE」など最初から確信犯だけど。あと悪者役のヒーローが手塚アニメ風に見えた。

 

脱線するが、ディズニーアニメ版を元にしたミュージカル版「美女と野獣」は、ブロードウェイでは豪華な特殊効果が素晴らしく、ロンドンでは地味ながらティーカップ達のタップダンスの職人芸が異常にうまく、劇団四季は全てにそつのない優等生的で、観たのは1回づつなのでたまたまかもだがお国柄を感じたので見比べもお勧めしたい。

 

後半の展開は書かないが、この話は小さい頃の出来事から自信の持てない少女の話なので、ネットでの体験を経て、そして最後は世界を救ったりはしないで身近な世界に戻るのが良いと思うし構成がきれいだ。そして(今回は名前も知らない子供も含めて)家族へのこだわり細田世界で良いと思った。

 

またネットの描き方も「サマーウォーズ」では「ネットの仮想世界で次々参戦する、更に現実世界ではアナログで繋がって危機回避する、どちらも最期は人間だ」という前向きな胸熱展開だったが、今回は「匿名社会でデマや誹謗中傷が蔓延してるが、個々人には現実の顔があるし、人を救う事もできる、結局は使い方次第の道具(ツール)だ」という感じで時代の変化を感じるし、いちおうIT業界関係者としても納得だ。

 

賛否ありそうなのは駅改札前の長廻しで、キャラが完全に動かない数秒が何回もあるので「枚数節約の手抜きだ」と批判されそうだが、画面隅に歩く猫を入れて経過時間表現とかの対策もせずに劇中の表現ギャップ狙いで敢えて完全静止させてると思ったので、私は面白かった(勿論枚数節約にもなってるけど)。

 

という訳で、最後まで見て、振り返っても、面白かったし観て良かった

 

ただ個人的に最後に気になった3点です。

 

後半の仮想世界で歌うシーンは、観客の感動描写が画一的すぎて全体主義的に見えた。目つきや口の形まで同一に動いて、昔の漫画映画やミュージカル調を狙ったのかもしれないが、ネットでの個別ユーザーのコラボではなく、統制下の洗脳のようで不気味だ。制作側も一般観客も、あのような光景が感動的シーンに見えるのだろうか。そんなリテラシーでいいのだろうか(大きなお世話かもしれないが)。

 

最後の捜索はいくらフィクションでも非現実的すぎなので嘘でも追加ヒントか伏線が欲しかった。ただ坂が多い住宅地は納得(近所なので)。

 

仮想世界の手間かけた作画に対して、後半の現実世界の作画はちょっと残念だ。アクションで見せるシーンではないけれど、例えば顔を赤らめるカットでも時間経過に応じた芝居が少しはあるのでは。観客を世界に引き込めれば、ラストシーンは演出と声優で持つので作画は簡単で良い、ってわけでもないと思う(手間かければいい訳ではないし、感動すれば作画は気にしないのが一般観客かもしれないけど)。

 

以上、感想でした。

 

(2021/7/17 追記)ネットで感想を拝見してのコメントです。

  1. 最後が小さい」確かにスペクタクルやカタルシスを期待して観に行くと違うと思う。ただこれは一少女の成長の話だから、小さく終わらせたのは制作上の勇気かと思った。これは「サマーウォーズ」と「未来のミライ」の違い、更には「君の名は。」と「天気の子」の違いに通じる。
  2. あなたは誰」の正体。予定調和か意外な展開かの話かと。ネットの仮想世界は虚偽だが、その先には個々の生身の人間がいて、それを探し結び付けるツールにもなる、というメッセージなのでは。断片的な画像の中の違和感に、後で出てくるなと伏線を感じられたかどうかの差かも(このへんは「君の名は。」にも通じる気がする)。
  3. ディズニーすぎ」まぁ同感。プロットやシチュエーションが似てるのはいいけど、階段とか広間とかバルコニーとか、デザインまで酷似の必要があったかは疑問だけど、オリジナルを見てる人と古典に思える人の世代差もあるかも。
  4. 「ちょっと出た登場人物が、後から関係のご都合」いやそれは単に、最初から主要登場人物が明かされてる作品と、断片に見えた要素が後で繋がっていって収束していく快感を味わう作品かの違いで、「サマーウォーズ」や「竜とそばかすの姫」は後者なのでは。

