「民主主義」などの用語を違う意味で使って噛み合わない不毛な議論を昔からよく見るので、代表的な政治思想用語の本来の意味を書いた X へのポストをまとめて、青字追記してみました(最終更新 2024/10/17)
本来の意味の政治用語① 自由主義
— rabitgti2 (@RabitGti2) 2024年9月10日
× 自由に好き勝手できる
◯ 人は理性を持ち自分で判断できる
従来の「人間は愚かで罪深いため高貴な人物(身分)や神に従うべき」との宿命論に対して、「人間は理性により判断し選択できる」との哲学的立場で、政治的自由や経済的自由の基礎概念。
【違い】現在は「他人に迷惑をかけなければ何をしても良いのが自由主義」と思われがちだが、本来は「人は運命や身分や神などに縛られず、自由に判断できる能力を持っている」という考えで、これが無ければ選挙や市場経済など近代思想も成り立たない。
【歴史】オリエント(東洋)の専制に対して、「自由」の概念は古代ギリシアで生まれ、中世では長く忘れられていたが、ルネッサンスで再評価されて近代思想となった、というのが一般的(それは西欧中心主義、との批判もありますが)
本来の意味の政治用語② 民主主義
— rabitgti2 (@RabitGti2) 2024年9月11日
× 選挙で政権を選び多数決で決める
◯ 一部の貴族ではなく平民全員が支配する
高貴な君主や貴族や神官ではなく、大衆が全体を統治する。そのために法や集会や任期制や平等などの制度や理念が必要。
多数決は単なる決定手法の一つで、本来の民主主義ではない。
【違い】現在は「選挙と多数決のこと」と思われがちだが、本来は「少数者支配に対する多数者支配」の事で、選挙や多数決は方法にすぎないし、普段からの情報公開や報道が無ければ公正な選挙にもならないし、少数派を迫害して良い訳でもない。
【歴史】デモクラシーが生まれた古代ギリシャでは王を追放して、法を定めて民会で決定し、役職も任期を決めるなど自治や共同統治の側面が強かった。近代では自由主義的な民主主義として選挙による代議制(間接民主主義)が中心になったが、これには「有権者は選挙の時だけ王様で、後は奴隷」(ルソー)とか、「多数者による専制」(トクヴィル)などの批判もある。
本来の意味の政治用語③ 資本主義
— rabitgti2 (@RabitGti2) 2024年9月12日
× 自由に商売できる社会
◯ 人間が資本に使われる社会
元々は社会主義者からの批判語で、単なる自由市場ではなく、近代産業資本の自己増殖作用に労働者も資本家も動かされる社会のこと。
本来の自称は自由主義経済や市場主義経済で、資本主義の自称は本来おかしい
【違い】現在は「自由な市場経済のこと」と思われがちだが、本来は「カネに人間が動かされている」との批判語で、マルクスでは「産業革命以降の産業資本の蓄積とその自己増殖」(富裕層は投資で更に富み、貧困層は賃労働しか選択できず更に窮する世界)のこと。
【歴史】近代までは権力が商売を規制していた。アダム・スミスは単に「自由主義」と自称した。貧富の差が拡大すると社会主義者が「資本主義」と批判するようになった。ピケティは貧富の差の拡大を統計で証明した。
本来の意味の政治用語④ 社会主義
— rabitgti2 (@RabitGti2) 2024年9月13日
× 国家が企業国営化や計画経済を行う
◯ 資本主義の問題を社会的に対応する方向性
元々は、経済的自由主義の富の私有化による弊害を、社会で解決しようとする方向性なので、資本家の紳士化や、協同組合、労働権、福祉国家、共産主義革命、北欧社民主義など色々。
【違い】日本では「社会主義=ソ連=国有化」と思われがちだが、本来は社会の私有化(パーソナライズ)の弊害対応を、個人ではなく社会化で考えること。
【歴史】まずは資本家のモラル向上、自主的な共同体、労働運動などが考えられたが、第一次世界大戦勃発時に①愛国的で穏健な社会改良を目指す「社会民主主義」と、②政府の戦争に反対して革命を目指す「マルクス主義」(後の共産主義)に分裂した。現在は資本主義国にも経済政策や社会保障など社会民主主義的政策が取り入れられている(福祉国家、修正資本主義、混合経済)。
本来の意味の政治用語⑤ 共産主義
— rabitgti2 (@RabitGti2) 2024年9月14日
