三井住友銀行の4月29日システム障害の話を、勘定系システム構成の話も加えてまとめてみました(最終更新 2025/5/27)
(ポイント)
- 4月29日に28支店で入出金不可が発生
- 原因は勘定系コンピューターの1台の故障
- 5月の作業は延期したが新勘定系システムへの移行完了予定は変更なし
- メガバンク唯一のNECメインフレーム (ACOS-4)
- ユニークな店群単位の「水平分散アーキテクチャ」構成
- なおIBMメインフレームは2系統バックアップ構成など
(目次)
Q1.障害の内容は?
4月29日(火)午前1時20分頃から23時16分頃まで関西の28支店の口座で、ATMやスマホアプリを含めて入出金不可が発生した。当日の神戸新聞の記事が早くて詳しい。
29日午前1時20分ごろ、三井住友銀行でシステム障害が発生し、関西を中心に28支店の口座で入出金ができなくなった。兵庫県内では神戸営業部(神戸市中央区)や尼崎、西宮、芦屋、宝塚の各支店など5市の18支店・出張所の取引が停止。22カ所の店外ATMも止まり、うち19カ所は県内だった。各支店に口座がある場合、スマートフォンアプリ「オリーブ」も使えなくなった。
三井住友銀でシステム障害 神戸など28支店の口座で入出金できず スマホアプリも使えず|社会|神戸新聞NEXT
復旧は当日夜で約22時間後。
三井住友銀行は2025年4月29日、同日未明から続いていたシステム障害について、発生から約22時間後の同日午後11時16分ごろに復旧したと発表した。
三井住友銀行のシステム障害、22時間で復旧 原因は調査中も「店群」と関係か | 日経クロステック(xTECH)
三井住友銀行は 公式 X(旧ツイッター)で計4回(発生後、影響、復旧、復旧後対応)の発信を行った。なおリンク先のHPの情報は既に削除済のため、フローなツールの筈のXのみに残っている逆転現象ですね。
三井住友銀行 公式(ミドすけ)
@smbc_midosuke·
4月29日
4/29(火)1:20頃より、システム障害が発生し、複数の店舗におけるATMでのお取引および口座をお持ちのお客さまの各種サービスがご利用頂けない事態が発生しております。ご迷惑をおかけし大変申し訳ございません。対象となる店舗など詳細は三井住友銀行HPをご覧ください。
https://x.com/smbc_midosuke/status/1916999196986798504
Q2.原因は?
勘定系システムのコンピューターの1台の障害で、障害の詳細は現在も未発表。
同行によると、国内勘定系と呼ばれるシステムを構成するコンピューター16台のうち1台で障害が起きた。
(上記の神戸新聞NEXTより)
三井住友銀行の勘定系システムのコンピューター(NEC製メインフレーム)は本支店のグループ(店群)単位の構成。東京8台と関西8台の計16台構成で1台が約30店を担当する(現在の本支店数は445だが単純計算で 30店 x 16台 =480店 まで可能)。このため今回は関西センター内の1台の故障により、その1台が担当する28支店が影響を受けた」と思われる。