 

更にオマケ。今、金曜ロードショーで「サマーウォーズ」やってるが、ヒロインの少女の描き方が時代によりかなり違う。憧れの対象か、実在的な悩める人間か。宮崎駿作品もそうですが、どちらもいいですね(ただ地上波はカットが多いので余り見たくないけど)。

ネトゲ「ラスバレ」無課金で強くなる(2)

前回の続編です。「アサルトリリィ Last Ballet」(ラスバレ)の2021年7月21日のハーフ・アニバーサリー(リリース半周年)を前に、変わったところ、変わらないところ、そして無課金ユーザーへのおすすめ(裏技ではなく誰でもできる正攻法)を書いてみました。

 

なお私は2月のリリース直後から2アカウント(iPhone版、PC DMM版)で、毎日デイリーと外征して、週3でレギオンマッチ、各総戦闘力はおまかせで20万、参加レギオンはランクA~Sな無課金中堅?です。

 

まずラスバレの特徴で、変わったところと変わらないところ。

  1. バトルのテンポが良いのは変わらない。ソロの「レジェンダリーバトル」や、マルチの「レギオンリーグ」などコンテンツのバリエーションは増えたが、基本の戦闘モデルは今も1種類だけで、役割(衣装)・カード(メモリア)・武器(CHARM)などバトルに影響する要素も共通なので、どのコンテンツもまずは適当に進められて、こだわりたくなればコンテンツごとの微妙な条件を調べて最適化する、との2段階が可能で敷居は低いと思う。
  2. しかし最初に何を選んでも大差はないからキャラ(リリィ)や武器(CHARM)は好きで選んでOK、という面はイベントでの強力な衣装限定CHARMなどが徐々に増えてきて変化した。複数ユーザー用の各種コンテンツでも、従来の各ユーザー推しの多彩なリリィから、強いチーム(レギオン)ほど特定のリリィがズラリが常態化してきた。各アイテムの差別化と課金誘導は運営の既定路線と思うが、推し重視か勝利重視かは二極化傾向に見える。
  3. 自動巡回で強くなるのも同じだが、経験値で上昇するランクの上限(当初は100、現在は110まで)の長期化や、6月後半からの各種報酬へのスキップチケット大幅増は、新規参入者との格差縮小や、通信エラーなど環境差の負担縮小があるのかも。自動巡回はITリソース的には純粋な無駄遣い(ユーザーはプレイもせず双方負荷のみ)なので、報酬のスキップチケット増が継続されれば歓迎だ。
  4. 不具合は相変わらず多いが改善傾向と思う。自分のiPhone版とDMM版でもプレイ中のアプリ突然ダウンは1日数回から週1回程度に減ったと思う。外征救援の参加時の黒画面(スマホでは画面上下で再接続可)、外征勝利後の無限Loading(リザルト画面に遷移せず報酬が得られない、再ログインでも変わらず)などは何か月も直らないが、これも発生は毎日から週1ほどに減った印象だ。ところでイベント外征で「後衛の一部キャラが岩に隠れて見えない」が批判され「不具合」として修正されたが、あれは意図的(ちょうど頭以外を隠す形の岩で、プレイヤーの後衛キャラは中央上部固定なので影響せず、隠れたキャラもインジケータは岩の手前で実害はなく、水着回での運営のお遊び)と思うので、安易な批判や受容も考えもの。まぁ設計不備や考慮不足も「不具合」とも言えるけど。

 

(不具合例1)イベント「超越のアーセナルハート」での背景不具合(一部背景が露光過多で良く見えない。特定のデバイスで発生する。最初は透過光な大胆な演出かと思った。)。私の環境ではiPhoneで本編とイベ外征で100%発生し続けたが、プレイはできるので実害は少ない。

