らびっとブログ

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アメリカ大統領選、日本の議論はここがおかしい

アメリカ大統領選はまだ開票中だが、日本で話題のマスコミ予測、対中国、郵便投票について(日本時間 11/5 夜時点、最終追記 11/8)

 

事前のマスコミ予想は「バイデン優勢、勝利確率8割、トランプは激戦区のほとんどを取らないと厳しい。しかし民主党支持者は郵便投票が多いから、最初のレッドミラージュでトランプが勝利宣言して、以後の開票停止の法廷闘争では。」だった。ところが「トランプ追い上げ、マスコミ予測はまた外れ、またも隠れトランプか」と話題になった。

 

でも仕事合間に獲得選挙人数を見ていたが(笑)、獲得選挙人は終始バイデン優位でレッドミラージュ発生も無く、トランプは「優位な瞬間に勝利宣言」すらできず、「劣勢での勝利宣言」(仮に全開票停止しても即敗北なので苦しい状況)に追い込まれた形だった。ほぼ結果が出てから書くのもなんだが、州により郵便投票開票でバイデン票が後から増えるのは何か月も前から言われていたのに、瞬間の状況だけを見て騒ぐのは少し不思議だ。

 

 

次に中国は憲法に独裁を掲げる独裁国家だが(*1)、アメリカが国際合意から次々離脱して欧州とも対立して国内の混乱を増やしてくれて中国の国際的影響力が爆上がりしているのが現状だ。ファーウェイや台湾援助など目先のケンカより、国際情勢の方が大きな話だ。もともと人権外交は嫌いで独裁者とのディールを好み、巨額取引などで合意すればケンカは収めてしまうのがトランプ流だ(再発はあるが)。

 

対中国も目先のケンカパフォーマンスを真に受ける人が多いのが不思議だ。北朝鮮では派手に空母を派遣しても、お互い予備役招集も通信増加もなく、本気さゼロだった。香港・新彊・台湾・南シナ海もディールのカードで、同盟関係のクルドは捨てられた。

 

 

最後に、日本では郵便投票を避けるべきとの意見も見かける。でも日本も在外投票や老健などは既に事実上の郵便投票で、アメリカ各州も個人単位のバーコードや地域ごとの色の投票用紙など一定の不正対策と実績がある。

 

確かに「郵便投票では家に暴力的に監禁され記入強制」はありうるが、日本では葉書をポストから盗難かコピーだけで本人確認ないので成りすましできる。あまり極論を言っても完璧は存在しない。

 

結局「電子マネーは危険」と同じで、リスクと経済性・利便性の客観比較の話なのに、慣れないから過剰拒否してる人も多い気がする。ネットで銀行取引も認証レベルの問題だし現金も盗難リスクは高い。

 

 

(まとめ)

マスコミ批判も対中国も郵便投票批判も、目先の瞬間値で条件反射的に騒ぐだけでなく、冷静に全体を眺めたほうが面白いのになぁと思うのでした。

 

 

(おまけ)

日本人から見ると不思議な点。

  1. 「選挙人」による間接選挙と州単位の「総取り」(*2)。日本人からは不平等に見える。もちろんアメリカ合衆国は世界最初の大統領制で土地も広く、建国当時は投票に時間もかかり、少数の地域代表の「選挙人」を選出して任せた歴史はある。しかし既に形式的な勝ち点になっており、4年前も総得票数の多かったクリントンがトランプに負けた。とはいえアメリカ合衆国は本来、独立した共和国である州によって構成される連邦国家で、連邦には反感も強い。内政も投票も州の権限で、有権者の基準も投票期間も大きく違う。制度が違うのに同じ一票では逆に不平等だ。つまり「総取り」は各州の独自性を担保する投票方法でもあると思う。草の根的な自由と、相違を相互尊重するお国柄。
  2. 片方が敗北宣言するまで選挙が終わらない。日本なら選管の集計を待つだけで、本人の宣言は関係ない。しかしアメリカ合衆国は、建国当時の政治家は党派性を持つ政党は嫌い、また誰が何と言おうと正しいと思えば主張し続ける自由もある。だから延々と法廷闘争する自由もあるが、紳士的に撤退宣言して名誉を得る自由もある。実は共和党民主党も、綱領も党員制度も全国組織も事実上なく、ボランティア的な草の根民主主義だ。だから最近のような党利党略では回らない面もあるが、独立した知性と寛容を持つ個人(市民)という理想を前提としていると思う。

 

日本は明治以降「中央集権、お上の決定に従う」に慣れているが、アメリカ合衆国は「連邦制、市民が主体」だ。歴史と文化が随分違う。つい日本の基準で「いいかげんで非合理的だ」と思ってしまうが、その発想も含めて歴史や文化に規定されているのかも。

 

PS.個人的にはアトランタ・オリンピックの仕事で半年だけ暮らしたジョージア州が激戦州として注目が集まって、ちょっと嬉しい。アトランタは森林の中に浮かぶ人工都市だけど、コカ・コーラ博物館では世界の珍しいコーラが飲み放題だし、沿岸のサバンナは植民時代のヨーロッパ風街並みがお勧めです。

 

(11/6 追記)

*1 州単位の総取りは、2州(メイン、ネブラスカ)は例外で、州単位の勝者に2票(上院議員数)、残りを下院議員選挙区単位で勝者に割り振るらしい。コロラドでは比例割当方式案が住民投票で否決された。つまり州内部の配分は州(州議会、州政府)が決めるとの民主主義。

*2 中国は憲法で「人民民主主義独裁」を明記。基本はマルクス主義プロレタリア独裁(革命後の過渡期における労働者=多数派による独裁)で、このため旧ソ連キューバは一党制。これに人民戦線(労働者が労働者以外とも共同戦線)を追加したのが「人民民主主義」で、このため中国や北朝鮮には形式的には複数政党がある(ただし衛星政党共産党の指導を受ける)。

 

ジョージア逆転で事実上の決着か。写真はアトランタオリンピックのピンバッチで、マスコットは不人気で途中消失したイジー

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(11/8未明 追記)

ペンシルベニア当確で各報道機関がバイデン当確。AP提携のGoogleも。

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今回の選挙予測についてのまともな解説。

今年は的中した世論調査 バイデン氏の「緩慢な勝利」を正確に予測

 

トランプ陣営主張の「選挙不正」のBBC検証

【米大統領選2020】 投票について拡散されたうわさを検証

 

 

(了)