デジタル時代を支える次世代勘定系システムの構築について | 三井住友銀行
なお銀行の勘定系は冗長化が必須で、常識的には障害の発生した関西センター内にバックアップ機もある筈だが、復旧に時間を要したのは二重障害や想定外などの複合的障害の可能性も考えられる。
また1月より実施中の新勘定系への移行作業と、今回の障害は無関係と説明。
同行は5月4~5日に新勘定系システムへの移行を計画しているが、今回の障害は「新システムへの移行とは関連がない」(広報)としている。
三井住友銀行でシステム障害、勘定系が原因か 移行とは「関連ない」 | 日経クロステック(xTECH)
Q3.復旧後の影響は?
三井住友銀行は4月分と5月分の一部の手数料を請求しなかった。
2025年4月分の手数料についてのご案内
2025年5月分の手数料についてのご案内
また5月に予定していた新勘定系システムの更改準備作業を延期したが、2026年度中の移行完了、とのスケジュールは変えていない。
三井住友銀行が新勘定系への移行延期、システム障害で 26年度中の完了は変えず | 日経クロステック(xTECH)
Q4.そもそも勘定系って何?
現在の銀行はIT(コンピューターと通信)を活用した装置産業とも言われるが、特に重要(ミッションクリティカル)な預金管理などの中核(コア)が勘定系で、通常は本支店・口座単位で各種の入出金や残高を管理している。他には顧客(CIF)単位の情報系、本支店用の店舗系、全銀接続などの対外接続系などもある。
日本では銀行の勘定系は社会インフラ扱いで障害は報道され監督官庁から改善命令を受ける事もある(世界的には障害で騒がれない国も多い)。
なお細かく見れば本支店の勘定系端末やATMやインターネットバンキングなども勘定系ネットワークで、どこまでを勘定系システムと呼ぶかは銀行や視点により異なるが、ここでは勘定系処理の中核のコンピュータを指す。
Q5.使われているコンピュータは?
三井住友銀行は勘定系コアに大手銀行では唯一、NECのメインフレーム・コンピューター(ACOS-4シリーズ)を使用しているが、ネットで得られる情報は非常に少ない。
ACOSはNECが技術提携したハネウェル(現BIPROGY/ユニシス)のGCOS、更にはGEのGECOSなどの流れを汲むメインフレームで、1974年に誕生し、現在の上位シリーズはバイトマシンのACOS-4、CPUはNEC独自からインテル itanium 2 に移行後、現在は再びNEC独自のCMOSプロセッサのNOAR。
NECは比較的小規模な銀行(旧第二地銀、相互銀行など)に強くオープン系(分散系)への移行も進めているが、「ACOS-4は三井住友銀行のために継続している」とも噂される。
なおメインフレームは富士通の撤退が有名だが、NEC(とIBM)は今後の新モデルを含めて継続表明済。
Q6.勘定系システムの構成は?
NECメインフレーム ACOS-4の使用は合併前の旧住友銀行から続いていて、ユニークな店群単位の「水平分散アーキテクチャ」を構築し、さくら銀行(旧太陽神戸三井銀行)との合併でも住友銀行が主導権を握り、住友銀行の勘定系システムに片寄せ移行した。その後にオープン化検証で一部業務を切り出ししたが、安定性重視で中核にメインフレームを継続し、2016年に機器更改(メインフレームの最新化)、2026年度に次の機器更改を予定している。
この水平分散アーキテクチャは支店数や支店当たりの処理が増加しても、理論的にはメインフレームの台数を追加すれば対応できるため、超並列(MPP)システムと同じような拡張性があると思われる。
一般論、特にリファレンス重視の銀行業界ではマイナーな製品や構成はリスクと扱われるが、合併時もその後も大きな問題や障害の話は聞かない事も事実だ。
(三井住友銀行の勘定系システムの経緯)
■1994 年 住友銀行 第4次オンライン化(約30店単位の水平分散アーキテクチャ)
■2002 年 さくら銀行と合併し三井住友銀行に(勘定系は旧住友銀行へ片寄せ統合)
■2009 年 オープン化検証(勘定系プログラムのオープン系システム稼働)
■2016 年 更改・BCP(ACOS-4 i-PX9800へ移行、東西センター相互バックアップ)

NEC、三井住友銀行の勘定系システムにおける東西相互バックアップ環境を構築 (2016年9月5日):プレスリリース | NEC
三井住友銀行、勘定系システムのBCPを大幅強化、NECが支援 - ITmedia エンタープライズ
■2026年度中 更改予定(ACOS-4 i-PX AKATSUKI/A100へ移行、勘定系DBからオープン系へのリアルタイム反映。移行作業 2025年1月から)
NEC、三井住友銀行の次世代勘定系システムの構築ベンダに選定 (2020年11月11日): プレスリリース | NEC
三井住友銀行が新勘定系システム移行を2025年1月開始、2026年度中に完了予定 | 日経クロステック(xTECH)
(参考1:メガバンクの勘定系コンピューター)

大規模なミッションクリティカル用の典型的な構成には2系統バックアップ構成(2系統XRF)がある。
- メインフレーム複数台をクラスタ化(Sysplex構成で時計共有やロック管理)
- 2系統(A系/B系)に分けてDB共有(本支店の端末もA/B半々でリスク分散)
- 各稼働系の障害児に待機系(ウォームスタンバイ)に切替(XRF Takeover)
- オプションでコールドスタンバイ機(平時の開発機などを停止して、I/Oやネットワークを切り替えて本番機として起動する)
なおXRFは製品ではなくOSやミドルに実装された高可用性機能で、切替時の瞬断を可能な限り減らすため、処理中のキューやログを参照して処理を引き継いで端末やATM側のタイムアウト内に処理結果を返すことで、大半の障害が見えない(=ユーザーへのエラー表示や再試行操作不要)にする。ただXRFはIMS 15.2以降はサポートが無くなるため、今後の構築では新しい方式に変わると予想される。
三井住友銀行の店群単位の並列処理と比較すると、基本は集中処理でリスク分散や即時バックアップ機を組み合わせた形といえる。
(参考3 当ブログの元となった当時のXポスト)
最後にIT関係の他の記事もよければ見てね(メインフレームとPC偏重ですが...)
以上です。