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(不具合例2)外征で勝利後に「Loading」画面のままリザルト画面に遷移せず、報酬が得られないので痛い。発生時は参加者全員に発生し、アプリ強制再起動後に再開しても変わらない。自分のレギオンからの開始、救援ともに各リリース時より発生し続けている。

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最後に特に無課金ユーザーへのおすすめ。

  1. 報酬など配布の石(マギジュエル)のみでの効率よい強化には、神琳(しぇんりん)もいわく「敵を知り己を知れば百戦危うからず」(孫氏)で、運営はイベントガチャが最大の収入源なので特効メモリアの魅力などで課金誘導して、その後は出現率5%ガチャ、星5確定ガチャなど過去メモリアの割安セールでまた誘導する。また石も、複数イベントや記念を理由に一定期間に大量配布して消費に麻痺させてから、1~2週間ほど供給を絞って飢えさせるパターンの循環が続いている。しかし重複メモリア救済用のメモリアメダルには、新イベ開始直後にそのイベ特効が追加されるパターンが続いている。そこでイベ特効はイベントガチャ(ギャンブル)には頼らず、イベ開始直後にメモリアメダルで交換する、その分の石は溜めておいて星5確定ガチャなど確実優先で使って次回用のメモリアメダルをまた溜める、との循環が効率的。ギャンブルは余裕資金を使って「消えても良い」と思った範囲で遊ぶべきで、生活費は賢く計画して踊らされずに使うべきなのと同じだ。
  2. 最近のイベント限定の強力なCHARMも、メモリアメダルなどから該当の衣装を計画的に入手できる。ただCHARMを装備できる衣装(役割)は限定なので、どのコンテンツで有用か考えて、使わなくなった過去のCHARMは後衛用(防御ステータス重視)とかサポートリリィ用などに転用したい。
  3. CHARM強化(限界突破、特性)には大量の素材CHARMを作る必要があるが、最後はCHARMオプション厳選で苦労するので、素材は次回に作りたいCHARMを選んで大量作成して、たまたま欲しいCHARMオプションが付いたCHARMを次回用に残しておきたい(例えば「特殊攻撃1500以上」など特定の値は数十分の1程度の確率なので、オプション3個中の1個だけでも最初に付いていれば違う)。
  4. 追加されたソロイベントのレジェンダリーバトルは運要素が強いと不評で7月末の改善待ちだが、全参加者のハイスコア時の編成が参照できるので、まずは戦闘力(装備メモリア数)より有利属性(水など)と範囲攻撃(複数攻撃)を優先した編成にして、繰り返して高スコアが出れば、翌月曜までは報酬目当ての日1回で良く、報酬やミッションは開始直後のリタイアでもカウントされる。そしてAランクあたりから、オーバーキル(一撃で倒す)を増やすよう総戦闘力を上げて単体攻撃も増やせば良いようだ。(参加者も減ったのかランクの昇級も緩くなった。)

 

(参考1)メモリアメダル交換所には、新イベント開始時にその特効メモリアも追加され続けているので、メモリアメダルを溜めていれば新イベント開始時に確実入手でき、イベントガチャへの依存度を減らしてのイベント巡回効率化ができる。

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(参考2)CHARM強化で素材CHARMの大量作成時には、次回作りたいCHARMを素材に選び、たまたま欲しいCHARMオプションが付いたものを残しておけば、次回でのオプション厳選がかなり楽になる。

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以上です。

 

ネトゲ「ラスバレ」無課金で強くなる(1)

ネトゲ「アサルトリリィ Last Ballet」(ラスバレ)の2021年1月21日にリリース後に完全無課金の2アカウントでほぼ毎日やれば結構強くなれた話です。

 

私は「無課金で、どこまでいけるか」を目的にやってるので、課金ユーザーから見れば寄生虫ですが、無課金の新規ユーザーでも楽しめる事は運営も裾野拡大に重視と思ってご容赦願いたい。

