らびっとブログ

趣味で映画、本、政治思想とか時々書きます(^^)/ ご意見はツイッター @rabit_gti まで

映画「ゴジラ -1.0」で気にして欲しいこと(ネタバレなし)

評判を聞いて急遽公開翌日に観たら実に堅実な邦画だった。ストーリーには触れず、気にして欲しい事を書いてみました。

「ゴジラ -1.0」ポスター

ゴジラ -1.0」ポスター

 

①「-1.0」=「マイナスワン」

「マイナスいってんゼロ」かと思ってた。でも「マイナスワン」では「.0」はどこへ。しかし「初代より1つ前」更には「過去と現在」と思えば実に内容に合ったタイトルだった。なお「シンゴジ」風の「マイゴジ」も見かけるけど順序逆だし「マイメロ」みたい。

 

②特撮ファン向けに限らない

二子玉川の土曜昼でほぼ満員、子供は1割以下だった。基本は巨大災害に直面する人間ドラマだが怪獣映画な見せ場もある。似てると思ったのは丁寧な時代考証とキャラクター描写でアニメファン以外にも広く受容されたアニメ映画「この世界の片隅に」で、「-1.0」も特撮ファンに限らず普通に楽しめると思う。グロは無くセリフも平易で子供も大丈夫だが、戦後の貧しく重い話なので明るく楽しいスペクタクルを期待すると違うかも。

 

③映画として

全編通して抑えた彩度と昭和な立ち振る舞いが素晴らしい。よくある怪獣映画はシーンの繋がりが唐突だったり、戦争映画では現代すぎる言動、最近はCG多用で無暗に回り込むカメラワークが気になるが、「-1.0」は場面転換も自然で昭和な仕草や言動をカメラが実に丁寧に追うスタイルで一貫していたのが最大の驚きだった。これは山崎貴監督の「ALWAYS 三丁目の夕日」などの実績も活きていると思う。同じ素材でも色々な解釈表現があって良いけど、これは一つの完成形かと感じた。繰り返すと、単に背景やセットではなく、神木隆之介浜辺美波の演技と映像が昭和の再現度高すぎ案件。

 

④初代との比較

初代「ゴジラ」は前半が「せっかく復興したのに戦災再び」の衝撃、そして後半は博士や秘密兵器の「少年空想科学小説」で、「シン・ゴジラ」も「-1.0」も基本はほぼ踏襲と思うけど「-1.0」はラストのセリフで主人公の主題に収斂するのが私は良かった。ただスペクタクルや活劇を求める人には人情ものすぎて見えるかも。

 

⑤「シン・ゴジラ」との比較

直前の「シン・ゴジラ」は政府側の主人公が超早口説明して陸上中心なのに対して、現場の民間人数人が少ないセリフでうまく表現して海上中心とは「アルキメデスの大戦」の実績も含めてうまい対比と思うし、基本構成が似ているだけに多彩な見せ方が活きていたと思う。

 

⑥犠牲精神

1980年代に池袋文芸座の再上映で初めて初代を見た時に、ゴジラが近づくビルで報道を続けたアナウンサーが最期に「さようならみなさん、さようなら」と言うシーンで満員の観客がワハハと笑ったのが個人的に凄く違和感だった。自己犠牲を厭わない職業精神は現代の感覚ではアナクロだが、ギャグではない。ここも「1.0」でちゃんとオマージュしていたのも良かった。

 

⑦特攻精神

「1.0」で主人公は元特攻隊員との設定だが、日本人は特攻精神の美学が大好きでマンガでもアニメでも特攻すれば「感動」続出して人気が出る。しかし「僅かな可能性に賭ける」(生きる)と、「組織命令で死ぬべき」(生還は命令違反)の特攻は、似ているようでも全く違う。「1.0」は見終わってからポスターの「生きて、抗え」の意味が改めて考えされられた映画でした。

 

以上です。