16ミリフィルム アニメ作品上映会(動画倶楽部 第1~4回@都立多摩図書館)の作品感想とスタッフ裏話と次回予告です(最終更新 2024/7/30)
- 第1回(2023/12/16)
- 第2回 (2024/2/10)
- 第3回 (2024/5/18) 「川本喜八郎&岡本忠成 Blu-ray」未収録作品集その1
- 第4回 2024/7/20 「川本喜八郎&岡本忠成 Blu-ray」未収録作品集その2 *1
- 裏話
- 次回予告 2024/9/28 特集「レジェンド監督・若き日の短編作品」
第1回(2023/12/16)
↓当日配布のパンフです(以下同じ)

①「日本漫画映画発達史 漫画誕生」(1971、29分、演出 藪下泰司)
大正時代の「兎と亀」(完成 1924年)から戦時中の名作「くもとちゅうりっぷ」まで12作品(*1)のナレーション説明付きダイジェスト紹介ですが、既に「蛸の骨」など輪郭あるマンガ系な作品と、影絵の「お蝶夫人の幻想」などアート系な作品と両方あって興味深いし、入門用の短いまとめ動画的な存在は貴重と思う。
*1 「劇場アニメ70年史」(徳間書店)より
②「日本漫画映画発達史 アニメ新画帳」(1973、40分、演出 藪下泰司)
2部構成の2部目は戦後編で、「白蛇伝」での東映動画の劇場長編アニメや「鉄腕アトム」などTVアニメは有名ですが、上映後にスタッフの友人と意見一致したのは、2部通して一番凄かったのは「こねこのらくがき」の森康二作画パートと呼ばれる前半の作画(本作にもそこだけ収録)で何回見ても圧巻です。
③「くじら」(1952、1巻、大藤信郎)
上映前の司会コメント「小説の直木賞は有名だが直木三十五の作品を読んだ人が殆どいないように、アニメの大藤賞も有名だが大藤信郎の作品を見た人は殆どいない」が面白かった。色セロファン使用の色彩影絵アニメでカンヌ受賞したアートで綺麗な映像作品ですが、話は海賊が延々と女性を襲ったり逃げ回ったりなので子供向けにも良いかは悩む作品でした(笑)
④「幽霊船」(1956、11分、大藤信郎)
これも色彩影絵アニメで冒頭に色セロファンを切る製作再現映像?があり、少し繰り返しが多いけれど帆船の帆が美しい。
第2回 (2024/2/10)
↓当日配布パンフの表と裏

①「バヤヤ」(1950、78分、チェコスロバキア、監督 イジィ・トルンカ)
個人的には一番好きな人形アニメ。トルンカ初期の長編ながら人形の顔を変えずに感情表現するために、まず画面の1/3は真っ暗ではと思うほどの光と影の映像美、小屋へのズームから始まり奥行きあり横動きも繋がる見事なカット繋ぎや場面転換、手間のかかる複数人形同時動作や風に靡く布、シンプルなのに目を引く3番目の姫の端正な造形、そして闘い後のバヤヤの後ろ姿にここぞとかかるテーマ音楽、うーんやっぱり名作です。
当時の邦題は「バヤヤ王子」ですが原題に「王子」は無いし王子も出ない、とはいえ馴染みのない日本人向けに作品ジャンルをうまく表現した工夫とは思う。日本語ナレーションも最低限で良かった。16ミリフィルム2巻で映写機1台のため架け替え休憩あり。
↓『バヤヤ』Best of Czech Animation DVD ダイジェスト(1分13秒)
↓3番目の姫

②「王様の耳はロバの耳」(1950、28分、チェコスロバキア、監督 カレル・ゼマン)
特撮で有名なカレル・ゼマンの、同じく人形アニメ大国チェコの作品ですが、陰影ある雰囲気が印象的でした。
③「あるペンギンの話」(1968、21分、ソ連、ボルゴグニコフ)
結末に家族愛や運命とは、と思わせる作品ですが、ペンギンが海に行くか悩んでいるシーンで「誘われて海に行きますが、途中で気が変わり戻って来るのでした」のように先の展開までバラす日本語ナレーションが凄すぎでした(笑)
④「人魚に恋した男」(1974、11分、フランス、ジャン=フランソワ・ラギオニ)
独特の時間が流れる切り紙アニメのラギオニ作品で、人魚姫展開のようで結末が気になります。
↓別作品ですがラギオニ処女作の「お嬢さんとチェロ弾き」(1965)
第3回 (2024/5/18) 「川本喜八郎&岡本忠成 Blu-ray」未収録作品集その1
↑上映会のサブタイトルが付きました

