らびっとブログ

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映画「竜とそばかすの姫」は細田ワールド集結で面白かったけど少し気になった事

7月16日の公開初日に見たけど面白かったし観て良かった。写真は映画館の壁画像で右下はオマケ配布のシール。 (ネタバレないです)

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映画は予備知識なしで見る派だけど今回は予告編も見ず、カンヌ映画祭で上映されたと聞いたけど、仕事の代休で近所の映画館の上映予定見たら公開初日だったので急いで予約。

 

細田守監督の劇場6作品目で、劇中の現実世界と仮想世界でキャラクターデザインが違うので、どれを目にしたかで第一印象が随分変わる。実は最初は仮想世界のベルを見て、趣味じゃないからパスと思ったが、現実世界のいつもの細田キャラを一瞬見て、やっぱり見たいと思った。

 

細田キャラは単に「絵があって、動く」ではなく、「動かすために作ったデザインで、少ない線で微妙な表情も表現できる手書きチックなタッチ」なのが魅力的で常習性がある。キャラだけで動きが見えてきちゃう感じだ。

 

予約した二子玉川の109シネマズはいつも混みすぎず観客もマナー良くお気に入り。午前11時にコロナ制限客数の1/3くらいだった。

 

まず前半は「サマーウォーズ」の世界観、「バケモノの子」みたいな巨大クジラ、そして「時をかける少女」風の周囲の登場人物や三角関係など、細田ワールド集結な感じが楽しい。

 

そして中盤の仮想世界ではディズニーアニメ版「美女と野獣にここまで瓜二つにしなくても、とも思う。まぁ主人公の「すず → ベル → 映画副題に BELLE」など最初から確信犯だけど。あと悪者役のヒーローが手塚アニメ風に見えた。

 

脱線するが、ディズニーアニメ版を元にしたミュージカル版「美女と野獣」は、ブロードウェイでは豪華な特殊効果が素晴らしく、ロンドンでは地味ながらティーカップ達のタップダンスの職人芸が異常にうまく、劇団四季は全てにそつのない優等生的で、観たのは1回づつなのでたまたまかもだがお国柄を感じたので見比べもお勧めしたい。

 

後半の展開は書かないが、この話は小さい頃の出来事から自信の持てない少女の話なので、ネットでの体験を経て、そして最後は世界を救ったりはしないで身近な世界に戻るのが良いと思うし構成がきれいだ。そして(今回は名前も知らない子供も含めて)家族へのこだわり細田世界で良いと思った。

 

またネットの描き方も「サマーウォーズ」では「ネットの仮想世界で次々参戦する、更に現実世界ではアナログで繋がって危機回避する、どちらも最期は人間だ」という前向きな胸熱展開だったが、今回は「匿名社会でデマや誹謗中傷が蔓延してるが、個々人には現実の顔があるし、人を救う事もできる、結局は使い方次第の道具(ツール)だ」という感じで時代の変化を感じるし、いちおうIT業界関係者としても納得だ。

 

賛否ありそうなのは駅改札前の長廻しで、キャラが完全に動かない数秒が何回もあるので「枚数節約の手抜きだ」と批判されそうだが、画面隅に歩く猫を入れて経過時間表現とかの対策もせずに劇中の表現ギャップ狙いで敢えて完全静止させてると思ったので、私は面白かった(勿論枚数節約にもなってるけど)。

 

という訳で、最後まで見て、振り返っても、面白かったし観て良かった

 

ただ個人的に最後に気になった3点です。

 

後半の仮想世界で歌うシーンは、観客の感動描写が画一的すぎて全体主義的に見えた。目つきや口の形まで同一に動いて、昔の漫画映画やミュージカル調を狙ったのかもしれないが、ネットでの個別ユーザーのコラボではなく、統制下の洗脳のようで不気味だ。制作側も一般観客も、あのような光景が感動的シーンに見えるのだろうか。そんなリテラシーでいいのだろうか(大きなお世話かもしれないが)。

 

最後の捜索はいくらフィクションでも非現実的すぎなので嘘でも追加ヒントか伏線が欲しかった。ただ坂が多い住宅地は納得(近所なので)。

 

仮想世界の手間かけた作画に対して、後半の現実世界の作画はちょっと残念だ。アクションで見せるシーンではないけれど、例えば顔を赤らめるカットでも時間経過に応じた芝居が少しはあるのでは。観客を世界に引き込めれば、ラストシーンは演出と声優で持つので作画は簡単で良い、ってわけでもないと思う(手間かければいい訳ではないし、感動すれば作画は気にしないのが一般観客かもしれないけど)。

 

以上、感想でした。

 

(2021/7/17 追記)ネットで感想を拝見してのコメントです。

  1. 最後が小さい」確かにスペクタクルやカタルシスを期待して観に行くと違うと思う。ただこれは一少女の成長の話だから、小さく終わらせたのは制作上の勇気かと思った。これは「サマーウォーズ」と「未来のミライ」の違い、更には「君の名は。」と「天気の子」の違いに通じる。
  2. あなたは誰」の正体。予定調和か意外な展開かの話かと。ネットの仮想世界は虚偽だが、その先には個々の生身の人間がいて、それを探し結び付けるツールにもなる、というメッセージなのでは。断片的な画像の中の違和感に、後で出てくるなと伏線を感じられたかどうかの差かも(このへんは「君の名は。」にも通じる気がする)。
  3. ディズニーすぎ」まぁ同感。プロットやシチュエーションが似てるのはいいけど、階段とか広間とかバルコニーとか、デザインまで酷似の必要があったかは疑問だけど、オリジナルを見てる人と古典に思える人の世代差もあるかも。
  4. 「ちょっと出た登場人物が、後から関係のご都合」いやそれは単に、最初から主要登場人物が明かされてる作品と、断片に見えた要素が後で繋がっていって収束していく快感を味わう作品かの違いで、「サマーウォーズ」や「竜とそばかすの姫」は後者なのでは。

 

更にオマケ。今、金曜ロードショーで「サマーウォーズ」やってるが、ヒロインの少女の描き方が時代によりかなり違う。憧れの対象か、実在的な悩める人間か。宮崎駿作品もそうですが、どちらもいいですね(ただ地上波はカットが多いので余り見たくないけど)。