 

 

 

なおネトゲはほぼ素人で、「デレステ」は(当時はジュエルも無く)最上位レア度のアイドル(カード)入手には数年かかり、「 グラブル」は壁が高く止めたが、このラスバレはデイリー報酬や各種イベントでのバラマキ配布が大きいので毎日こつこつで結構強くなれた

 

では何故ラスバレか。まずはリリース時イラストインパクト、次にアニメがシャフトで「まどマギ」も連想する色合い、そしてメディアミックスの一環なので早期撤退リスクは低いと推測(その後はウマ娘に話題をさらわれた感があるが)。

 

 

最初に感じたこと。

  1. 世界観はタイトル通りに百合100%で、健全風だが強引に太ももの絵が多く、アサルトだが強襲でなく迎撃で、慣れると古典少女漫画的な名門女学院でドジっ子主人公(梨璃)とクールな先輩(夢結)の百合ヶ丘女学院、ミリタリでベルばらや欅坂チックなエレンスゲ女学園、普通に自由でふわっとフランス乃木坂風な神庭女子芸術高校と選択肢広く、能天気なストーリーに時々戦争犠牲の影が覗くのが印象的だ。
  2. メディアミックスに積極的で、TVアニメの1話全体や(著作権など事前調整済の企画)、YouTubeの「攻略講座」(動画内のチャネル登録してねで笑)までアプリ内にダウンロードされて、オプション設定で音声や画像を絞ってもiPhoneストレージ3.5GBを占有し、アプリ内で舞台配信などもする重量級だ。そのせいか不具合(バグ)も多く、かなり改善されたが1日にアプリ再起動数回は普通(iPhone版、DMM版とも)で新機能追加直後は特に多く、見切りリリースして走りながら直すアジャイルでRADなシステム開発方法みたいな印象だ。
  3. とはいえ作品やゲームに疎くても気軽に始められて敷居が低い。カードゲーム的なバトルはテンポ良くアイキャッチャーはカッコ良く、キャラ(リリィ)や武器(CHARM)は適当に選んでも大差はなく、戦闘力さえ上げれば苦戦相手も嘘のようにクリアできてバトル > 報酬 > 強化の循環だ。
  4. 個人的には1月イベント「ブーステッドフレンド」は予告編もカッコいいが挿入歌「月あかりのコントラスト」はタイトルまんまに同じ情景を歌う鶴紗の絶望と梨璃の希望の対比がドラマッチクにぐっと来る。

 

 

 ただ無課金で強くなるには時間はかかる。

  • 朝のデイリー消化とユニット強化(30分)
  • 日中の巡回(朝入手のラムネ数やイベントにより2~5時間)
  • 夜のチームイベント(レギオンマッチ・外征任務と報酬での強化に1時間)

 

これを比較用に2アカウント並行で3ヵ月と、自宅テレワーク中ながら再就職の手続き中にブログも3ヵ月空けて我ながらバカだが、育て出すと手を緩めにくいのも人情か。

 

特に最初の1~2か月は毎日どんどん強くなる。2アカウントともほぼ同じ。

  • 3日で総戦闘力 3万(ランクアップ連続でAP余りまくり)
  • 1か月で総戦闘力 10万、RANK100(CHARM強化で一時的にコイン不足)
  • 2か月で総戦闘力 15万(コインやアイテムが余り出し、成長速度は鈍化)
  • 3か月で総戦闘力 18万(完成CHARMは各4本、星3メモリアは全て素材に)
  • 所属レギオンはレギオンマッチでランクA~B

 

  

