らびっとブログ

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アニメ「ガルパン」シリーズ感想

アニメ「ガールズ&パンツァー」のまとめ観の感想です。

 

TVシリーズ、「劇場版」、「最終章 1話」は既視なので、未視だったOVA「これが本当のアンティオ戦です!」、「総集編」、「最終章 2話」をU-NEXTで見た。時系列で「劇場版」、「最終章 1話」も見返した。

 

ミリオタ向け美少女ハーレム要素ながら、中身は古典的な「弱小寄せ集めチームが強豪に立ち向かう」な「がんばれ!ベアーズ」路線の学園生活物というか。

 

 

TV版

  • TV 1話ラストは「ザブングル」の1話ラスト以来に驚いた。子供時代はWWIIドイツ戦車プラモ中心だったが、主人公に4号戦車は渋すぎる。この作品は戦車の視点が普通ではない、と気付いた瞬間だった。
  • しかし拘りを入れながら、ベースは学園生活ものが監督/脚本のうまさ。
  • 「戦車道」はご都合設定だが薙刀&クラシックレースカーか。しかしビジュアル理由ながら被弾中でも車体から身を出し続けてるのは、着弾描写がリアルなだけに毎回どうしても気になる。常に綺麗/確実な白旗だけマンガ的シンボル。
  • 黒森峰とかネーミングがうまくて、さすが島田フミカネ原案。
  • この作品の功績は「戦車は結構速い」(だから電撃戦もできる)を一般認識化したことかと。「2001年宇宙の旅」で「宇宙船は流線形でなくて良い」、「ジュラシックパーク」で「恐竜は鳥の仲間で敏捷」なカルチャーショックを与えたように。従来は「空飛ぶゆうれい船」や「エヴァ」でも戦車はゴゴゴな威圧感重視でスピーディーな描写は少ないと思う。朝霞の自衛隊観閲式で見た戦車(61式、74式)の行進もかなり早かった。

 

「劇場版」

  • ひたすらチェイスシーンで持たせる、音響がいい、最後はセリフも消える、そしてスパッと終わる潔い構成だ。
  • しかし各ファンには悪いが各描写で全チームを毎回描く必要があるのか。
  • 戦車の居住性に言及した「零士のメカゾーン」愛読者なので、高速アクション反復で乗員が到底無事とは思えないのが毎回つい気になる。
  • 世代差ある相手に、いちいち脆弱箇所を狙ってる、高低差ある画面もわかる。ヘッツアーの飛行中射撃もギャグでいい。しかしラストの遊園地の山は、シリアスシーンで敵に至近距離で弱点の底部を何回も晒して納得できない(とつい思う、損な性分)。

 

「これが本当のアンツィオ戦です!」

  • うーんTVで実質イタリアが数秒の扱いにされたのが面白かったので複雑だ。
  • しかし地味な装填手(現在は自動化)の努力と友情がさりげなく描かれていて、これまたうまい。

 

「最終章 1話・2話」

  • これも音響だけでも迫力ある。
  • ベルバラはリアルタイム世代なので笑える。安藤の目もアンドレ感ある。
  • 旧日本軍モデルの知波単が突撃バカなのも笑えるが、意外に善戦しても決定力は無いので強敵感は出ないのは辛い。

 

(おまけ)兵器趣味作品について

 最後に。昔からこの手の作品やイベントに「兵器を趣味扱いは不謹慎、子供に良くない」「趣味は自由だ、批判は言論統制」議論があるが、「両論あるのが当然で健全」かと思う。

 

言論も趣味も自由だが、子供も通る公道で殺人や凌辱のTシャツを着るのは非常識だろう。私は子供のころから戦争ものの本や映画を熱心に見ていたが、海軍将校の父親の家にはシベリア抑留の本が多く、母親は夜の飛行機爆音はB29を思い出させると心底嫌がっていた。私自身も「宇宙戦艦ヤマト」も最初に絵だけ見た時は「大勢死んだ船に、羽を生やして、なんと不謹慎な」と思った。しかし「健全な作品しか読めない」管理社会も異常だろう。江戸川乱歩手塚治虫も二次創作も不健全要素の山盛りだ。

 

社会認識は時代でも変化するが、個人レベルは一律ではない。また価値観は多数派が正義な訳でもない。少なくとも税金運営される役所の作品イベント支援は批判もあって当然だ。手塚治虫宮崎駿富野喜幸も兵器の魅力と忌避感は同時に持っていたと思う。

 

また戦争/兵器/殺人への肯定/忌避/嫌悪感は、左翼/右翼(進歩派/保守派)とは関係ないし、安易なレッテル張り合戦では解決しない。趣味は趣味、配慮は配慮で、それぞれ当然だし、両方存在が自然と思う。

 

ところで私の子供の頃の愛読書はこちら(画像はネット拾い物)。類似書籍の中でも圧倒的に充実していたと思う。またプラモデルは現存物のスケール物で基本はWW II と思っているから、ガンプラやフィギュアは今もピンとこない。

 

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(了) 

日本学術会議「推薦に基づいて任命」関連法律まとめ

2020年10月に発生した日本学術会議の任命拒否問題で、関連しそうな法律の条文、判例、国会議事録などを客観資料(なるべく原文)を中心に、今更ながらまとめてみた。

 

 

日本学術会議

日本学術会議法には以下条文がある。

(前文)
日本学術会議は、科学が文化国家の基礎であるという確信に立つて、科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与することを使命とし、ここに設立される。

 

第一条 この法律により日本学術会議を設立し、この法律を日本学術会議法と称する。
日本学術会議は、内閣総理大臣の所轄とする。
日本学術会議に関する経費は、国庫の負担とする。

 

第三条 日本学術会議は、独立して左の職務を行う。
一 科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ること。
二 科学に関する研究の連絡を図り、その能率を向上させること。

 

第七条 日本学術会議は、二百十人の日本学術会議会員(以下「会員」という。)をもつて、これを組織する。
会員は、第十七条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する

 

第十七条 日本学術会議、規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦するものとする。

 

ポイントは以下で、議論の中心は4番目。

  1. 「平和的復興」との文言(後の「軍事研究に関する宣言」に関連)
  2. 内閣(政府)配下だが独立性規定がある(独立性は、会計監査院、検察庁日本銀行などにもあり、その程度が議論となる)
  3. 会員120名未満の状態は違法状態のため解消が必要(政府見解)
  4. 日本学術会議の推薦に基づいて総理が任命」の拘束力の程度。

 

朝日新聞の解説では「~に基づいて任命」の任命権者に対する拘束力は、「~により」や「~に従い」よりは弱く、「意見を聞いて」や「尊重」よりは強い。ただし単純に文言で決まるのではなく、各法令での任命権者の責任を考える必要がある。

 

つまり「人事は任命権者の自由(自由裁量)」も「推薦通り以外は許されない(裁量権ゼロ=覊束裁量)」も両方極論といえる。

 

日本学術会議法の制定時の国会答弁

1983年(昭和58年)の日本学術会議法制定時に、この「推薦に基づいて任命」の趣旨や内容は国会審議されている。

 

国会議事録 昭和58年5月12日 参議院 日本学術会議法の一部を改正する法律案(内閣提出)

148 手塚康夫
○政府委員(手塚康夫君) 前回の高木先生の御質問に対するお答えでも申し上げましたように、私どもは、実質的に総理大臣の任命で会員の任命を左右するということは考えておりません。確かに誤解を受けるのは、推薦制という言葉とそれから総理大臣の任命という言葉は結びついているものですから、中身をなかなか御理解できない方は、何か多数推薦されたうちから総理大臣がいい人を選ぶのじゃないか、そういう印象を与えているのじゃないかという感じが最近私もしてまいったのですが、仕組みをよく見ていただけばわかりますように、研連から出していただくのはちょうど二百十名ぴったりを出していただくということにしているわけでございます。それでそれを私の方に上げてまいりましたら、それを形式的に任命行為を行う。この点は、従来の場合には選挙によっていたために任命というのが必要がなかったのですが、こういう形の場合には形式的にはやむを得ません。そういうことで任命制を置いておりますが、これが実質的なものだというふうには私ども理解しておりません

 

150 高岡完治
○説明員(高岡完治君) ただいま御審議いただいております法案の第七条第二項の規定に基づきまして内閣総理大臣が形式的な任命行為を行うということになるわけでございますが、この条文を読み上げますと、「会員は、第二十二条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣がこれを任命する。」こういう表現になっておりまして、ただいま総務審議官の方からお答え申し上げておりますように、二百十人の会員が研連から推薦されてまいりまして、それをそのとおり内閣総理大臣が形式的な発令行為を行うというふうにこの条文を私どもは解釈をしておるところでございます。この点につきましては、内閣法制局におきます法律案の審査のときにおきまして十分その点は詰めたところでございます。

 

281 中曽根康弘
国務大臣中曽根康弘君) 学術会議法の改正につきまして、従来の選挙制度がいわゆる推薦制に変わりましたが、これはいままでの経緯にかんがみまして推薦制というふうになったのであるだろうと思います。しかし、法律に書かれてありますように、独立性を重んじていくという政府の態度はいささかも変わるものではございません学問の自由ということは憲法でも保障しておるところでございまして、特に日本学術会議法にはそういう独立性を保障しておる条文もあるわけでございまして、そういう点については今後政府も特に留意してまいるつもりでございます。

 

政府答弁では「多数推薦から一部を選ぶのではない、120名の推薦を形式的に任命する、実質的な任命ではない」との趣旨を説明した。更に中曽根大臣(後の首相)は搭乗分を、独立性や「学問の自由」にも関連づけて説明した。

 

次に「~に基づいて任命」の文言の例を見ていきたい。

 

日本国憲法

日本国憲法の以下条文は有名だ。

第六条

天皇は、国会の指名に基いて内閣総理大臣任命する

天皇は、内閣の指名に基いて最高裁判所の長たる裁判官を任命する

 

「~に基づいて任命」だが、天皇拒否権は無い。以下が考えられる。

  1. 「任命ならば任命権者の裁量は当然」とは限らない
  2. 「推薦」より「指名」の方が任命権者に対する拘束力が強い
  3. 天皇は一切の政治的権限を持たない

 

つまり「形式的な任命(拒否権なし)も存在する」とも言えるし、「2,3が日本学術会議法と異なり単純比較できない」とも言える。

 

脱線するが、内閣に従い機械的に任命するしかない天皇制には1946年に三笠宮が「内閣の奴隷」と批判した。個人的には同感で、人権無視で権威付けだけの天皇国事行為は憲法から全廃すべきと思う。

 

