らびっとブログ

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2020年回顧 (3)ポピュリズム退潮(安倍/菅政権、英国EU離脱、大阪都構想、愛知知事リコール署名)

2020年回顧の最後。なるべく長期観点で振り返りたい。

 

なおポピュリズムは元々は米国ポピュリスト党(人民党、大衆党)など悪い意味はなく、大衆の支持を背景に大衆の希望を実現する面では民主主義的だ。ただしここでは、後に批判的に使われた悪い意味(大衆迎合主義)で使用する。ポイントは従来の「左 v.s. 右」ではなく、「エリート v.s. 大衆」軸の観点で、支配層(エリート)を批判して大衆迎合するため、反近代(法治より人治、反知性主義)で場当たり的で分断主義、そして差別主義や排外主義と結びつきやすい(ナチスなどもポピュリズムとされる)。

 

  1. 年末に「菅政権支持率40%台」が続出中だが、支持率は長期で見たい。「安部政権退陣表明後の70%」や「菅政権発足直後の70%」は一時的要因なので、「70%から40%に急減」との指摘は余り意味が無い。ポイントは両政権の最大支持理由の「他に良い人がい無いから」で、つまり消極支持(安定優先で皆が推す人を推す)が今の世論の大半。実際に安倍氏辞任表明直後の菅氏人気は低く、菅・二階連合のなだれ現象直後に支持率も急上昇した。つまり「皆が支持を止めれば私も見放す」との薄情な支持で、逆境には弱く、福田/麻生政権と似ている。そもそも両政権の特色は(安倍政権を振り返る10の功罪でも書いたが)「抜本改革は先送り、官製相場で人為景気、やってる感政策」なので、実体経済は生産性低下の亡国路線。アベノミクスでは当初本命の規制緩和/成長戦略は不発、受益者負担に反するふるさと納税やGoTo、民間介入の携帯料金、屋上屋のデジタル庁など、悪い意味のポピュリズムが多い。統治/経営のプロの仕事をして欲しい。
  2. ブレグジットも年末にやっと決着。この主犯はキャメロンで、残留派なのに党利党略で立法化し、不正確な離脱メリットを拡散して、意外にも成立するとさっさと逃げた。メイ首相やジョンソン首相は尻ぬぐいだ。ところでこの混乱を理由に「直接民主主義国民投票は、拮抗すると国論分断/不測結果になるので良くない」との説もおかしい。間接投票の日本の首相指名/不信任案可決/法律可決も51%で情勢に左右されるし大平政権ハプニング解散もあった。票読みの難易はあるが「否決見込みなので賛成した」などは直接/間接無関係で、重要な決定は慎重に(51%はギャンブル)という一般論と思う。
  3. 大阪都構想も2度目の住民投票で否決された。そもそも都構想は内容も疑問だが、今回は「コロナ対応で知事がテレビ露出して人気が高まったから、急遽実施して維新の目玉に」という露骨な党利党略が住民にしっぺ返しを食らった形で、動機も結果も安易なポピュリズムだ。
  4. 更に愛知大村知事リコール署名運動が法定数未満&8割超不正疑惑の醜態で終わった。トリエンナーレでの展示自体には議論もあるが、そもそも愛知知事が「憲法表現の自由はある」と言った事を問題視してリコールという発想が自己矛盾だ。古典的な保守主義パターナリズム(父権主義)や排他的な共同体主義ならばある程度わかるが、「自由」を主張して好き嫌いで少数意見排除を進めるという面がSNS的な自己矛盾ポピュリズムかと思う。

 

(まとめ)コロナ禍もあり多くのポピュリズムは退潮した(分断より共同体、専門家批判の限界)が、「多数派である民衆の直感が正しく、エリートは信用できない」の想いがある限りポピュリズムは繰り返す。「民主主義=多数決」ではない。大多数の社会では「男は強く女はかわいく、好きなものにひいき、凶悪事件の犯人は裁判不要、空気を壊す奴は出ていけ」なので、エリートが自由平等や法治を長年説得して、最後は全体で承認して正統性を持たせたのが近代社会の実際と思う。

 

(了)