①「蓮如とその母」(1981、93分、監督 川本喜八郎)
「NHK人形劇 三国志」や「鬼」、「道成寺」など熱心なファンも多い川本監督の初の長編ですがファンタジーなしの差別を描いた歴史物語で人形アニメながら手厚い声優陣もあり実写映画的な見応えでした。
②「空とぶサラダボール」(1977、21分、人形アニメーション 岡本忠成)*1
キューピー株式会社のPR映画で実写とほぼ半々ながら、同じ岡本監督の「NHK みんなのうた」の「メトロポリタン美術館」のように音楽に合わせて楽しく踊る人形アニメが個人的に好きな作品です。なお続編?の「サラダ学園」は戦隊ものパロで少し違う。
*1 作品オープニング上の表記はパンフの「空飛ぶ」ではなく「空とぶ」でした
↓サラダボールの話題もある「おもちゃ映画ミュージアム」さんの記事。
③「人間いじめシリーズ」3本
*1 Bru-ray収録作品ですが3本セットで上映
創作落語に合わせて世間の迷惑行為を戒める短編アニメシリーズですが、今の人権感覚からみるとうーん(笑)
第4回 2024/7/20 「川本喜八郎&岡本忠成 Blu-ray」未収録作品集その2 *1
*「その2」は岡本忠成作品のみ