労働組合

労働組合法にも「~に基づいて任命」がある。

第十九条の三 中央労働委員会は、使用者委員、労働者委員及び公益委員各十五人をもつて組織する。
2 使用者委員は使用者団体の推薦(使用者委員のうち四人については、行政執行法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第四項に規定する行政執行法人をいう。以下この項、次条第二項第二号及び第十九条の十第一項において同じ。)の推薦)に基づいて労働者委員は労働組合の推薦(労働者委員のうち四人については、行政執行法人の労働関係に関する法律(昭和二十三年法律第二百五十七号)第二条第二号に規定する職員(以下この章において「行政執行法人職員」という。)が結成し、又は加入する労働組合の推薦)に基づいて、公益委員は厚生労働大臣が使用者委員及び労働者委員の同意を得て作成した委員候補者名簿に記載されている者のうちから両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する

 

労働組合法では、この「~に基づいて任命」における任命権者の裁量権の範囲について判例が複数あり、うち3つを見てみたい。

 

1983年2月24日 大阪地裁 判決

原告(中立系労組)の主張(複数労組の比例でない任命は裁量権濫用)

被告は、右通牒の「産別、総同盟、中立等系統別の組合員数に比例させ
る」という規準を無視し、本件任命処分を行つた。(略)本件任命処分は、被告が裁量権を濫用した違法なものであるから、その取消しを求める。

 

 判決

知事は、推薦があつた候補者の中から労働者委員を任命しなければならず、労働組合から推薦されなかつた者を労働者委員に任命することは裁量権の範囲を逸脱したものとして許されない。
 また、前に説示したように本件推薦制度の趣旨に照らし、労働組合から推薦された者全員を審査の対象にしなければならないから、推薦された者の一部をまつたく審査の対象にしなかつた場合にも、推薦制度の趣旨を没却するものとして、裁量権の濫用があつたとしなければならない。
 しかしながら、推薦は、指名とは異なるから、推薦に基づいて任命する場合の任命権者には、裁量権が与えられており、推薦された者が審査の対象とされた以上、推薦された候補者が労働者委員に任命されなかつたからといつて、直ちに裁量権の濫用があつたとするわけにはいかない。

 

 

「推薦」なので任命者には裁量権があり、この裁判では濫用なしとの判決だが、単純な自由裁量ではなく、推薦の中から任命しなければならず、推薦全員を審査しなければならないとしている。

  

1998年9月29日 東京高裁 判決

 原告(労働組合側)の主張

内閣総理大臣、本件任命行為において、控訴人各組合か推薦する候補者を全く審査の対象としていない。また、仮に、形式的に審査を行ったとしても、それは、内閣総理大臣が、連合傘下の労働組合の推薦という一事のみを重視して、故意に非連合系の労働組合である控訴人各組合の推薦する候補者を除外して任命するという差別意思に基づくものである。したがって、本件任命行為には、裁量権の濫用又は逸脱がある。

 

判決(要旨)

中央労働委員会の労働者委員の任命については、任命権者てある内閣総理大臣の広範な裁量にゆだねられており労働組合の推薦に基づく候補者を当初から審査の対象から除外したり、あるいはこれを除外したと同様の取扱いをするなど、労働組合法が推薦制度を設けた趣旨を没却するような特別の事情がない限り、裁量権の濫用とはならない

 

これも最初の大阪地裁と基本は同じで、任命権者の「広範な裁量権」を認めており、この裁判では濫用なしと判決したが、単純な自由裁量ではなく「推薦を当初から審査から除外するのは裁量権の濫用」なども併記している。

 

2015年1月20日 札幌地裁 確定判決

原告(労働組合側)の主張(要旨)

北海道知事がした上記労働者委員の任命処分は,特定の系統に属する労働組合の推薦を受けた候補者のみを労働者委員に任命し,他の系統に属する労働組合の推薦を受けた候補者を排除する差別的なものであり,違法である

 

判決

(要旨より)

 上記任命処分は,北海道知事がその判断の過程を誤ってしたものであるといわざるを得ず,北海道知事がその裁量権の範囲を逸脱してした違法な処分であるといわなければならない

 

(全文より)

当該再任候補者の前期の労働者委員としての職務遂行の具体的な状況について必要な調査及び検討をせず,それにより,処分行政庁の裁量的判断の基礎となる事実である再任候補者の人格,識見の認定が十分にされなかった結果,系統別の選任割合が十分に考慮されず,処分行政庁の判断が左右されたものであって,本件任命処分は,重要な事実の基礎を欠くものであり,処分行政庁に付与された裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものであるといわなければならない。

 

これも任命権者の「裁量権」を認めているが、この判決では、審査の内容が不十分で、

裁量権の範囲を逸脱し違法と認定した。当判決は地裁で確定した。

 

判例からは以下が言えると考えられる。

  1. 労働組合法の「推薦に基づいて任命」は「自由裁量」ではない
  2. 調査不十分による判断であれば「裁量権の判断を逸脱し違法」となる
  3. 言い換えれば任命者側は「適正な調査・判断」の説明責任がある

 

 

なお3判例とも複数の労働組合が推薦したケースで、日本学術会議のケースとは違いがある。

 

まとめ

  1. 日本学術会議には独立性規定があり、過去の国会答弁では政府側が「任命は形式的、部分任命はしない、独立性や学問の自由との関連」を答弁。
  2. 憲法の「基づいて任命」は拒否不可。裁量の無い形式的任命権も存在する。
  3. 労働組合の「基づいて任命」は複数判例で「裁量権」を認めているが、「自由裁量」ではなく、被推薦人全員の審査義務があり、判断によっては「裁量権逸脱で違法」となる。
  4. なお日本の裁判は個別主義で、判決の効力はその訴訟にのみ有効。判決は判例になるが、あくまで類似ケースでの目安で、判例変更もありうる。従って特定の判決で「正しい」などと断定はできない。

 

一般常識で考えれば、任命拒否の理由で以下などは妥当に思える。

  • 禁治産者など法的な欠格事由の該当者
  • 論文擬装発覚など推薦の元となった業績に疑惑が発生した場合
  • 推薦後に病気事故などで活動が長期間困難になった場合

 

しかし任命拒否の理由が仮に以下ならば、違憲・違法と思える。これは日本学術会議に限らず、公務員採用、国立大学入学、更には運転免許や生活保護支給などでも共通だ。

  • 人種、信条、性別、社会的身分又は門地(憲法14条)

 

ネットでは「公務員の任命は、任命権者の自由なのが当たり前」との主張もみかけるが、仮に公明党政権なら反創価学会、仮に共産党政権なら反共主義者は任命拒否できる、というのだろうか。

 

仮に任命拒否理由が「政府の政策に対する反対表明」など思想信条による差別ならば、違憲・違法となる可能性が高いと考えられる。

 

関連情報リンク

日本学術会議

 

記事

 

ブログ

 

(了)

 

 

アメリカ大統領選「大量不正」の記事・訴訟まとめ

11/8 アメリカ大統領選でバイデンが勝利宣言した。トランプ陣営は「不正選挙」を主張して法廷闘争を行ったが、各報道機関の検証では根拠のある「大量不正」の情報は1件も確認できず、60件を超える訴訟は敗訴続出だが、フェイクニュースも多い。これらの訴訟状況や報道などをまとめてみた。 (最終更新 2021/3/12 訴訟状況)

 

最終的には「大量不正」の主張は次々と裁判所に却下され、11/7 連邦議会バイデン勝利が正式認定され、3/8 残る訴訟も全て退けられた

 

  

■訴訟状況

(11/6 BBC

・ミシガン州の開票打ち切り要求は却下

ペンシルヴェニア州の開票停止要求は棄却

ジョージア州の開票停止要求は棄却

 

(11/9 BBC)

ペンシルヴェニア州で立会人のアクセス不十分と主張、選管は適切に対応と主張

ペンシルヴェニア州で集計対象の消印の裁判所決定を問題視

ミシガン州で作業監視のアクセス不十分と提訴、証拠不十分で却下

ウィスコンシン州で再集計要求の予定

ネヴァダ州で「転出後の不法投票が何千人」と発表、リストは証拠にならず

ジョージア州で「票の処理に問題」主張、証拠無しで却下

アリゾナ州で投票機に問題と主張、審査中

 

(11/15 BBC)

アリゾナ州の再集計要求は取り下げ

ミシガン州の選挙結果認定阻止要求は棄却

・ペンシルヴェニア州の郵便投票の無効主張は却下

 

(11/19 Explained)

ペンシルベニアで唯一の勝訴(選挙日当日までに発送され、選挙日の3日以内の11月6日までに到着した郵便投票で不備があったものは本来11月9日までに訂正しなくてはいけないものを、12日まで延長した州務長官命令を無効にした。この裁判で影響される票の数はごく少数であり、選挙の結果には影響を与えません。)

 

 (11/19 USA TODAY)

・トランプ陣営の訴訟 18件中、勝訴 2件、敗訴/棄却/撤退 8件、保留中 8件。

  1. ペンシルバニア州連邦裁、不在者投票者のための暫定投票、11/6 敗訴
  2. ペンシルベニア州最高裁、開票立会人のアクセス、11/17 却下

  3. ペンシルベニア州連邦裁、投票用紙の「修正」、11/3 却下

  4. ペンシルベニア州連邦裁、郵便投票者の身分証明期限の延長、11/12 勝訴(延長権限無し)

  5. ペンシルベニア州最高裁→連邦最高裁、郵送投票の消印、敗訴

  6. ペンシルベニア州郡裁判所、情報が不完全な不在者投票保留中

  7. ペンシルベニア州連邦地裁、2段階投票システム、保留中

  8. ペンシルベニア州裁判所、不在者投票の計票、保留中

  9. ミシガン州裁判所、開票へのアクセス、11/5 棄却 (上訴中)

  10. ミシガン州連邦地裁、投票処理の監視許可、保留中

  11. ジョージア州上級裁、不適切計上可能性の53票、11/5 却下

  12. アリゾナ州上級裁、油性ペン(シャーピー)使用への異議、11/7 取り下げ

  13. アリゾナ州上級裁、対面投票の拒否、11/12 取り下げ

  14. アリゾナ州上級裁、投票センターの計票能力、保留中

  15. ウィスコンシン州、2郡の再集計要求、保留中(部分的な再集計中)

  16. ネバダ州地裁、投票機故障の影響を受けた一部投票所の時間延長、認められた
  17. ネバダ州連邦地裁、3,000人以上の有権者の不適格主張、11/19 却下

  18.  ネバダ州地裁、州選挙の「詐欺と不正」の主張、保留中

 

(11/19 ロイター)

・ジョージア州地裁、期日前投票プロセスの不適切変更の主張、却下

・ペンシルベニア州裁判所、約2200票無効の主張、却下(証拠無し) 

・アリゾナ州裁判所、バイデン氏勝利認定差し止め請求、棄却

   

