2020/6/12 に「こんぴらさん」こと香川県の金刀比羅宮が、神社本庁を離脱するとの報道が。そこで金刀比羅宮、神社本庁、「神社本庁の色々な問題」「包括政治団体」、そして神社本庁の戦前回帰な政治主張、日本会議との違いについて、まとめてみました。
(主な更新)
かんたんにいうと
以下は毎日新聞の報道。
「こんぴらさん」とは
祭神は大物主命、崇徳天皇。起源は諸説ながら、神仏習合で真言宗のお寺となり「金毘羅大権現」を祭っていたが、明治政府の廃仏毀釈・神仏分離で神社となった(国家神道の被害者ですね)。
参道の785段(奥社まで1368段)で有名だ。1回だけ行ったが、曲がりくねった参道を登るにつれて景観が変わるのが楽しい。大半の観光客は賑やかな本宮までで引き返してしまうようだが、奥社までは静寂な山道で別空間。元気があればこちらもおすすめしたい。
ウェブサイトは何故か大胆すぎで、情報がどこに何があるのかさっぱり判らない。超有名で観光ガイドは溢れているから、これでいいという割り切りなのか。
「神社本庁」とは
- 戦後にできた民間の宗教法人の1つ(配下の神社は約8万)
- 戦前の内務省神祇院を実質継承
- 配下の神社から寄贈金など実質上納金
- 後継者不在の神社に宮司派遣も
- 有名神社には所属利点は少ない
- 鎌倉宮・靖国神社・伏見稲荷大社・新熊野神社などは元々配下ではない
- 関連組織に「神道政治連盟」(神政連)
- 戦前回帰な政治主張が濃い(後述)
「神社本庁の色々な問題」とは
- 不可解な本庁不動産取引、癒着疑惑(幹部が個人マンションに流用?)
- 2019年 大嘗祭当日祭用の幣帛(へいはく)料が届けられなかった
以下の「ダイヤモンド・オンライン」の一連の記事が詳しい。特に2つ目の「不可解な不動産取引」は量があるが、表面化しにくい宗教関係者内部の細かい経緯を、複数の関係者に何回も取材し冷静にまとめていて、これぞジャーナリストな労作と思う。
以下は2017年の富岡八幡宮離脱の記事だが、色々関連している。
別件ですが、同日 2020/6/12 の神道政治連盟関係の記事。続きますね。
(2021/3/31 追記)神社本庁全面敗訴の報道。上述の不明朗な不動産取引を「背任行為があったと信じるに足りる相当の理由があった」として、内部告発した幹部への懲戒解雇を無効と判決。
「包括宗教団体」とは?
以下の文化庁のサイトを参照。実は離脱しても「単位宗教法人」のまま。
文部科学大臣所管の包括宗教法人(神社神道系)も複数あり大手は以下。
- 神社本庁(全国、78,727社)
- 誠心明生会(広島、91社)
- 神社本教(京都、78社)
- 神社産土教(広島、72社)
- 北海道神社教会(北海道、60社)
https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/hakusho_nenjihokokusho/shukyo_nenkan/pdf/r01nenkan.pdf
(参考)神社本庁と「国家神道」
- 明治以降、神社は政府が管理した(当初は政教一致を目指したが挫折)
- 「神道は国家の祭祀で、宗教ではないため、近代国家の政教分離には反しない」と国民への神社参拝強制を正当化した(神道非宗教論、国家神道)
- 戦後の「国家神道」廃止(GHQ「神道指令」)で、神社本庁は生まれた
- 神社本庁は現在も、戦後の憲法や民主主義の批判など、戦前回帰色が濃い
神社本庁と、その関連団体の「神道政治連盟」の主張を、各ウェブサイトより引用してみる。(各記載は少なくとも10年以上変更されていない。)
神社本庁の政治主張
- 「国家神道」解体を批判(戦前回帰)
(GHQは)「神道指令」を発し、神社の国家からの分離を命じました。
「神道指令」によって不当に圧迫された神社信仰の回復に意を注いできました。
神道政治連盟の政治主張
誇りの持てる新憲法の制定を目指します。
行き過ぎた政教分離を戒める
(憲法前文の国民主権には)当時のアメリカ人が勝手にそう信じ込んでいたらしい「人類普遍の原理」(略)といった言葉がつらなっています。
神政連は夫婦別姓制の危険性を強く訴えてきました
戦後教育は、結果として、民主主義者を装う利己主義者を育ててきた
ジェンダーフリーは、社会の常識や慣習を支えている性別秩序を崩そうとする運動
(参考)神社本庁と日本会議の関係
- 似てるようだが、ちょっと違う
- 神社本庁(と神道政治連盟)は戦後すぐから(反米、戦前回帰色が強い)
- 日本会議は1970年代から(起源は旧「生長の家」系の新右翼)
- どちらも現政権の閣僚の大半を占める
- 現在の影響力は日本会議?
比較がわかりやすい記事。
こんな本も。
最後に
私は左右を問わず「多様な意見が存在する事が自然で健全」で、また「透明性の無い硬直的な組織は腐敗する」とも思っています。
神社本庁は民間の宗教法人なので政治主張は自由ですが、GHQへの恨みで「反米、戦前回帰」を固守しているのは、一部左翼が安保闘争敗北などのルサンチマンを基に形骸化した反権力を主張し続けているのと、時代的な共通性を感じてしまいます。
日本古来の伝統的な神道は多神教で特定の教義は無く祭神も経緯も多種多様ですが、国家神道は明治に作られた「天皇を中心とした官僚的・中央集権的・一神教的な制度」で、色々と正反対です。(國學院出身の知人も、あれは違うよねと言う。個人的には、国王に忠実なイギリス国教会のパクリで、近代化の舶来思想と思っている。)
神社本庁は全国最大の神道系包括宗教法人ですが、日本古来の神道を含めた幅を持った立場で組織的な透明性も確保していくのか、旧ソ連のように思想的・組織的にも硬直的なまま歴史からフェードアウトしていくのか、選択が求められているように思えます。
以上です。