①「日本むかしばなし さるかに」(1972、19分)
猿蟹合戦の人形アニメで人形や背景は良いのですが、原作絵本のせいか最初は何故か餅つきだし、単純な話なのにつながりが判りにくいし、どういう演出なんだーとの感想でした。
②「忘れられた人形」(1980、14分)
人形アニメの人形が絵の世界に入って遊ぶハイブリッドアニメで、何回か見ましたが素朴なほのぼの感が魅力です。
③「ちからばし」(1976、11分)
夜の山道で怪異に出会う雰囲気が良く出ている人形アニメでした。
④「鬼がくれ山のソバの花」(1979、 23分)
淡々と進んですっと終わるのが印象的でした。
⑤「南無一病息災」(1973、18分)
保険会社のPR映画で一病息災する男と太く豪快に生きた男の対比ですがラストのフォークソング「一病息災、一病息災~」が何回見ても印象的です。
⑥「虹に向って」(1977、18分) *1
企画 貯蓄増強中央委員会ですが岡本作品で一番好きと言う人がいるのもわかる純愛物語で、これもラストのフォークソング「いま二人は~虹に~むかって~」が何回見ても心に残ります。
*1 作品オープニング上の表記は「向かって」ではなく「向って」
↓中国の bilibili(ビリビリ)で登録パネルが出ても無視で全編見えてしまう
裏話
①16ミリフィルム
スタッフと言っても単なる当日のお手伝い要員ですが、会場で「フィルム映写機の実物を初めて見た」との声も聴いたので、素人ながら受け売りでフィルム上映会の開催側の話題です。
まず映画は今は基本デジタルですが昔はフィルムで、主な規格はフィルム幅により劇場用の35ミリ(更に高品質な70ミリなど)、ロケ撮影や学校上映などの中型の16ミリ、家庭用の小型の8ミリがあり、16ミリ映写機は個人がギリギリ運搬可能です。
またアニメーションを含む映画には劇場やテレビなどの商業映画の他に、企業などのPR映画や海外を含めたアートな作品もあり、その中にはクリエイターの個性や技法の自由が発揮された作品もあるので1970~80年代頃は同好サークルや大学で良く16ミリフィルム上映会が開かれました。今ならプロジェクタか同時配信イベントですね。
フィルムは当初は各企業やカナダなどの大使館から直接借りて「大使館フィルム」とも呼ばれたようですが、私が学生の1980年代には作品の多くは大都市の図書館に所蔵されて直接ではなく図書館貸出となり「図書館フィルム」と呼んでいました。
②フィルム上映会
モニターやプロジェクターと比較して、フィルム上映は暗闇で大きいスクリーンを皆で見る雰囲気や、スクリーン反射光の濃淡などに好みもあり、また残念ながら現在フィルムでしか観られない作品もあります。
フィルム上映会は「16ミリフィルム」や「フィルム上映」などでSNSやネット検索すれば都市部では結構細々と開催されています。
そして自分でフィルム上映会を開催したい場合は以下が必要です。
- フィルムと映写機 - レンタルもあるが図書館貸出が簡単で無難
- 会場 - 安いのは公民館など、スクリーンは付属またはレンタル
宣伝は1980~90年代は紙のちらしや雑誌「ぴあ」やパソコン通信(BBS)でした。現在の動画倶楽部は割り切ってX(Twitter)のみですがネット上なら作品名の検索も効きます。
③フィルムと映写機の図書館貸出
関東近辺では最も充実していた都立日比谷図書館の16ミリフィルムは、2009年に都立多摩図書館に移管されましたが、移管後のフィルムの保管箱や貸出履歴や作品冒頭表示は今も「日比谷」記載です。
ここもポイント!~貴重な16ミリ映画フィルムを公開
平成21年(2009年)に、旧都立日比谷図書館から、16ミリ映画フィルムおよそ9,400本が移管されました。「チャップリンの黄金狂時代」(1925年)や「二十四の瞳」(1954年)をはじめ、東京の資料や劇映画、ニュース映画など、そのタイトルは多岐にわたっています。多摩図書館では毎月定例映画会を開催するほか、所蔵している16ミリ映画フィルムと映写機は、都内に所在する団体や施設に貸出をしています(あらかじめ、団体登録が必要です)。
多摩図書館が所蔵する16ミリ映画フィルムの目録にはディズニー短編、フライシャー、マクラレン、旧東映動画、虫プロ作品などもありますが、作品名だけで推測して借りるとギャンブルになります(後述の団体登録後に試写もできます)。
フィルムや映写機の貸出には上記のように団体登録(なんとか映画会とか)が必要ですが、フィルムは取り扱い注意なので団体登録には16ミリ映写機の「修了証」または「準ずる技術の習得者」が必要です。
映写機操作者として、区市町村の実施する16ミリ発声映写機操作講習修了者又はこれに準ずる技術を習得している者の氏名等を登録すること。
なお多摩図書館では(共通の)「修了証」は発行していないが、「講習会」を受ければ(多摩図書館に限り)団体登録もフィルム・映写機の貸出もできるようです。
この講習を受講して団体登録していただくと、当館所蔵16ミリ映画フィルムの団体貸出を利用することができます。技術・知識確認のための再受講も可能です。
当館所蔵の16ミリ映画フィルムの利用を希望する団体の方が対象です。受講を希望する場合は、下記申込フォーム、または電話にてご連絡ください。日程等を調整の上、実施いたします。なお、「東京都16ミリ発声映写機操作講習修了証」の発行を伴う講習ではありません。
また首都圏の各県でも類似の講習が2024年にもあるようです。
16ミリ映写機操作講習会 – 千葉市生涯学習センター:千葉市の生涯学習情報・イベント・ボランティア情報
令和6年度16ミリ映写機技術講習会を実施しました! - 埼玉県立図書館
2024年6月5日(水曜日)、12月4日(水曜日)開催 「図書館で資格を取ろう!16ミリ映写機講習会」のご案内 | 神奈川県立の図書館
なお映写機メーカーは国産初のエルモや、映機、北辰などが有名ですが、既に製造停止で多摩図書館貸出もメーカーは選べず1団体1台まで、故障時は複数台から部品取りして1台を直したりするそうで貴重品です。
ところで映写担当に聞くと、上映順は最初に長編で後は時間の長い順とのこと。映写機も付属の空リールも1組で手動リワインダーも無いので、作品上映終了ごとに巻き戻し時間が発生しないよう、前の作品のリールに次の作品を巻いて上映会終了後に全部巻き戻すそうです。
④会場
公民館などの上映会は重い映写機の移動に手間と費用と神経を使いますが、多摩図書館では建物内のセミナールームを数千円で借りれば、館内の台車移動だけで貸出と返却ができて、備え付けスクリーンもあるので凄く楽ちんです。
ただセミナールーム2の後ろのガラス越しの映写室は貸出対象外なので部屋内に映写機設置となり、カタカタカタの映写音はありますが少人数で運営できます。
なお上述の多摩図書館主催の16ミリフィルム定例映画会では、この映写室も使用して上映するようで、次回8/4は「おばけが登場するアニメ」特集です。
⑤最後に
東京や多摩図書館に偏った話でしたが、16ミリフィルム上映会は「修了証」か「講習会」さえクリアできれば意外と簡単にできる、と思います。難点は多摩図書館は最寄り駅が西国分寺駅で都心から遠方に見える事でしょうか。
なお少人数の上映会は「内輪的で入りにくいかも」と思われがちですが、動画倶楽部の上映会では大多数の方は普通に入退室されてアンケートも会話も特に無く、どんな方かはスタッフも皆目わからない状態ですので、お気軽に。
次回予告 2024/9/28 特集「レジェンド監督・若き日の短編作品」
次回は各作品の演出家陣の影響か従来の第1~4回よりXのポストが広く拡散され層も異なる印象です。
16mm上映会のお知らせ
— 全国アニメーション総会東京大会(動画倶楽部) (@animesoukai_tky) 2024年6月21日
・紅ばら白ばら(富野喜幸・野村和夫)
・しあわせの王子(富野喜幸)
・風の又三郎(りんたろう)
・りゅうの目のなみだ(押井守)
・動物村の消防士(杉井ギサブロー)
2024.9.28(土)13:30開場14:00開映 無料
都立多摩図書館(中央線・武蔵野線 西国分寺駅 徒歩7分)セミナールーム2
以上です。