(11/22 ロイターCNN)

ペンシルベニア州連邦地裁、郵便投票約700万票の無効主張を却下(証拠無し)

 

(11/28 BBC)

・ペンシルバニア州連邦高裁、選挙不正主張を棄却(証拠無し)

 

(11/29 CNN)

・ペンシルベニア州最高裁、郵便投票の無効主張を棄却(全会一致、再提訴不可)

 

(12/4 WSJ)

・ウィスコンシン州最高裁、郵便投票の無効・再集計等の主張を棄却

 

(12/9 ロイター、AFB)

連邦最高裁、ペンシルベニア州郵便投票の無効主張を却下(全会一致)

トランプ氏側は複数の激戦州で数十件の訴訟を起こしているが、そのほとんどは退けられている。

 

(12/10 ロイター)

・テキサス州と17州が、激戦4州の投票結果無効を連邦最高裁に提訴

各州とも共和党関係者が原告

テキサス州がこの訴訟で勝利する可能性はほとんどなく、訴訟には法的価値もない

最高裁がこの案件を受理する可能性はほぼない

 

(12/12 BBC)

・連邦最高裁、テキサス州による戦4州投票結果無効主張を却下

 連邦最高裁は11日、短い判決文で、テキサス州には原告適格(訴訟を起こすための原告としての資格)がないとして、同州の訴えを退けた。

各州の一般投票の結果が認定されたことで、予定通り14日に全米各地で選挙人団投票が行われる。その時点でトランプ氏が法的に争える道は閉ざされることとなる。

 

 (12/21 NHK)

・トランプ陣営がペンシルバニア州の郵便投票違法を連邦最高裁に審理要求

訴えが認められる可能性は今回も極めて低い

 

(1/12 ロイター)

・米最高裁、大統領選巡る訴えを相次ぎ退ける

最高裁は、トランプ氏が敗北したウィスコンシン州ペンシルベニア州の選挙結果に異議を唱えた訴訟3件など、トランプ氏側の訴え8件の審理を優先することを予想通り拒否した。

 

(3/10 フォーブス)

・ トランプ、法廷闘争でも敗北確定 「無効」の訴え、最高裁がすべて退ける

米連邦最高裁は8日、ドナルド・トランプ前大統領が昨年11月の大統領選後、ウィスコンシン州の投票結果の無効を求めた訴えを退けた。これにより、トランプ側が選挙後に起こした訴訟はすべて退けられた

(略)

トランプやほかの共和党員は大統領選後、激戦州での選挙結果を覆そうと60件を超える訴訟を起こした。トランプやその側近は、保守派が多数派を占める最高裁はこの取り組みに理解を示すと信じていたが、逆にすべての訴訟が退けられる結果になった

 

■再集計/選挙人投票

11/18  ジョージア・ウィスコンシン州再集計、バイデン氏勝利覆る公算小

 

11/20 ジョージア再集計完了、バイデン勝利変わらず 

  

11/29 ウィスコンシン州再集計完了、バイデンのリード増加

 

(12/2 Bloomberg)

アリゾナ、ウィスコンシン両州は11月30日、バイデン氏が勝利して再集計を求められた激戦州の中で最後に開票結果を公式に認定した。ジョージア州では再集計が行われているが、結果が覆る見込みはない。トランプ陣営はウィスコンシン州の2つの郡の再集計を求めたが、逆に票差が広がる結果となった。

 

(12/5 日経)

カリフォルニア州のバイデン勝利公式認定で、バイデン選挙人が公式に過半数

 

(12/8 BBC)

ジョージア州、3回目の再集計でもバイデン勝利

 

(12/14 BBC)

14日の各州選挙人投票でバイデンが過半数を獲得し、当選が正式に確定。

 

 (1/7 BBC)

米議会、バイデン氏の勝利を認定 暴徒による妨害を経て

 議会では6日から上下両院の合同会議が開かれ、州ごとに選挙人団の投票を開票。バイデン次期大統領とカマラ・ハリス次期副大統領の勝利を最終認定する手続きが行われていた。

ペンシルヴェニア州アリゾナ州の開票結果に対しては一部の共和党議員から異議が唱えられたが、上下両院がいずれも投票によってそれを退けた。

議会の結果認定により、昨年11月3日投開票の大統領選は最終決着した。バイデン氏は今月20日、46代目のアメリカ大統領に就任する。

 

アメリカ政府

死者投票」、「国土安全保障省(DHS)と国土安全保障省国家安全保障局(CISA)がセキュリティ対策を講じた投票用紙を印刷」などは事実ではない。

 

(11/13 ロイター)

米国土安全保障省サイバーセキュリティー・インフラストラクチャー・セキュリティー庁(CISA)は12日、今月の大統領選で票が失われた形跡は全くないとの調査結果を発表した。両団体は「票が取り除かれる、失われる、改ざんされる、不正なアクセスを受けるといったことが起きた形跡は全くない」と表明。

   

(12/2 BBC)

ウィリアム・バー司法長官は1日、大統領選で大掛かりな不正があったとするドナルド・トランプ大統領の主張について、裏付ける証拠を司法省は発見できていないと述べた。

 

(12/22 BBC)

バー司法長官は21日、記者会見で、今年の大統領選の不正やバイデン次期大統領の息子のハンター氏に対して捜査を行う特別検察官の任命について問われ、任命する計画はないと明らかにした。

バー氏はトランプ氏の支持者から最近要求が出ている投票機器の押収についても否定した。「連邦政府が押収を行うための根拠がない」としている。

 

 ■BBC

(11/7)

死者投票は事実ではない。「不自然な大量票」は一括計上は通常(バイデンのみは単純ミスで訂正済)。投票率100%超は有権者数が古い。サインペン(油性ペン)は無関係。

 

(11/16)

死者投票」「ミシガンで1万人の死者が不在者投票」などは「単純な統計上の問題」。

 

(11/18)

  「ドミニオンは全米で270万のトランプ票を削除した」、「ドミニオン・ヴォーティング・システムズは過激な左派が所有している会社」は証拠なし。

 

AP通信

多数の証拠や事例」「開票監視の拒否」「民主党が立会人出入り禁止の提訴」は事実が確認できない。「投票日後に届いた票」は裁判所による例外。

AP Fact Check on Twitter: "An #APFactCheck reviews claims made by President Trump at the White House on Thursday about vote counting.

 

■ロイター

投票用紙廃棄は一部事実(9月に9票、ミスの模様)だが、大量の写真はイメージ画像。

Fact check: Inaccurate details about ‘discarded’ military ballots found in Pennsylvania

  

ウォール・ストリート・ジャーナル

社説で「トランプ氏は法廷闘争する権利はあるが、それには不正投票の証拠を示す必要がある」と述べ、根拠なく「不正」を口にするトランプ氏の姿勢を批判した。

 

■ニューヨークタイムス

(11/13 追加)

全米の選挙管理委員会は不正発見せず。虚偽の主張との闘い。

 

■HUFFPOST

バイデン氏の「最大規模の不正投票組織を作った」発言は、全文を見ると全く違う意味

 

■3大テレビ局(ABC, CBS, NBC)

組織的な不正があったとするトランプ氏の主張が根拠に欠けるとして中継打ち切り

 

■FOXニュース

ウィスコンシン州不正票調査で州兵が投票所に」は誤り。印刷ミスにより機械計測できない投票用紙13,500枚を正しい用紙に転記する作業のために州兵が呼ばれた。

Wisconsin county using 20 National Guardsmen to transfer data from misprinted ballots to clean ones

 

(11/11 追加) 

「ドナルド・トランプには、選挙の不正行為を法廷の場で追求する権利がある。しかし、今のところは、深刻な不正行為と考えられるような事案は一つも確認されていない」と、FOXのキャスターのクリス・ウォレスは述べた。

 

■CNN

現在のところ大規模な不正を示唆する信頼に足る証拠は見つかっていない

 

BloomBerg

バー米司法長官は9日、大統領選挙で不正行為があった可能性を巡り司法省当局者が調査を開始することを認めた。ただ、決定的な証拠はないとしている。

 

■Bridge Michigan

投票装置がミシガン州での誤った不正の主張を助長。(略)ミシガン州のジョスリンベンソン国務長官は、選挙管理ソフトウェアの更新に郡が失敗したことによって引き起こされた「人為エラー」と説明しました。個々の投票機の結果を組み合わせるために使用されるElectionSourceソフトウェアは適切に構成されていませんでした。国務省は「実際の投票総数には影響しませんでした」と述べました。

 

■Tech Crunch Japan

(11/15 追加)

(要約)米国の約半数の州に投票集計ツールを提供するDominion Software(ドミニオンソフトウェア)が数百万票を「削除」したとのニュースは、明確に否定された。出口調査やその他の選挙関連の評価を行う会社であるEdison Research(エジソンリサーチ)の社長であるLarry Rosin(ラリー・ロージン)氏は、「不正投票の証拠はありません」と述べた。選挙委員と州の幹部は、選挙は驚くほど円滑に運んだと口をそろえて明言した。連邦委員会(CISAリリース)は「米国史上最も安全な選挙でした。投票システムが投票を削除した、失くした、投票内容を変更した、何らかのかたちで侵害したという証拠はありません。我々は選挙の安全性と完全性に最大限の自信を持っていることを保証します。」。

 

■FactCheck.org

シャーピーペン(油性ペン)で記入したトランプ票がアリゾナで計上されなかった、との虚偽が選挙後に広範に拡散された。

The falsehood that votes for President Donald Trump weren’t counted in Arizona because the ballots were filled out with Sharpie pens spread widely on the day after the election.