遊び方は人それぞれですが、個人的に感じたこと。

  1. 最初に選ぶキャラ(リリィ)は後で変えられる(LOADINGアイコンには残る)が、キャラ固有魔法的な「レアスキル」はキャラの性格に合わせて異なり、主人公梨璃の火事場の馬鹿力的な「カリスマ」より、各校トップ(楓、一葉、叶星)の「レジスタ」が使い勝手良い。個人バトル(ソロイベント)でサポートリリィ3名全員がレジスタ持ちで、更に2名は回復(衣装=ロール)なら楽ちんだ。
  2. 最初に選ぶ武器(CHARM)も何でもよい。説明には「最初のパラメータは同じ」とあるが(CHARMオプションを除けば)最大パラメータも同一と「カタログ」でもわかる(最近追加のイベント系CHARMは例外)。
  3. 売却は避ける。メモリアもCHARMも強化素材の方がお得。使えないのは限界突破MAX以上に入手したオーダーくらいか。
  4. ディリーのイベントとミッションは大きい。今は不要なアイテムも後で必要になる。毎朝用にスキップチケットを残すと楽。
  5. リリィパスポートに最初の一ヶ月だけ無料で入る。初期はデイリーの報酬2倍は大きい(私は使わなかった。なおDMM版は定期引落し決済機能が無いためか売ってない。)
  6. マギジュエルはガチャとデイリーイベント以外は避ける。運営の狙いは課金(マギジュエル販売)で (1)正攻法のガチャ (2)足元を見た誘惑で誘うが、(1)は確率的に11連、できればメモリアメダルも狙い11連 x 15回分を溜めてから引く。ギャンブルは余裕資金で遊ぶべきで生活費をかけては自滅だ。次に敗北時延長などの(2)は避ける。ドーピングで勝てても強化が無ければ無意味だ(ただCHARMオプションのオプションキープ設定は仕方ない)。なおガチャ等の確率は適正と感じる。
  7. 勝てない場合、まずは属性使い分け(火 < 水 < 風 < 火で、相手ターゲット指定、または属性別ユニット)。更に基本攻撃/特殊攻撃への特化(染め)は戦闘力15万以降か。外征ボスは基本、レギオンマッチは特殊が有利な印象。
  8. オーダーやレアスキルは同時開始で相乗効果
  9. バトル巡回は倍速、AUTO(オーダー、レアスキル、チャット可能)、AUTO巡回(複数バトルの連続AUTO)、スキップチケット(AUTO困難なレベルも可)を使い分け。
  10. 更にスマホ版とDMM版でデータ連携し、普段はスマホ、AUTO巡回はPC側で非占有もできる(引継ぎせずに交互使用もできる。ただレギオンマッチのMP回復はマウスやキーボードでは遅い。)
  11. ギオンに入る。心的抵抗や相性もあると思うが、利点は多く、探せば無言も自由放任も色々あり、3月以降はメンバー不足(特に後衛)が大半。

 

 

最後に感想。

  1. 各種イベントや仕様変更時の「補填」でのマギジュエル大盤振る舞いに「神対応」とか逆に「やりすぎ」との声も聞くが、運営の「ユーザーの声を聞きました」は基本的に企業の変更時の方便で、議論になったゴーグル実装時の過去のセーフティメモリ購入のマギジュエル返却も「ユーザーの足元を見る課金要素を減らして、前向きなガチャ付加価値に変更」した形だし(CHARMのやり込み要素は他にもあり、むしろ複数CHARM使い分けも推進したい)、また大量のマギジュエルの消費快感を覚えさせて次を期待させ、平常1~2週間に我慢できず購入を狙った陰謀と思うので、その心理戦を理解して計画的に使うのが賢いユーザーと思う。
  2. 敷居が低い事が魅力だが、ソロ用ユニットの「サポートユニット」など複雑化して、各属性別だけでもユニットがマルチ用に4個、ソロ用に4個、更にレギマ用など増えてメモリア増加のたびの再構成が大変だ(リリィ内のメモリアやオーダーのみのクリアや自動配置が欲しい)。難しくなったと辞めたユーザーも見かけ、更に新機能も多数予定され、果たして吉と出るか凶と出るか。

  

(オマケ)表示不具合の画像だが面白い笑 

  

以上です。