× 共産党による独裁
◯ 財産共有の思想全般
広くはプラトンの妻子共有や原始キリスト教の資産共有も。マルクスは中世の各種共同体所有を破壊した、自由主義の私有化に対して、生産手段の私有廃止と社会的共有の復活を主張した。ソ連での国有・公有化はレーニン主義
【違い】日本では「共産主義=ソ連・北朝鮮」と思われがちだが、本来は富を共同体で共有する思想のこと。
【歴史】①古代スパルタ、ゲルマン、多くの宗教で財産共有がみられる ②19世紀に「土地などの生産手段の社会的所有」を主張したマルクス主義が共産主義と呼ばれるようになった ③20世紀の社会主義運動分裂で、「暴力革命と階級独裁」を掲げたレーニン主義が共産主義と呼ばれるようになった。どれを指しているかで良く紛糾する。
本来の意味の政治用語⑥ ファシズム
— rabitgti2 (@RabitGti2) 2024年9月15日
× ナチスの全体主義
◯ ムッソリーニの思想
本来は、資本主義とボリシェビキの階級対立の両方に反対し、古い王政や教会の特権を無くして古代ローマ理想の大国を目指す結束主義。
源流は愛国的で反共の黄色社会主義でコーポラティズム。なおナチスはナチズム。
【違い】「ナチスの思想」と思われがちだが、本来は「ムッソリーニの思想」で、資本主義(個人主義)と共産主義(国際主義)の階級闘争を両方否定して、愛国的な国家主義(古代ローマ帝国の復興)を掲げた。
【歴史】ムッソリーニは元は愛国的な社会主義者で、暴力の美学を主張するソレルにも影響を受け、最初は反国王・反教会だったが、和解して全体主義を進めた。このため右翼と左翼の両方の要素がある。
本来の意味の政治用語⑦ ナチズム
— rabitgti2 (@RabitGti2) 2024年9月16日
× 一党独裁の国家主義
◯ 指導者原理の民族主義
当初はナチス左派も含む反資本主義・反共産主義・反保守(貴族・教会・議会)の共和主義で、イタリアの国家主義より民族中心(ユダヤ差別)で、後の独裁も党より指導者など後期ローマ皇帝やナポレオン的。
【違い】ムッソリーニのファシズムと同様に、資本主義(個人主義)と共産主義(国際主義)の階級闘争を否定するが、国家主義より民族主義。また「一党独裁」と呼ばれるが、指導者原理による「個人独裁」の側面が強い。
【歴史】当初はドイツ労働者党だが、ナチス左派は粛清され、選挙(暴力あり)で政権獲得して独裁政治を行い、民族の生存競争を理由に弱者の抹殺を進めた。
本来の意味の政治用語⑧ 全体主義
— rabitgti2 (@RabitGti2) 2024年9月17日
× 独裁的な体制
◯ 西側からのファシズムと東側への批判語
元は全体戦争(=総力戦)からの類推語でムッソリーニも良い意味で使ったが、第二次世界大戦の「ファシズム(日独伊)と民主主義(米英仏ソ中)の戦い」から、東西対立で東側(ソ中)を悪側に再編した用語
【違い】単なる独裁や専制と思われがちだが、本来は「ファシズムと共産主義は同類だ」との西側の宣伝用語で、ラジオや自動車や機関銃など近代技術により個人の生活の隅々まで統制し管理する社会のこと。
【歴史】ムッソリーニは良い意味で「全体主義」を自称した事もある。ハンナ・アーレントは著作「全体主義の起源」で、ナチスのユダヤ人虐殺は異常者ではなく普通の人によって実施されたと主張した。なおオーウェルの小説「1984年」は全体主義的なディストピア世界の代表作となった。
本来の意味の政治用語⑨ リベラル
— rabitgti2 (@RabitGti2) 2024年9月18日
× 左派的な層
◯ 自由主義
混乱の多い用語。本来は自由主義の事で欧州は今も同じ。
しかしアメリカで古典的(自由放任的)な自由主義に対して、公正(社会)重視のニューリベラリズムがリベラルと呼ばれ、それを古典派は社会主義と批判した用法が、日本にも。
【違い】リベラルは本来は自由主義のこと。自民党の英語名はリベラル・デモクラティック。ところが「リベラル(アメリカ民主党など)は社会主義的だ」とのアメリカ特有の用法が日本にも輸入されて混乱が続いている。
【歴史】アメリカでニューディール政策やケインズ主義や公民権運動や独占禁止法等が連邦政府主導で進み「ニューリベラリズム」や「リベラル」を自称した。これに反発する新自由主義(ネオリベラリズム)は「リバタリアニズム」とも自称した。なおヨーロッパではリベラルは従来通り(新)自由主義を意味する。