 

■NYポスト

トランプ支持のタブロイド紙のNYポスト紙は12/28の一面で「狂乱を終わらせよ」。社説でトランプを「世界が腐敗していると怒鳴り散らすマールアラーゴのリア王」になると警告。

 

YouTube

ユーチューブチャンネルが不正めぐる虚偽の主張を宣伝(調査中)

 

フェイスブック

FBが不正確情報に措置 トランプ氏支持グループを削除

 

共和党

共和党ロムニー議員)
「選挙が不正に操作され、腐敗し、盗まれたと主張することは誤りだ」

 

(ブッシュ前大統領の法律チーム)
 トランプ氏が郵便と不在者投票の不正選挙疑惑を提起した訴訟に対し「全くその価値がない」。「これまでトランプ氏側が起こした訴訟は全く価値もなく、勝つこともできないだろう」。

 

(11/9 追加)

共和党のロブ・ポートマン上院議員は声明で(略)「トランプ陣営は不正選挙の主張を裏付ける証拠を提示しなければならない」と表明。

 

(12/15 WSJ)

 バイデン氏当選、共和党幹部の多くも容認 選挙人投票の結果受け( 共和党上院ナンバー2のジョン・スーン議員、同ナンバー4のロイ・ブラント議員)

 

 

日本経済新聞

激戦州での得票差が開き、支持者から巨額の資金を募って法廷闘争を続けても結果を覆すのは難しいとの見方が多い。与党・共和党からも選挙結果は変わらないとの見方が出ている。

 

(11/11追加)

トランプ大統領は選挙不正を主張して敗北を認めず、激戦州で訴訟を起こしている。(略)トランプ陣営の不正疑惑の主張は裁判所でおおむね認められていない

 

■読売新聞

(11/11 追加)

トランプ氏は9日も大統領選で不正があったとの主張を繰り返した。陣営も同日、ペンシルベニア州当局による州の選挙結果の認定を差し止めるよう求め、連邦地裁に提訴した。(略)これまでトランプ氏側から不正を裏付ける具体的根拠は示されていない

 

朝日新聞

トランプ氏は今回の大統領選を「不正選挙」と主張し続けており、(中略)法廷闘争を続ける考えを強調した。ただし、いずれの訴訟も具体的な証拠は示しておらず、次々と敗訴しているのが現実だ。

 

毎日新聞

トランプ大統領の一連の発言を、米主要ファクトチェック機関が「事実でない

 

(11/11 追加)

「米国の主要政治サイト『リアル・クリア・ポリティクス(RCP)』が激戦州ペンシルベニアでバイデン氏の当選確実を取り下げた」は誤り。

 

(11/17 追加)

「選挙不正の証拠が保存されたスペイン企業のサーバーがドイツ・フランクフルトで米軍に押収された」は誤り。情報の元は連邦下院議員、ルイ・ゴーマート氏(共和党)の発言。このスペイン企業「サイトル」は「米国でのサービス用サーバーは全て米国内に存在する。フランクルトには事務所もサーバーもない」と明確に否定。米陸軍の報道官も「そのような主張は虚偽だ」と明言。

 

産経新聞

トランプ陣営は、集計結果を覆すような「大規模な不正」があったことを示す具体的な証拠や、説得力のある根拠を示すに至っていない

 

東京新聞

激戦州で「不正投票」 トランプ氏が根拠なき訴え乱発

 

時事通信

郵便投票をめぐる不正を訴え、法廷で「徹底抗戦」する同氏の戦略は正当性や大義を欠き、世論の支持は広がらなかった。(中略)各激戦州で陣営が起こした訴訟はすぐに壁にぶつかった。無効のはずの郵便票が集計されたと集計中止を求めたジョージア州の裁判は、約1時間の審理で「証拠がない」と却下。「不正を十分に監視できない」と主張したミシガン州では、既に集計が終わっていることを理由に訴えを退けられた。

 

NHK

(11/15 追加)

(抜粋)トランプ陣営の法廷闘争で、裁判を担当する弁護団の撤退が相次ぐ。ペンシルベニア州の裁判を担当する陣営の弁護団が裁判への関与をやめると明らかにした。先週、アリゾナ州でも裁判を担当していた弁護団が弁護をやめることを明らかにした。大規模な不正があったとする主張を裏付ける証拠が示せない中、弁護団が相次いで撤退することで裁判の見通しは厳しいとの見方が広がっている。

 

ニッポン放送

今回は、トランプ陣営の方から、「不正行為があった」とか、「投票箱が消えた」というツイートは流れているのですが、実際にそれを裏付けるような現実が何もなく、目撃者もいないので、法廷闘争に持ち込もうとしても、証拠がないということで、そもそも最高裁が取り合わないのではないかという報道になっています。

 

日本テレビ

法廷闘争に持ち込む構えを崩さないトランプ大統領ですが、CNNは、ホワイトハウス関係者の話として、メラニア夫人が大統領に敗北を認めるよう何度も促していると伝えています。

 

(11/9 14:00 追記)

トランプ陣営の幹部が「(メラニア夫人が敗北を説得との)報道は事実ではない」と否定。

論座

(要約)バイデンの次男のスキャンダル(ノートパソコンゲート)は、情報が本当か証拠がないため大手報道機関は取り上げず、TwitterやFacebookは投稿制限した。またこの情報は陰謀論をとりあげるいつものメンバーから発信され、その内容が4年前のヒラリー・クリントンの「ピザゲート」陰謀論とそっくりだった。

 

Wedge

(11/15 追加)

(抜粋)ペンシルべニア州ではこれまでに開票中止などを求めた訴えなど6件が却下され、ミシガン州でも票の確定を遅らせるよう提訴したが、「不正の証拠がない」として退けられた。アリゾナ州では、トランプ陣営が「集計の担当者が選挙機器を操作してトランプ票を無効にした」などと訴えたが、証人の証言が怪しくなり、申し立てを断念した。国土安全保障省のサイバーセキュリティ庁は声明で、「選挙は米史上、最も安全に行われた。選挙機器が票を削除したり、なくしたりした証拠は一切ない」と発表した。さらに不正選挙を監視するために任命された16人の連邦検察官は13日、バー司法長官に書簡を送り、「重大な不正の証拠はなかった」と意見具申した。

 

菅総理大臣

(不正の話ではありませんが)

ジョー・バイデン氏及びカマラ・ハリス氏に心よりお祝い申し上げます。

  

■(参考1)郵便投票のシステム

 

 

なお各州の郵便投票は、今回はコロナ禍で利用数(週によっては投票期間も)は増えたが、制度は大半は従来からで実績があり多数の不正は報告されていない。

 

■(参考2)今後の予想

トランプは敗北宣言を拒否中だが、伝統的慣習であって法的要件ではない。1月20日に新大統領が就任すれば失職する。

 

選挙不正は州裁判所の管轄だが、現在のところ必要な根拠が提示されないため却下(棄却)続出中。

  

なおブッシュ(子)対ゴアの法廷闘争で連邦裁判所が激戦州となったフロリダの再集計停止を命じたのは、選挙人確定(新大統領就任)に間に合わないとの理由。連邦裁判所は現在保守派多数(6:3)だが、各州の選挙に直接介入する権限は無い(連邦制)。

 

ネット話題の「投票用紙すかし」などは、仮に全マスコミが黙殺しても、トランプ陣営や共和党政府が法廷に主張しないのか不思議。ところでブロックチェーンは仮想通貨の暗号化技術で、すかし技術ではない。ただのネタでは。

 

今後、新規の根拠ある大量不正(10万票以上)が発覚しない限り、法廷闘争は困難か?

 

以下は平河エリさんによる日本メディアへの問題点指摘記事。

gendai.ismedia.jp

 

上記の部分引用です。

結果から見れば、事前の世論調査はかなり正確にこれらのことを言い当てていた。

(中略)日本はどうだろうか。(中略)「不正投票があった」というトランプ大統領の主張に理解を示すコメンテーターすらいた。

また、日本で最大級のコミュニティの一つであるYahoo! ニュースのコメント欄を見に行けば「不正投票」を信じるコメントが溢れていることがわかるだろう。

残念ながらこれらの不正投票論は容易に陰謀論と結びついてしまう。

 

またABCラジオでの町山さん説明。

miyearnzzlabo.com

 

上記の部分引用(あくまで要約)です。

法的に決まるのは12月8日、各州がその最終的な勝者を決定する時。トランプ大統領は次々と各州に対して裁判を起こしてますが全て却下されている。現在一応4億ドル(約450億円)の負債を抱えている。公式サイトで「法廷闘争のため6000万ドル(約62億円)」の寄付を募集中。12月14日の選挙人による投票は形だけ。確定しなければ、12月23日に下院議会で決選投票で「各州ごとに1票」のためトランプ大統領が勝つが、それでも決まらない場合は1月20日に下院議長の民主党ナンシー・ペロシさんが大統領代行になる。だから、どっちになるか分からない感じ。(選挙不正の証拠は)全く一切出ていません。だから裁判所の方も受理をしてないというか、拒否をしているわけです。証拠がない。さらに裁判をするお金もない。だからこれは無理だろうという。破産だけではなく、大統領の不逮捕特権が無くなると1億ドルの脱税疑惑など20件ぐらいの裁判を抱えており、辞めた途端にものすごい裁判を抱えることに。

 

■(参考3)トランプ支持者の分析

・米大統領選をめぐるフェイクニュースと「新宗教系メディア」の関係(11/23  藤倉善郎)

 

日本で繰り返されるトランプ応援デモの主催者・参加者はどんな人々なのか(12/30 藤倉善郎)

 

・選挙不正を言い募るトランプ支持の「カルト性」に警戒を(1/8 江川紹子

 

(了)

アメリカ大統領選、日本の議論はここがおかしい

アメリカ大統領選はまだ開票中だが、日本で話題のマスコミ予測、対中国、郵便投票について(日本時間 11/5 夜時点、最終追記 11/8)

 

事前のマスコミ予想は「バイデン優勢、勝利確率8割、トランプは激戦区のほとんどを取らないと厳しい。しかし民主党支持者は郵便投票が多いから、最初のレッドミラージュでトランプが勝利宣言して、以後の開票停止の法廷闘争では。」だった。ところが「トランプ追い上げ、マスコミ予測はまた外れ、またも隠れトランプか」と話題になった。

 

でも仕事合間に獲得選挙人数を見ていたが(笑)、獲得選挙人は終始バイデン優位でレッドミラージュ発生も無く、トランプは「優位な瞬間に勝利宣言」すらできず、「劣勢での勝利宣言」(仮に全開票停止しても即敗北なので苦しい状況)に追い込まれた形だった。ほぼ結果が出てから書くのもなんだが、州により郵便投票開票でバイデン票が後から増えるのは何か月も前から言われていたのに、瞬間の状況だけを見て騒ぐのは少し不思議だ。

 

 

次に中国は憲法に独裁を掲げる独裁国家だが(*1)、アメリカが国際合意から次々離脱して欧州とも対立して国内の混乱を増やしてくれて中国の国際的影響力が爆上がりしているのが現状だ。ファーウェイや台湾援助など目先のケンカより、国際情勢の方が大きな話だ。もともと人権外交は嫌いで独裁者とのディールを好み、巨額取引などで合意すればケンカは収めてしまうのがトランプ流だ(再発はあるが)。

 

対中国も目先のケンカパフォーマンスを真に受ける人が多いのが不思議だ。北朝鮮では派手に空母を派遣しても、お互い予備役招集も通信増加もなく、本気さゼロだった。香港・新彊・台湾・南シナ海もディールのカードで、同盟関係のクルドは捨てられた。

 

 

最後に、日本では郵便投票を避けるべきとの意見も見かける。でも日本も在外投票や老健などは既に事実上の郵便投票で、アメリカ各州も個人単位のバーコードや地域ごとの色の投票用紙など一定の不正対策と実績がある。

