衆院選から1週間だが、4野党共闘の共通政策にも含まれた「消費減税」に遅まきながら反論したい(4党中、立憲民主党は抵抗したが最後は共闘を優先して合意した)。
まずネットで見かける以下の二元論は(一面の真理は含まれているが)単純すぎると思う。
結論を先に言うと、私はコロナ禍など非常事態下での一時的な減税は必ずしも否定しないが、消費税(間接税)は世界的に一般的で、それ自体を敵視するのは間違っているし、最後はバランスだと思う。
まず自由放任だけで理想の所得分配はできない以上、富裕層への課税と貧困層への再分配は必要で、社会安定化は資本主義のためにもなる。(富裕層による自発的寄付だけで済むというフリードマンなどの極端なリバタリアニズムや、無限に赤字国債を発行して大丈夫という無謀なMMT理論などでない限りは。なお岸田首相の表現は単なる賃上げ誘導を含めた「分配」で、課税強化を含めた「再分配」とは比重が違う。)
北欧で「税金とは何か」と聞くと「投資」と返って来るという記事を見たが、民主主義(人民支配)らしい発想で、うらやましい。日本なら「お上が召し上げて勝手に使うから、取られるのは少ない方がいい」などの被支配者の発想が根強い気がする。確かに国庫に亡者が群がるのは万国共通だが、家計でもサークルでも国家でも、課題を整理して議論して透明性を上げて徐々に改善するのがオーナーシップ、しかし不信感で忌避するのは懐疑で、結果はその集団全体の弱体化だろう。
では何に課税するか。所得課税は基本だが、景気次第で不安定だし、所得捕捉率次第なので税率が上がれば業種間の不公平感は増す。ブラック経済など豪華消費も課税対象外な現実が広くあり、税務署よ摘発がんばれ、だけでは限界がある。
次に資産課税は判り易いが、今は法人化や海外移転など回避策も多く、相続家屋の分散など弊害もある(将来的にはグローバル税制ですが)。
消費税(間接税)は消費額に比例するので、富裕層が贅沢するほど沢山払う。なお庶民のマイホーム購入や高額医療などは個別の緩和制度がある。ランチに500円も5万円も個人の自由だが納税額は100倍で、これは節税大企業も暴力団も貧乏人も平等だ。
ここで主な消費税批判にコメントしたいが、一部は知られてないだけ、一部は消費税題というより日本の政治の問題と思う。
- 貧困層はエンゲル係数(生活必需品)も高く不利→実は消費税導入時の減税で相殺済、富裕層は全体の消費も多い
- 贅沢品は高くすべき→それは昔の物品税で、ピアノやワインは税率高いなど、基準が恣意的で業界団体の政治介入を招き、今は貿易条約上も困難で、酒税の発泡酒競争など不毛な企業努力や税金逃れを誘発する
- 財源あるだけ使われる→事実だが、それを許さないのが民主主義では(悪循環)
- 全額社会保障が裏切られた→裏切者を批判して戻すべきでは(三党合意では全額社会保障だったが、安部政権は消費税の用途変更を選挙公約に解散し大勝した。)
- 増税分が法人税減税に充てられている→これは本当で、背景にはグローバル化での各国の減税競争があるが、ピケティ提案のグローバル税制の整備を待つしかないかも。
- インボイスは間接税の追跡可能性、つまり公正な課税の証明だから、先進国の常識で、日本も消費税導入時に「最初は5%なので省略、今後の税率アップ時に検討する」とされたのに放置されてる。これは「関係者も利益を得れば消費税反対しにくいよね」との不健全な益税(日本的買収)なので、早々に正常化すべきと思う。領収書の発行や保管と同じだ。
最後にまとめ。そもそも左右とか、若者と高齢者間の対立の話ではない。
- 一定の税金は必要だ(再分配=社会安定=進歩主義)
- 税制の柱として消費税は重要だ(安定性、網羅性、物品中立性)
- インボイスも是非必要だ(公正性、不明朗な益税の排除)
- 非常時の消費減税はあっていいが、会計や小売りの手間もあり長期的に
最後の最後に、上記の「増税=進歩主義」の補足です。よく「世界的には左派は増税(大きい政府)なのに、日本の左派は増税反対でおかしい」と言われるが、この理由は小熊英二(慶大教授)の「日本は戦前戦中の軍国主義(全体主義・重税)が激しかったため、戦後の左派は平和主義(自由主義・増税反対)になった」が妥当に思える。米国では建国の経緯で「右が反中央集権(反連邦)」となり、ドイツは戦間期のハイパーインフレの影響で左右問わず財政規律に厳しくなったように、各国の経緯があるのは自然と思うし、細かく見れば左にも右にも色々な意見があると思う。
以上です。