おまけ アメリカ用法の自由主義の対比
— rabitgti2 (@RabitGti2) 2024年9月18日
←古典的 リベラル→
ファンダメンタリズム ニューリベラリズム
自由放任 自由確保目的の政府介入
レッセフェール ケインズ主義
差別放置 公民権運動
小さい政府 大きい政府
地方自治 連邦政府
武装の権利 銃規制
共和党 民主党
本来の意味の政治用語⑩ 新自由主義
— rabitgti2 (@RabitGti2) 2024年9月19日
× 古典的自由主義の再評価
◯ 古典派自由主義への批判用語
現在では、社会的公正重視の「ニュー」ではなく、復古的な「ネオ」の訳で、ネオナチ同様に元は南米での規制緩和や自由放任への批判用語。
自称は単に自由主義なので、新自由主義の自称はおかしい。
【違い】日本語の「新自由主義」は、最初は公正を重視する「ニュー・リベラリズム」の訳だったが、1970年頃からは自由放任の再評価の「ネオ・リベラリズム」の訳。
【歴史】用語は1930年代からあったが、1970年代に南米チリでアメリカの支援でクーデターを起こしたアジェンデ政権が大幅な自由化を行い、それが「新自由主義」と批判されて用語が普及した。
本来の意味の政治用語(11) リバタリアニズム
— rabitgti2 (@RabitGti2) 2024年9月20日
× 古典的自由主義の再評価
◯ 自由至上主義
主にアメリカでの用語で「リベラル=中道左派」に対する「徹底した市場経済」。
政府の経済政策や福祉は全廃し、軍や警察も民営化、通貨は各都市が発行、公共は企業の寄付で、など古典的自由主義とは違う。
【違い】主にアメリカの用語で、徹底した自由放任主義。警察や軍の民営化、中央銀行の廃止(通貨の自由化)、福祉の全廃なども主張する。
【歴史】アメリカで社会民主主義的な政策が「リベラル」と呼ばれるようになったため、自由放任的な自由主義者が「新自由主義」や「リバタリアニズム」と呼ばれるようになった。アメリカ第三政党のリバタリアン党も存在する。
本来の意味の政治用語(12) アナキズム
— rabitgti2 (@RabitGti2) 2024年9月21日
× 無政府状態を目指す
◯ 権力の無い世界を目指す
「無政府主義」との訳は誤解を招くと批判が多く、本来は権力や権威を最小にして自由な連帯による社会を目指す。
自由主義やリバタリアニズムにも通じ、権威的な君主や共産主義(ボリシェビキ)と対立する。
【違い】日本語訳の「無政府主義」は「無政府状態を求める思想」と誤解されるため批判が多い。本来は権力や支配を最小にしようという思想。
【歴史】ロシアの無政府主義者が要人の暗殺を起こしたため危険思想と思われがちだが、最近では台湾のオードリー・タン氏も有名。
台湾、オードリー・タン「アナーキズムは無政府主義ではない」 | ゴールドオンライン
本来の意味の政治用語(13) ポピュリズム
— rabitgti2 (@RabitGti2) 2024年9月22日
× 大衆迎合主義
◯ 民衆(大衆、人民)派
本来はカエサル、ヒトラー、アメリカのポピュリズム党(人民党)など、エリート支配層に対して民衆を支持基盤にする政治傾向で、特にネガティブな意味は無い。
【違い】日本では「大衆迎合主義」と悪い意味で使われるが、本来は「大衆派」の事で悪い意味は無い。大衆人気を背景に影響力を持ち、既成勢力であるエリート(学者や官僚や議会政治)を批判する事が多い。
本来の意味の政治用語(14) 右翼と左翼
— rabitgti2 (@RabitGti2) 2024年9月22日
× 右は国家/民族主義、左は社会/共産主義
◯ 右は保守、左は改革派
本来はフランス革命での議会の座席で、右は王党派や教会、左は革命派(自由、民主、ナショナリズム)
ナショナリズム(近代国民国家、常備軍、中央銀行)や人権は元は左翼思想
【違い】多くの辞書や事典で「右翼は国家主義や民族主義、左翼は社会主義や共産主義」と書いてあるが、これは冷戦期までの話で、本来は「右翼は保守主義、左翼は進歩主義」。民主主義や自由主義や法治国家やナショナリズムや国民国家は元々は左翼思想で、伝統や安定を重視して急進的な左翼に反対するのが右翼思想。
以上です。