 

確かに「郵便投票では家に暴力的に監禁され記入強制」はありうるが、日本では葉書をポストから盗難かコピーだけで本人確認ないので成りすましできる。あまり極論を言っても完璧は存在しない。

 

結局「電子マネーは危険」と同じで、リスクと経済性・利便性の客観比較の話なのに、慣れないから過剰拒否してる人も多い気がする。ネットで銀行取引も認証レベルの問題だし現金も盗難リスクは高い。

 

 

(まとめ)

マスコミ批判も対中国も郵便投票批判も、目先の瞬間値で条件反射的に騒ぐだけでなく、冷静に全体を眺めたほうが面白いのになぁと思うのでした。

 

 

(おまけ)

日本人から見ると不思議な点。

  1. 「選挙人」による間接選挙と州単位の「総取り」(*2)。日本人からは不平等に見える。もちろんアメリカ合衆国は世界最初の大統領制で土地も広く、建国当時は投票に時間もかかり、少数の地域代表の「選挙人」を選出して任せた歴史はある。しかし既に形式的な勝ち点になっており、4年前も総得票数の多かったクリントンがトランプに負けた。とはいえアメリカ合衆国は本来、独立した共和国である州によって構成される連邦国家で、連邦には反感も強い。内政も投票も州の権限で、有権者の基準も投票期間も大きく違う。制度が違うのに同じ一票では逆に不平等だ。つまり「総取り」は各州の独自性を担保する投票方法でもあると思う。草の根的な自由と、相違を相互尊重するお国柄。
  2. 片方が敗北宣言するまで選挙が終わらない。日本なら選管の集計を待つだけで、本人の宣言は関係ない。しかしアメリカ合衆国は、建国当時の政治家は党派性を持つ政党は嫌い、また誰が何と言おうと正しいと思えば主張し続ける自由もある。だから延々と法廷闘争する自由もあるが、紳士的に撤退宣言して名誉を得る自由もある。実は共和党民主党も、綱領も党員制度も全国組織も事実上なく、ボランティア的な草の根民主主義だ。だから最近のような党利党略では回らない面もあるが、独立した知性と寛容を持つ個人(市民)という理想を前提としていると思う。

 

日本は明治以降「中央集権、お上の決定に従う」に慣れているが、アメリカ合衆国は「連邦制、市民が主体」だ。歴史と文化が随分違う。つい日本の基準で「いいかげんで非合理的だ」と思ってしまうが、その発想も含めて歴史や文化に規定されているのかも。

 

PS.個人的にはアトランタ・オリンピックの仕事で半年だけ暮らしたジョージア州が激戦州として注目が集まって、ちょっと嬉しい。アトランタは森林の中に浮かぶ人工都市だけど、コカ・コーラ博物館では世界の珍しいコーラが飲み放題だし、沿岸のサバンナは植民時代のヨーロッパ風街並みがお勧めです。

 

(11/6 追記)

*1 州単位の総取りは、2州(メイン、ネブラスカ)は例外で、州単位の勝者に2票(上院議員数)、残りを下院議員選挙区単位で勝者に割り振るらしい。コロラドでは比例割当方式案が住民投票で否決された。つまり州内部の配分は州(州議会、州政府)が決めるとの民主主義。

*2 中国は憲法で「人民民主主義独裁」を明記。基本はマルクス主義プロレタリア独裁(革命後の過渡期における労働者=多数派による独裁)で、このため旧ソ連キューバは一党制。これに人民戦線(労働者が労働者以外とも共同戦線)を追加したのが「人民民主主義」で、このため中国や北朝鮮には形式的には複数政党がある(ただし衛星政党共産党の指導を受ける)。

 

ジョージア逆転で事実上の決着か。写真はアトランタオリンピックのピンバッチで、マスコットは不人気で途中消失したイジー

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(11/8未明 追記)

ペンシルベニア当確で各報道機関がバイデン当確。AP提携のGoogleも。

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今回の選挙予測についてのまともな解説。

今年は的中した世論調査 バイデン氏の「緩慢な勝利」を正確に予測

 

トランプ陣営主張の「選挙不正」のBBC検証

【米大統領選2020】 投票について拡散されたうわさを検証

 

 

(了)

大阪都構想の否決は健全と思う

10月11日夜、大阪都構想の2度目の住民投票は再び否決された。大阪府民ではないが思う事を簡単に。

 

  1. 私は民主的な議論の結果なら、都道府県も憲法天皇制も変更もあって自然と思う。民主主義の基本は人民主権だし、慎重さは必要だが、変更にも不作為にもリスクはある。「何でも現状維持」には反対だ。
  2. でも「大阪都構想」では大阪都」はできない。まずネーミングがおかしい。
  3. 大阪都構想」の中身は大阪内部の役割分担なのに、「都構想で東京と並ぶ大都市に」とのイメージ戦は表紙詐欺だ。
  4. そもそも「大阪都構想」がモデルとする「東京都制」は戦時中の中央集権で、維新の掲げる地方自治と正反対だ。自治体間の調整はどの都道府県もやってる。
  5. 今回、コロナ対策での吉村知事の支持率上昇をチャンスと強行したが、賛否拮抗のテーマは時間経過に伴い保留(今回は反対)が増えるのも人情だ。これは急進主義に対する健全な保守主義でもある。
  6. 憲法改正の予行演習とも言われるが、憲法も仮に6割の賛成で強行しても、投票が近づくと保留が増えて否決される可能性が増えた。法的安定性上も、51%の瞬間値を争う党派的な冒険主義ではなく、主要与野党くらいは含めた8割前後の安定多数の模索は必要に思える。(国会で続けられていた与野党憲法議論は、第一次安倍政権による政争化以来は停滞が続いているが。)
  7. どうも維新は機会主義(悪い意味のポピュリズム・扇動主義・冒険主義)が強い。衆参ねじれ時代は一院制や首相公選制などで憲法改正を掲げたが、国政進出が進むと聞かれなくなった。都構想法案成立に向けて自民党に恩を売っただけなのか。当面の政策は状況で変わって自然だが、基本政策がご都合主義では責任感が無い。一院制や首相公選制は(権力分立の自由主義には逆行するが)人民主権重視の民主主義の考えの一つなので、主張するならまじめに主張し続けるべきと思う。

 

(了)

アニメ「無能なナナ」は原作漫画そのままの映像化がうまい

2020年10月開始で4話放映済のアニメ「無能なナナ」は、原作漫画に忠実ながら安定感あるアニメ化で、ネタバレ無しで書きたい。

 

原作もアニメも話は同じで、どちらが先でも大丈夫だけど1話から見て欲しい。なおPV #1, #2 は詐欺(ネタバレ無し)なので大丈夫w

www.youtube.com

 

謎の多い「人類の敵」に対抗するために、能力者(超能力者)を集めた孤島の学園で、一人、また一人という、あまりにありがちな舞台設定だが、超能力バトルものに見えて実は頭脳戦サスペンス。コミックス表紙のコピー「正義と悪の知略サスペンス」はうまいと思う。

 

個人的に劣勢な主人公の頭脳戦は好きだ。神話なら八岐大蛇、スパイものならスパイ大作戦、SFならアシモフとか。しかし相手から見れば謀略・卑怯・騙し討ちだ。目的は手段を正当化できるのか、果たして正義はどちらか。

 

実は2話冒頭の「人類の敵」の短い説明の中で、肝心の「人類の敵」の意味が途中ですり替わってるのが怖い。オーウェルの「1984」のゴールドステインのように、本当に実在するのか、いやそもそも実在有無に意味はあるのか。

 

学園に潜入した殺人鬼は強い信念と責任感を持って、圧倒的に不利な条件下で試行錯誤しながら懸命に闘っていく。そう、読者観客がひとごろし側をつい応援してしまう作品だ。

 

この作品は登場人物のちょっとしたセリフや描写が重要なせいか、アニメ化はセリフも表情もほぼ原作忠実で、良くあるアニメ独自の追加エピソードも描写もほぼ無い。

 

でもアニメの演出も地道に良い。主人公の声の使い分けは勿論、ナナはピンク、キョウヤは青の内面描写の色分けもカッコイイ。OPに加え、3話の色対比は視覚効果抜群で、牛乳パックまで青w

 

また1話の崖や寮玄関、3話の爆発など、原作は登場人物目線で参加感のところ、アニメは暗めの遠景で雰囲気や目撃感を出して、映像ではこっちの方がいいと思う。

 

そして2話以降のアニメオリジナルなEDも歌詞と絵が合い、作品終了後の世界なのか、主人公の心情の一面を描いたようでなかなか。

 

主人公が直面する「能力」も、段々難易度が上がるお約束を裏切られて驚く。さすがに話が続いていくと登場人物も増えて回ごとの切れ味は鈍くなっていくのだけれど。

 

最後にタイトルの「無能」も重層的な意味がありそう。まずは能力者(超能力者)かどうか。次にナナオの父のセリフのような世間的な有能・無能(この意味なら使命を持って孤軍奮闘できる主人公は有能だろう)。そしてもし、この闘い自体が仮に陰謀ならば、主人公の闘争事態に意義はあるのか。

 

一人で見ても、ネットで色々突っ込んだりも楽しめそうな作品と思う。

 

(追記)1話ラストを見返して背中ドンは効果音より音楽と気づいた。視聴者配慮もあると思うが、これもより劇的な映像化だ。 

 

(了)

池袋中華街のフードコート「友誼食府」で担々麺を食べた

東京・池袋チャイナタウンのフードコート「友誼食府」で担々麺を食べた。 

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池袋チャイナタウンは横浜中華街や新大久保韓国街より圧倒的に小さいが、元々華人向けでほとんど観光化されておらず、超お手軽な現地感覚が魅力だ。

 

以下の両店は 池袋駅を出てすぐの雑居ビルにある。

友誼商店(ゆうぎしょうてん):中国の物産のスーパーマーケット

友誼食府(ゆうぎしょくふ):2019年11月開業の隣接の中華フードコート

 

これが池袋駅「西口(北)」。昔は単に「北口」と呼ばれていた。地下一階のコンコースから、東武東上線の北側改札から更に北西に歩くと出る。「ここは治安が悪い」という人もいるが、何十年も歩いて危険に感じた事は無い。しかも出て徒歩1分なので危険に出会える方が難しいだろう。ただ繁華街からの帰り道で周囲にガールズバーとかもあるので、酔っぱらいを避けたいなら昼間が良いかも。
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西口(北)を出て、左手の交差点を渡ってすぐの雑居ビル4階だ。
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ちょっと分かりにくいビル入口。入口上のモニタで店内のビデオが流されていて、スーパーマーケットの棚が映ってる。

