らびっとブログ

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2023映画感想(バービー/トット/ゲ謎/埼玉2/ゴジマイ/ナポレオン/君どう/シン仮面/アリテレ/アンコン/ガルパン最終4)

2023年劇場公開映画の感想を先延ばし病で今頃ですが、貧乏性ながら11本も観たのはシニア料金のお陰だし、評判で会えた名作はSNSのお陰でした。

 

 

①バービー

評判で観たら名作 No.1。日本では人形の馴染みが低く(姉は持ってた)、ジェンダー説教映画と誤解されたのか世間の評判低く残念。

 

まず批判もある冒頭の「バービーに目覚めた子供たちが赤ん坊人形の頭を破壊する」は、もちろん「2001年宇宙の旅」のパロディだけど、「これから始まる映画は子供騙しじゃなくてバービーが神のぶっとんだ世界だ!」宣言だろう。

 

デタラメな世界なのに、レイアウトもテンポもずっと良いし、主役はバービーの定番(Typical)との設定が後に活きてくる。作中の人間世界は問題もあるが法治もあるのがリアルだし、古いバービー世界と現代(アナキストな黒服)とのジェンダー観対決や、バービー製造元のマテル社経営層が世間体なジェンダー観との皮肉も笑える。

 

そして終始喋っているバービーが、隣の老婆に見とれたり、ケンから「相手にされないのは悲しい」と聞いて沈黙するシーンは、ジェンダーの根底は性優遇ではなく人間尊重との暗示でスマート。

 

②窓ぎわのトットちゃん

評判で観たら名作 No.2。これも前評判は低く、当時の少女誌風な絵柄も個人的に好きでないが、とにかく冒頭から最後まで淡い色彩と映像で語る世界が圧巻な驚きの名作でした。

 

ちょうど「若おかみは小学生!」や「この世界の片隅に」を見て良かった感じ。細部のパン焼き機から自由が丘駅の電車、悪人ではない大人たちが抑圧に向かう時代を淡々と。今でも絵柄は趣味ではないが、映画は2023年ベストかと。

 

③鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎

評判で観たら名作 No.3。アニメでここまで溝口正史の映画の雰囲気を出せるとは演出と美術と音声の勝利か。鬼太郎目当ての子供には向かないけど。洋館の戦いも位置関係が判って見事。鬼太郎以外に救いが無い、との評もみるけど金田一耕助でも誰も助からない。

 

ただ最後の決戦は勝算なく無駄なアクション延々にも見えるし、紗代と時弥の成仏シーンはご都合にも思えるので、ウソでも伏線回収を入れて欲しかった気もする。

 

④翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜

元埼玉県民としては行かざるを得ないが、原作も無いのに1をどう継承するのかと思ったら驚きのそっくり構成で、しかし1の学芸会的スタイルは画面の隅々まで圧巻の美術と演技でパワーアップで更に驚いた。

 

GACKTと杏の絡みはカッコ良すぎて笑えるし、大阪地下の演舞は大迫力で意味不明すぎる。もちろんディスりに見えてフォローしまくりは2でも健在な快作だった。

 

ゴジラ -1.0

一般人にお勧めできる文芸作品なゴジラ。怪獣ものに多い不自然な展開も少なく、何より登場人物の昭和な立ち振る舞いが美しい

 

冒頭は怪獣も兵士も安直とか、絵的には判るけど震電に沖合誘導は向かないだろう、とかは思ったけど。

 

なお「軍備ゼロ設定の民間丸投げは不自然」との批判も聞くが、これはあくまで「民間側の登場人物達はそう聞いていた」話で、政府や米軍視点は一切描かれてないから、実は次の手があったかも不明で、これで良いと思う。

 

(観た直後の感想)

映画「ゴジラ -1.0」で気にして欲しいこと(ネタバレなし) - らびっとブログ

 

⑥ナポレオン

久々のリドリー・スコット監督作品だが、迫力の攻城戦や、歴史的人物を各断面で印象的な映像に切り出すダークな雰囲気は健在でした。ヒーロー物を期待した人は向かなかったようですが。

 

凍結した青い水中に砲撃を受けた兵士が赤い血を広げながら沈むシーンを延々は悪趣味と映像美の一体化ですね。

 

君たちはどう生きるか

引退詐欺とも言われる宮崎駿監督だが、これは公開前情報一切無しの鈴木敏夫Pの戦略大当たりで、戦災の話か、リアルな鳥かと思わせてのどんどん展開が活きた。

 

過去作オマージュとか監督本人に重ねた評論は、少し違うと思う。過去パターン使いまわしは「カリ城」から定常運転だし、単に異世界転々の冒険ものでも正しいかと。手間をかけ良くできた大作。ただ好きかと言われると「ラピュタ」「紅豚」とか。

 

(観た直後の感想)

映画「君たちはどう生きるか」見て良かった【ネタバレなし】 - らびっとブログ

 

⑧シン・仮面ライダー

樋口監督の「シン・ウルトラマン」のような下品さは無いが、低予算な安物感は共通で、しかしアメコミ風なCG的スマートではなく、着ぐるみ的役者ド迫力なのは庵野監督の持ち味かと思う。

 

個人的には初代の改造人間本来の不条理で暗く悲しいイメージで良かったが、スタイリッシュなヒーローを期待した層には合わなかった気がする。

 

(観た直後の感想)

映画「シン・仮面ライダー」で感じた10のポイント(ネタバレ控えめ) - らびっとブログ

 

⑨アリスとテレスのまぼろし工場

これもSNS評判を聞いて急遽観たが、独特な閉塞感や死生感と青春エロチックな雰囲気をうまく構築した作品だったので、キモくて意味不明との評もまた正しいと思う。

 

ただ狼が来たり来なかったりがご都合に思えたり、ラスト見せ場の追跡劇が変化少なく長く感じてしまった。

 

⑩特別編 響け!ユーフォニアム~アンサンブルコンテスト~

2024年4月からの「ユーフォ3」前の特別編(中編)なので大きな展開は無いものの、「窓を開けるのがうまい」とか、先輩たちの言い合いを新入生は心配するが主人公はわかっているとか、楽器運搬中の描写とか、説明なく映像で見せる丁寧な日常が相変わらず感心する佳作でした。

 

(観た直後の感想)

映画「特別編 響け!ユーフォニアム アンサンブルコンテスト」はあくまで特別編 - らびっとブログ

 

ガールズ&パンツァー 最終章 第4話

これも中編で全6話の第4話で作画は一定品質を保っていると思うけど、特には盛り上がりもなく、個人的にはお約束の全員延々リアクションは流れに水を差すし、極端なファンタジーシーンは(列車砲に向けて戦車が翔ぶとか、ころがる観覧車のように)短めにして欲しいところ。

 

⑫(おまけ:2024年)オッペンハイマー

3月公開予定の「オッペンハイマー」はノーラン監督の人間描写が楽しみ。

 

なお「日本への原爆を揶揄した」との批判は (1)オッペンハイマーは原爆投下を批判した科学者で、(2)バービーとのコラボのファンアートなら「原爆雲を背景に笑顔のバービー」の組み合わせも当然で、(3)それに公式は いいね と「(公開の)夏が楽しみ」と通常の対応しただけで、(4)一部日本人が騒いだから遺憾表明しただけで、(5)そもそもアメリカは原爆投下は正当視(最近の調査で半々)、と勘違いで独善的な「お気持ち」強要は馬鹿にされるだけと思う。

 

以上です。