らびっとブログ

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安部政権を振り返る10の特色

2020/8/28 安部首相が辞任表明した。2回目だが体調なら仕方ない。安部政権の特色を10のワードで振り返りたい(敬称略)。

  1. 改革路線。第一次安倍政権は小泉改革継承を掲げて始まった。しかし田中角栄の列島改造、中曽根の民営民活、小泉の郵政改革などと比べると「働き方改革」「一億総活躍」など表面的/断片的で選挙/野党対策的なスローガンが多く、やってる感重視なのは残念だ。(過去の内需転換/民活/低炭素/持続可能社会など、次の方向性を打ち出して欲しかった。)
  2. 仲間重視。第一次安倍内閣での最初の批判は郵政造反派の大量復党だった。その後のお友達内閣、アベノマスク/GO TOの業者まで、良くも悪くも仲間重視が一貫。小泉は都市型政党への変換を目指したが、安倍氏は内輪重視。田中派は野党とのパイプを誇ったが、安部氏は国会内エレベーターで口を聞かないとの話も多い。性格なのか。(首相は本来、与党トップ 兼 全体の代表と思う。)
  3. 政治主導。実は民主党政権の官邸強化が基盤だが、調整型の多い自民党では珍しく、日銀/内閣法制局/検察庁人事など伝統的慣例を破り強引な運営を行った。保守というよりプーチンなどの権威主義に近い(政府の長というより、皇帝/共産党的に政府を指導するスタイル)。官邸の維新との蜜月は、公明党牽制もあるが政治スタイルも似ていた。
  4. 攻撃中心。調整重視の谷垣氏とは違う。仮想的を作り強い支持を集める。「日本を取り戻す」「この道しかない」。しかし愛嬌もあるレーガン/小泉と違って権威的/内輪的で「安部嫌い v.s. 安部サポーター」構造に陥った。悲願の憲法改正では安易な野党批判で審議停滞など老練さが無く一本調子すぎる。特に憲法修正案をコロコロ変えて信念が無い。他方で守備は苦手なのかコロナ対策では官邸の思い付き重視。(首相は本人がアイディアマンではなく、プロの上位マネジメントであってほしい。)
  5. アベノミクス。当初の三本の矢は「1.金融政策、2.財政出動、3.規制緩和」。3が本命で1,2は時間稼ぎ、つまり小泉改革の継承だった。しかし3が消えて次第に「デフレ対策、インフレ誘導」だけになり古い産業構造延命に変質。そもそもアジア輸入拡大やIT効率化の価格低下はデフレではなく自由経済の恩恵と思う。インフレ目標は最初から無理筋で当然未達成。震災後に借金して金を流せば株価/景気向上は当然だが、財政/生産性は悪化、少子化/移民も進まず閉塞感。(個人的には経済は労働人口が母数なので、ナショナリズム観点で計画的な移民受け入れが妥当。現状は内輪批判を恐れた先延ばし。)
  6. 消費税。安倍政権は財務省/消費税を敬遠する。2度延期し、増税しても全額社会保障財源の政府約束を変えて自分の政策に流用してしまう。(災害対策など時限的な減税はありうるが長期的には、実消費に比例した税金を取る消費税は、富裕層の負担が多く節税困難で、その富裕層からの税収を再分配し投資するのが社会保障だ。社会全体の再分配の話で、目先の個人的損得に騙されてはいけない。)
  7. 選挙に強い。国政選6連勝は偉業だ。ただし自党に有利な論点の無い時期に解散するなど解散権の濫用が激しく、野党自滅も大きい。首相の解散権に制約が無いのは先進国では日本だけだ。また1強で政府/当内多様性も低下した。(個人的には投機的自由主義の強いアングロサクソン的な二大政党制は時代遅れ/夢想で、欧州大陸的な多様性ある比例代表制と長期間の連立交渉が理想だ。)
  8. 空前の親米。歴代政権も親米だが、氏の政治信条は戦前復古(反米民族派)なのにTPP/防衛装備購入など空前の対米開放。一水会など民族派右翼からの「売国」呼ばわりも仕方ない。中国/北朝鮮対策での対米譲歩説が一般的だが、安部氏はアメリカ留学時に感動したとの説が意外と本当かも。大統領的な政治主導も同じだ。
  9. 外交。氏の得意分野だが、実は成果は少ない。相手のある事とはいえ、北方領土/拉致問題は硬直化だけで相手にされない。「自由と繁栄の弧」は死語。嫌いな相手ともギブアンドテイクでカードを切っていくのが外交では。(北朝鮮は非常に冷静合理的な外交をする。国民は予想不能で怖いなどと騙されてはいけない。)
  10. 辞め方。2回とも健康問題だが、1回目は最初は「私が辞めて国会が進むなら」と愛国的犠牲精神を演出し、後に健康問題と判ってカッコ悪かった。2回目は戦後最長を待ってからに見えるが、記者会見は判り易かった。(普段からこのような会見をしていれば良かったのに、との声多数ですが同感。)

 

(了)