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エレベータ前の案内。2階は中国語の書店、3階はPANDAカラオケと中華デザイナーズダイニングの竹香園だが、今回の目的地は4階だ。手前の階段も使える。

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4階出ると、すぐ左手がフードコート、奥がスーパーマーケット、その中央で専用カードにチャージしてくれるので、どちらもそれで清算する。わからなければ(中国人らしき)店員さんがやや慣れない日本語で教えてくれる。

 

なお私は何回来るか判らないので遠慮して「カード要りません」と言って注文したら、一時貸出用らしきカードを渡され、結局中央でチャージしてから販売コーナーで手渡し(カード返却)となったが、つい余分にチャージしてしまったのでコーナーで手間をかけさせてしまった。最初から作るか、一時貸出ならぴったりチャージしよう(反省)。

 

写真は台湾料理コーナー。中央の約20席の席は土曜の午後2時のせいか満席で、席取りに手前で数分並んだ。感覚だが日本人7割、女性4割、若者5割、(私のような)初心者2割くらいに見えた。やっぱり安いけど実は本格で面白いとこは若者が多い感じ。
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席を確保したら、本場の辛さを確認したい私は四川コーナーへ。
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やっぱり基本は伝統四川担々麺(680円)だ(個人的趣味)
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「四川でも辛くない料理もあるし定食もある」との親切な日本語説明
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伝統四川担々麺と、テーブルの席取りガイド。ガイドは具体的なのがインターナショナル。担々麺は格段に辛いという事は無く、フードコートなのでそれなりの内容だが、味付けが日本の中華料理とは明らかに違うのが面白い。
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奥のスーパーマーケットでは担担麺や何故か韓国のインスタントラーメンも。
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水餃子(630円)。
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こちらは3階のPANDAカラオケの看板だ。
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雑居ビルから出て、これも西口(北)すぐの小籠包専門店では行列が。
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関係ないけど西口ロータリー前で見たコミュニティバスIKEBUS」。タイヤが斬新だ。
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最後に池袋チャイナタウンの情報をまとめてみた。

(場所)

Google マップ 友誼食府 

 

(同じ雑居ビル3階のデザイナーズ中華)

竹香園 - 池袋/中華料理 [食べログ]

 

写真も多くて判り易い記事。先に読んで行けば良かった!)

【池袋グルメ】中国よりも中国すぎる激ウマ中国フードコートが本格的すぎてザワつく / 友誼食府 ユウギショクフ | メインディッシュ! 東京

 

ここは中国!? 池袋で話題の「友誼商店」と「友誼食府」を徹底解剖☆|ちくわ。

 

(更に店にちゃんと取材してる記事)

本場と同じ味!?池袋の中国屋台料理フードコート「友誼食府」を中国人の友人に検証してもらってみた | be-topia(ビートピア)

 

(ビジネス記事)

池袋北口に広がる“本当の中国”:日経ビジネス電子版

 

一番しっかりした歴史説明

池袋に誕生した「新興のチャイナタウン」に「新華僑」が集った理由② | TABI LABO

 

池袋沿線は、昔から地価/物価が安いので学生/アニメスタジオ/外国人が多く住んでいた。その後、秋葉原に次いでオタクなショップが増え(主に東口)、そしてチャイナタウン(西口北)。気取らず(気取れず)、チープでニッチだけど魅力ある雑多な街だと思う。

 

(了)

アニメ「彼女、お借りします」1期は魅力的

略称「かのかり」のアニメ1期は12話で終了した。お下品半分で偶然/ご都合連続のナンパな話ながら、原作のイメージを活かしてOPも秀逸で2期も決定と色々魅力的でした。

 

まずは原作漫画のタッチを残した(アニメというよりイラストな)透明感ある瞳のキャラが魅力的。水原は優秀だけど主人公にだけ本音攻撃がハルヒツンデレ要素か。ただ最初の怒りモードに原作ほど突然性/意外性が見えないのは残念要素。

 

主題がレンタル彼女(レンカノ)で主人公らの下ネタも多くて「少年誌やテレビアニメでほぼ風俗を宣伝はやり過ぎ」とも思うが、実は純粋な「デート目的で安易に」は失恋直後の最初くらいで、次からは家族のため、女性もそれぞれまじめな目的を持って規約も確認して始めた、とか色々配慮はしてる。

 

主人公のダメ男ぶりが話題だが、昔の私小説とか「男おいどん」とか「めぞん一刻」の五代とか、日本の伝統ジャンルなのかも。どれも情けなく身につまされるが、たまに筋を通そうとして勘違いでまたミジメ、との哀れパターンも似てるかも。

 

水原は爆発モードでも正論連射だが、だらしなく身勝手な主人公も悪意はなくて毎回一瞬は相手の立場も考えようとする(当たってるかは別)とことか、そのキャラらしくてポイントだ。

 

あと水原が眼鏡だけで変身して誰にも気づかれない(水着の時ですら)のは、クラークケントや少年少女漫画のお約束ですね。

 

そしてOPは音楽と詩にドンピシャで、今風のスマホ自撮り、水原の多面性、ヘタレな主人公がやっと決断してもぐるぐる、そして最後の領収書がレンカノ再認識だけど捨てたようにも見えるとこが憎い。

 

また更科瑠夏の過去説明の7話EDは柔軟な映像と最低限の説明で、瑠夏の悩み、レンカノの動機、そして主人公土下座シーンで本編に無い子供時代と同じ表情を出して「子供からの願いがやっと」の内面と一直線な性格を表して感動的だ。

 

悪いけど該当の絵を引用。傾きまで似てる。

f:id:rabit_gti:20201005193508p:plain f:id:rabit_gti:20201005193750p:plain

このOPと7話EDは秀逸でスタッフも同じ、各100回は見てしまった。

 

各話では最初の1,2話と、最終回直前の10,11話は作画/演出も良くて、格段に酷い回も無かったけど、最終回はもうちょい動いて欲しかった。

 

1話や10話とかでの漫画的な画面文字描きは、アニメ的には本来邪道だけど、原作のニュアンスを削らずに、下手なセリフ化よりテンポ良いので、もっと入れて良かったと思う。

 

最終回も最終回らしく無理にまとめないのも、原作世界優先でいいのでは。そもそも原作とアニメは別物だけど、これは原作イメージをうまくアニメ化できた例かと。

 

という訳で、なかなか魅力的な作品でした。

 

ところで昔は「地方の人が放映日が遅いのは仕方ないでしょ」と軽く思ってたが、U-NEXT(翌木曜、6日遅れ)でSNS上の色々残念な想いを体験して、ひとの痛みは自分で経験しないと判らないと痛感した(^^;

 

(了)

 

(続)東証システム障害とITシステム

前回(東証システム障害とITシステム)の続きです。続きを書くつもりは無かったが、あまりに赤面な発言を見てしまったので。

 

10/2に以下記事が出ていた。国民民主党党首の玉木氏の変なツイートを指摘し、会見を行った東証のトップを評価した、非常にまともな記事と思う。 

biz-journal.jp

 

問題の玉木氏のツイートはこちら。記事と重複ながらツッコミを入れたい。

 

  1. 政治家が技術の専門家でないのは当然だ。専門用語が多少不正確でも仕方ない。しかし流行りの用語のしったかぶりは、軽薄で読む方が赤面するのでカンベンして欲しい。判らないなら「分散化を進める必要もあると思う」だけで良いのだ。
  2. ブロックチェーンは仮想通貨(暗号資産)用の技術だ(実際の経緯はビットコイン登場が先でブロックチェーンは後だが。)善意で解釈すれば「証券システムは今後は仮想通貨もサポートすべき」かもしれないが、それでは「分散化」と関係が無く意味不明だ。(通貨の種類と、証券売買システムの信頼性は関係ない。)
  3. サーバー型ではなく」も意味不明だ。「サーバー」はソフトウェア上の役割分担であるクライアント・サーバーモデルの片側で、そこから転じてサーバー向けのコンピュータ、更には従来型のコンピュータ(メインフレーム/オフコン/スパコン等)との対比で使用されている用語だが、どの意味でも「分散化」との対比にはならない。むしろ「サーバー=分散システム(日本ではオープンシステムとも)」と呼ばれている。善意で解釈すれば「1箇所に設置のシステムではなく、システムとリスクを分散」との趣旨かと思うが、やはり「サーバー型」では意味不明だ。

 

繰り返すが、政治家が技術用語が多少不正確でも仕方ない(お互い様)。しかし訳がわからないなら普通の言葉、例えば「故障しても業務影響が限定できるシステムも検討すべきだ」とかと言って欲しい。

 

思わず夜中に予定外のブログを書いてしまった。カンベンしちくり(八つ当たり)

 

(追記)既に以下ツイートされているようですが...

 

そして「分散化」は別に高度な話ではない。以下は一般論ですが、

  • 統合した大証や名古屋/札幌/福岡を別システムに分離。基本設計共通化なら全体費用圧縮もできる。分離の上で東京/大阪の相互バックアップ/災対も有力。取引所間連携は疎結合(MQなどの非同期キューイング)も組み合わせ可。
  • 1システムでも大手銀行のように内部2系統化。この場合も今回同様にデータベースがネックになるが、ここはクラスタリングメインフレームのSysplex、分散システムのORACLE RAC)またはDISK装置側のメトロミラー、あるいはタイムラグはあるがDBログ反映など。(しかし恐らくこれらを比較検討した結果、オンメモリDBとDISK装置2台の自動切替になったと思われるが)。
  • 単純にDISK装置障害対応なら、仮にRAID-5ならRAID-10化、各DISK装置筐体に対してミラーのバックアップDISK装置筐体を付ける、など。処理速度とのトレードオフだが。
  • 運用改善。今回、2019年11月更改時のテストではDISK装置自動切替は機能していたらしい。以後の再確認テストは不明だが、しかし特にDISK装置のファームウェアは毎月でも更新すべきだし、更新後は無影響確認が望ましく、他の作業時の人為的誤設定混入リスクも常にある。四半期ごとに災害訓練(稼働確認)していれば業務停止時間帯時に早期発見でき、原因混入時期も絞れたた可能性もある(定常業務以外の実施リスク、保守時間帯、運用負荷などとのトレードオフだが。)

 

以上は全て20年前から一般的な技術/手法だ。ファームウェアによるハードウェア故障の早期検知レベルなど向上した個々の技術要素も多いが、障害対策(高可用性設計)は確立した1分野で、アーキテクトなら必須で、営業/政治目的などで最新技術アジデータに陥ってはならない。

 

(了)

 

映画「TENET テネット」うーん

映画「TENET テネット」(2020公開)見た。軽いネタバレあり。

 

クリストファー・ノーラン監督が「ダークナイト」で見せた、表情を抑えたアップ連続での観客が窒息しそうな息詰まるダークな人間描写は健在だった。

 

前回作「ダンケルク」では得意の主観映像と違ってスペクタクルシーンに無理を感じたけれど(以前の 映画「ダンケルク」いまいち 参照)、今回は戦争ものでもない。

 

しかもタイムリープの時間ものとなれば、ハインラインの古典小説「夏への扉」、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」、「君の名は。」などのファンとしては見ない訳にはいかない。

 

(脱線)ところで私はコロナ禍以来初めての映画館で、入口で半券を切らない、1席間隔の座らないでください表示、20分間で全空気入替との換気案内映像を初体験。たまたま109シネマズのファーストディ(毎月1日は大人 1200)で、ファンな「NO MORE映画泥棒」の逃げ回る新作もスクリーン鑑賞できた。

 

タイトルの「TENET」は「信念」などの意味だが、回文で主題の時間逆行にかけてる。

 

冒頭のキエフの劇場でのテロ事件はガス攻撃を含めて、2002年のモスクワ劇場襲撃事件(チェチェン独立運動)がモデルと思うが、広いホールと狭い通路の対比が効果的な導入。

 

ちょっと不可解な画面があちこち出ても「君の名は。」同様に覚えておきたい。

 

ただスパイものなので絶体絶命の危機連続は良いが、敵の機嫌次第で簡単に殺される場面や、銃撃の中で全く当たらない場面が何回も繰り返されると、偶然すぎてリアリティが減ってくる気がする。せめてパターンを変えて欲しかった。

 

売りの時間逆行は、SF的に時間の整合性を発見したり語り合って楽しむ作品なのか、「マトリックス」のように「んなバカな」と気軽に映像を楽しむ作品なのか。多分後者かな。

 

バンジージャンプでのビル侵入は、ゆっくり上昇が新鮮だった。

 

ただ普通のスパイ映画は小さな工夫で大きく実現なのに、空港もハイウェイもヨットレースも大作戦な割に目的が単純だ。見せ場と伏線作成優先なのか、無駄すぎる作戦に思えてしまう。

 

ハイライトの赤/青腕章の2部隊突入は映像的には面白く、遠景でどう見ても後ろ向き歩きしてるのはご愛敬だが、なんで逆行部隊先行で先に地上の敵を一掃しないの?と、つい思ってしまう。

 

そしてハイライト山場の対決は、相変わらず主要人物は流れ弾も気にせず、結局は普通の地味なバトルなのはちょっと残念。時間ものなのに時間が決定打には見えない。

 

後半で種明かしは「カメラを止めるな!」形式かも。

 

人間も映像も魅力的で緊迫感あるけど、気楽に見ると話がわからず、真面目に見ると色々気になってしまう、ちょっとうーんな感じでした。

 

(了)

東証システム障害とITシステム

2020/10/1 東証の売買システムが終日停止した。当日は四半期初日で、中国や韓国の証券取引所も休みのために時差共存の世界市場のうちアジア地域で値が付かない深刻な影響になったようだ。

 

現時点、原因は共有ディスク装置1号機のメモリ故障(恐らくキャッシュ用またはコントローラ稼働用のメモリ)で、共有ディスク装置2号機への自動切替(フェイルオーバー)が何故かできなかったという。各取引サーバーは多重化されているが、各サーバーからデータ共有するディスク装置がネックとなった模様。

 

部外者の推測だが、切替機能の不具合(該当ファームウェアまたはソフトウェアの既知/潜在バグ)、故障の詳細状況(仮に中途半端な壊れ方の場合の切替機能による検知可能性)、人為ミス(切替テスト後の誤設定/誤操作)などが考えられると思う。

 

以下は夕方の東証記者会見を伝える日経XTECHとITMediaの記事で内容はほぼ同じ。

xtech.nikkei.com

 

www.itmedia.co.jp

 

どの業界でも基幹システムは障害対策で冗長化するが、最終的なデータ保管場所(通常はデータベース、オンメモリでも障害対策ログはディスク保存が基本)は整合性と処理効率のため無暗には分けられない(整合性のレベル次第では色々なクラスタリングやディスク複製技術も組み合わせできる。)

 

東証のシステムは、2005~2006年頃に障害多発し、2010年に信頼性と高速性を目的にした新システム「アローヘッド」が稼働し、2019年にはその更改もされた。

 

以下はアローヘッド構築を振り返った座談会。「"決して落としてはならないシステム”ができるまで 」とのタイトルが今は皮肉だが、しかし技術者から見れば「絶対落ちないシステム」などこの世に存在しないのも事実だ。

www.itmedia.co.jp

 

以下は2019年更改時の富士通プレスリリース。

pr.fujitsu.com

 

以下は当日夕方の富士通の声明で「当社の納入したハードウエアに障害が生じて多くの関係者の皆様に多大なるご迷惑をおかけしたことを、おわびいたします」と報道されたが、富士通Webサイトの当日のプレスリリースには掲示されていない。

www.nikkei.com

 

現時点で上記以上の詳細原因は未発表だが、部外者ながら関連していくつかコメントしたい。

  1. 大規模システム障害が発生するとすぐ「ベンダーはどこだ」「損害賠償すべき」と報道される。東証の基幹システムは富士通だが、周辺システムを含めればマルチベンダーで、各システムは通常は法的にはそのユーザーのシステムだ。要件も予算もユーザーで、ベンダーの瑕疵担保責任や故障等の役割分担は契約による。もちろんベンダーの各製品品質や技術力が影響する事もあるが、原因判明前に構築運用ベンダーを吊るし上げるのはおかしいし、背景には日本特有の「契約無視して業者に責任丸投げ」の日の丸親方的発想があると思う。今回東証の「市場運営の責任の所在は私どもにあり、(富士通への)損害賠償は現時点で考えていない」との発言は、主体性・責任感ある発言と思う。(勿論内部ではベンダーも率先して協力すべきだが。)
  2. また今回東証は、日中に復旧しても取引再開しないとの判断で、終日取引停止となった。過去の証券会社や銀行の大規模障害でも、障害直後の突然の取引再開でリトライ目的の重複入力や取引先ごとの不公平など不測の問題が発生して傷を広げたケースが多かった。特に株式売買では順序性が超重要だ。これも勇気のいる安全重視の決断だったと思う。
  3. システム障害があると「冗長性不足」との単純批判も見られる。しかし大組織の基幹業務で冗長化されていないシステムなど無く、普通の故障なら継続稼働(停止しても短時間)できる。それでも発生するのは、障害対策システム(クラスタリングなど)自体のレアな潜在不具合、中途半端な故障(間欠障害など半分壊れた状態で動き続ける)、ネットワーク定義変更、そして人間系(オペミス)など複雑な要因がありうる。
  4. 中には「クラウドの時代に」との批判もあるが、クラウドは重要だが適材適所で、応答性能命でAI高速取引(光ファイバーの光速を競い証券会社システムの1mでも近くに場所を借りて設置する)を競う東証基幹システムでクラウドは全くありえない
  5. 今回、東証マザーズジャスダック、更に同じシステム使用の札幌/名古屋/福岡も「全滅」に陥った。昔の大証東証に統合済だ。繰り返すが「絶対に落ちないシステム」は技術的にはこの世に存在しない。合理化・効率化には集約化だが、リスク分散でシステム分離(少なくとも疎結合)も組み合わせるべきではないか。(なお伝統的な大手銀行の勘定系システムは、2系統バックアップ構成で、本番機とバックアップ機のセットが2系統あり、各支店やATMへの回線も2系統あるので、クラスタ引継ぎ不可発生時でも半分の支店はまず落ちない。もちろん前提は2系統間のデータベース共有なので、物理筐体は冗長化する。更に全滅時でも最低限の応答を返すフロントエンドプロセッサも併用していたりする。高可用性・高コストが本当に必要か、過剰品質かは要件定義の問題だ。)

 

最近はデジタル庁も話題だが、技術の新旧より地道な障害対策(障害があっても最低限回る仕組み)を常に検討・構成・運用していることが重要と思う。

 

(2020/10/4 追記)以下の続編を書きました。

rabit-gti.hatenablog.com

 

(了)

 

政府IT化は必要だがIT産業推進は邪道

菅内閣成立前に書いた前回の「デジタル庁は天下の愚策」の続編です。

 

前回の要点は

  • 行政IT化が進まない原因は各省庁の「文化」
  • デジタル庁では原因解消せず屋上屋、マイナンバー推進に矮小化
  • e-Japan戦略など電子政府/IT産業推進は長年大失敗

 

今回の要点は以下目次の3点

 

マイナンバーが普及しない原因

基本は「課題の解決には原因特定と、その原因への対応が必要」との当たり前な話だが、政治の世界では過去の「政治腐敗の解決には小選挙区制導入が必要だ」のように意図的に誘導/変質されるので要注意だ。

 

まずマイナンバーが普及しない原因は利便性が低いからで、ITシステムの出来ではない(細部ではITシステムのデザインも多々あると思うが)。

 

例えば銀行口座の新規開設には既にマイナンバーが必要だが、マイナンバーには口座は紐づけられていないから、コロナ対策の緊急給付10万円の振込先口座は毎回確認しないと行政にも判らない。

 

しかしこの原因は漏洩防止のため個人情報紐づけ禁止で、ITシステムではない。仮に今後法改正なら制度/セキュリティの再検討が必要だ。つまり業務要件/政治の世界で、デジタル庁に技術者を集めても意味が無い。

 

マイナンバーは運転免許/健康保険/年金/銀行口座/クレジットカードの紐づけ論もあり、その場合は所得/納税/病歴/購入歴の漏洩リスクもある。

 

個人的にはエストニアのように全国民全所得を全国民にネット公開するラジカル案に賛成だが、大半の日本人には懸念/抵抗もあり、どう政治変革できるかの話で、やはりITシステム構築の話ではない(制度決定後、どう設計/運用するかの話はあるが)。

 

菅内閣成立後の報道でも、デジタル庁はマイナンバー推進に矮小化され、時限官庁とのこと。つまり行政デジタル化全般は既に無い。

 

昔から「ふるさと納税」「携帯料金引き下げ」など官案件は個別すぎで、庶民に目先のアピールするが、税制/民業の全体の方向性が不明確で、それを指摘する官僚は飛ばされて沈黙し、長期間方針転換されない。デジタル庁も早速同じパターン懸念だ。

 

IT産業推進が成功しない理由

ネットを見ても「IT推進、デジタル化、DX」の話題で「利用」の混同が多いと思う。

 

問題は既存IT技術の利活用が日本の行政/社会で遅れていること。紙/FAX/郵送/印鑑/窓口/平日日中/履歴不明確などで、行政全体の「文化」変革が必要だが、最新技術の必要性は無い。もちろんITにはIT格差/セキュリティなど課題もあるし、大企業も災害時の最後の運用手順は手動だ。適材適所で使い分け、利用者側からは選択の自由が望ましい。

 

しかし「日の丸GAFA」などのIT産業推進は全く別物だ。

GAFA - Google, Amazon, Facebook, Apple - 主に日本での用語

FAANGFacebook, Amazon, Apple, Netflix, Alphabet (Google) - 主に米国での用語 

 

前回書いたが経産省のIT推進は既存の官庁と関係の深い企業/組織へのばらまきで終わったプロジェクトばかりだ。

 

日本の国家主導の成功分野は重工業/造船など「欧米に追いつけ追い越せ」モデルで、成功した自動車/家電/漫画/アニメ/ゲームなどは国の関与は少ない。前者は更に中韓に追われて停滞し、後者の激しい市場競争/早い決断をした民間分野で成功している。

 

更にGAFAアイディア先行/リスク負担/先行投資で勝者総取りの世界。政官は先行事例分析/調整/安全重視/予算確保の長期計画の世界。政官がGAFAと同じ事はできないし、国民の税金でギャンブルすべきでもない。(中国は政治は共産党独裁だが、経済はベンチャー気質が高く、官僚的な日本企業と対象的。)

 

またGAFAも中国も、優秀なら年収億単位でスカウト、状況次第で即解雇だが、この労使慣行も日本に導入するのか/できるのか。しなければ集団竹槍戦法で討死必至、すれば社会が自由放任/新自由主義市場経済に変質するが、移民も厳格制限の国に開国の覚悟はあるのか。

 

「国が日本のIT産業を推進すべき」論は、これらの前提を押さえていない。税金をばらまけばカンフル剤で企業/雇用は一時的に元気になるが、企業/製品/産業自体は強くならず、却って依存度/官僚制を高めて沈没の例が多い。

 

あるべき電子政府とIT活用

政府が行うべきは以下と思う。上述のようにIT産業ばらまきではない。

 

つまり「活用して効果のあるものは利点/難点を理解して活用する」「活用への障壁は利点/難点を議論し見直す」が基本。

 

行政自体のIT活用は、行政内の書類電子化/手順のワークフロー化/定常作業の自動化/会議や勤務のリモート化/調達のB2B化/研修のe-learning化/単純QAのAI化、などもあると思う。民間では既存技術で実施中。目的は高度化/効率化/利便性。

 

しかし民間のIT活用障壁の見直しは、行政が推進しないと民間は困る。

 

最近「契約は電子化でも成立する」と発表されたが、八百屋での大根の売買契約など、最初から契約は口頭でも成立する。しかし口頭では万一の裁判で「言った言わない」の証明困難のため書面の確実性が高い現実ある。つまり電子署名の基準が問題で、単に「契約は電子化でもOK」宣言では無意味だ。この推進は1企業/業界ではできない。

 

またEUは個人情報保護でGDPRを制定したが日本は受け身対応で、国際的主導は苦手だ。

 

更に日本に何故GAFAが生まれないのか。日本でもオープンソースなど世界で活躍の技術者は多いが、ベンチャーの起業/発展が困難な土壌がある。会社自体は簡単に設立できるが、若い企業は融資/雇用/取引/税制自体が不利。GAFAは判断次第で無名の日本企業ともリスク覚悟で取引するのと対象的。日本のサラリーマンは前例/確実/安定に弱い。個々の社員より、日本社会全体の官僚化/硬直化。

 

過去も政治家/財界がベンチャー推進を掲げたが、ほとんど変わっていない。

 

こんな話がある。「ソニーやホンダは初期のベンチャー精神を取り戻せ」と言う人は多い。でも既に大企業がベンチャーとは矛盾だ。そう言う人は本当のベンチャーは創業/支援しない。これは安易なナショナリズムを背景にした日の丸GAFA構想も同じで、「政府公認の安心ベンチャー」は自己矛盾だ。それは実現しないし、実現しても失敗確定だ。

 

(まとめ)

経済の主体は民間セクターで、政府は政府自身のIT活用と、民間のIT活用障壁の除去を進めるべきで、政府がIT産業(企業)を推進/支援するのは「ばら撒き/えこひいき」で間違いだ。ITのイメージで、混同したり騙されてはいけない。

 

菅政権の10の性格

2020/9/16 菅(すが)内閣発足に10の感想。

 

  1. 官房長官から総理は、福田康夫首相の例など突然の辞任表明の混乱回避/政策継続には自然。しかし各派閥の雪崩的支持の背景は、派閥が強いのではなく派閥弱体化と思う(主体性より勝ち馬殺到)。自民党の保守勢力連合体から単色的政党への変質か。
  2. 叩き上げ豊臣秀吉/田中角栄(今太閤)など庶民的で明るいイメージもあるが、ムッソリーニ/ヒトラー/スターリン/金日成も叩き上げで、後ろ盾の無い庶民出身こそ権力維持を徹底する例や、創業者ワンマンもいる。叩き上げと政治姿勢は関係ない
  3. 無派閥アピールだが、菅グループは弱小で有力者もいないから派閥均衡に乗るしかない。菅氏は官僚統制は得意だが、バルカン型政治家と言われた三木首相のように党内遊泳術が上手いかは疑問で基本は二階政権か。
  4. 安倍政権継承を掲げながら、復古/タカ派色はフェードアウトか。菅氏は公明党とパイプが太く、二階幹事長は親中派。そもそも戦後レジーム脱却の安倍氏と対照的に、菅氏の国家像は聞かない。既存政策は継続でも、愛国教育/北朝鮮脅威論/強引な憲法改正などは控えて内政優先ではないか。
  5. 消費減税否定は正しいと思う。消費税は富裕層ほど払う安定財源。仮に所得税/法人税収入が5年間1/5になっても、社会保障費1/5では持続不可。新型コロナ緊急対策なら流通負担も多い消費税ではなく直接給付(月額)を。
  6. 官邸官僚の影響低下。安倍政権後半では経産省の補佐官がアベノマスク/唐突な休校/GoToなど、従来の自民党政権では考えられない素人な思い付き政策を乱発したが、今回ようやく退任した。プロの常識的な運営を希望。
  7. デジタル庁は屋上屋なので反対(デジタル庁は天下の愚策)だが、IT化推進は賛成だ。しかしマイナンバー普及に矮小化されそうなのが懸念だ。
  8. 経済対策は前政権の世論調査でも常にトップ要望だが、そもそも主体は民間で政府は間接誘導しかできない。菅氏の会見では個々の規制緩和(という名の利益誘導)がまた続きそうな懸念。少子化も本来はキャリア/出産の両立、待機児童解消などだが、菅氏の会見では出産費用無償化/避妊治療保険化などまた矮小化しそうで蛸壺化。
  9. 外交は米国/中国/ロシア/北朝鮮ともに誰がやっても大きな変化は困難。たかが北朝鮮ミサイルを選挙前にアラートで不安を煽る手法は、却って北朝鮮の思惑通りで望ましくない。
  10. 年内解散は無いのでは。元々引継ぎ内閣でコロナ優先もあるが、現在の圧倒過半数消失リスクより長期政権の基盤作りを有力派閥が選ぶとは思えない。解散は首相の専権事項と言うが、法的には内閣で閣議決定が必要。反対大臣は罷免が必要だが、小泉郵政改革のように信念/ブームがある訳でもない。

 

(おまけ)

  • (新)立憲民主党。党名/党首/幹事長も同じで新味なし。シンプルに「民主党」で良かったのでは。旧民主党のバラバラの反省というが枝野氏は独裁的過ぎ。排除反発が起源なら包括性/多様性が必要。なお小選挙区制で野党統一候補なら社共連携も必要で連立条件明確化は必要(世界各国では極右/極左も連立参加)。
  • (新)国民民主党。小型化して更に旧民社党純化、支持組織も旧同盟(産別)。日本では提案型も妥協/抱き着きとなり、保守二大政党を掲げた政党は常に消えた歴史がある。
  • 社民党立憲民主党への合流論もあるが、今の社民党(特に地方組織)はそもそも旧民主党への合流拒否組なので難しいと思う。
  • 共産党。過去の武装闘争/自衛隊廃止/安保廃止/天皇制廃止などが叩かれるが、本来は民族独立/武装/非同盟/レーニン主義。綱領は他党と異なり当面/将来/可能性を全部書くため誤解も多い。しかし最近の護憲/社民化は戦略か変質か。いずれにせよ過去の独善主義が今も尾を引いてる。

 

(了)

デジタル庁は天下の愚策

自民党総裁選の各候補者からデジタル庁/データ庁/DX推進委員会などが提唱されている。IT関係者としては、行政のIT推進は必要だが新省庁設立は愚策と思う。

 

まとめると

  1. 日本の行政はIT後進国(IT推進が必要)
  2. しかしITはただの道具(現状の原因は各省庁の文化)
  3. 新省庁は無意味(原因を変えないと無意味、下手すると業界ばらまき)

 

まず今回の構想は政府のお粗末な新型コロナ対応にある。急造した給付金オンライン申請システムが実用にならず混乱して却って遅延要因になった。感染者数がFAX台数不足のパンクで把握できない、計上基準も不統一、などだ。(話題となった目先の対応を大きく取り上げるのは最近の政治の悪い特徴と思うが、ビジネス期待で経営団体は賛同だ。)

 

しかし日本の行政のIT後進性は元々だ。部分的にオンライン化しても、縦割りは変わらず、結局紙を併用しないと申請できなかったり。

 

例えば新型コロナの給付金申請は、韓国ではオンラインで数分(給付もクレジットカードに即時)、欧米の郵送でも2週間程度。そもそも韓国は引越し時の申請(市役所、警察、運転免許、小学校など)もオンライン1回で済むが、経済危機の時にIT化を進めた成果だ。エストニアでは脱税防止のため全国民の収入が相互にオンライン確認でき、国政選挙もオンライン投票できる(私はいずれも賛成)。

 

ITは道具なので、情弱格差/停電/災害/セキュリティなど課題もあるが、利用者側/運用者側の双方の手間/費用/環境負荷や、検索/保管/複製/再利用の容易性もあるので、利点と難点を比較し進めるべきと思う。(紙も紛失漏洩や災害消失もある。)

 

ITの話では「政治家や官僚はバカ、優秀な人に替えるべき」論が多いが、政治家や官僚が技術に詳しい必要は無い。提案された活用方法をオーナーとして選択/調整/決定するのが仕事だ。逆に技術者には政治的な調整/決定はできない。

 

日本の行政でIT化推進が進まない原因は、行政内の司令塔/予算/技術者の不足ではなく、各省庁の文化にある(縦割り、前例踏襲、減点主義、紙・ハンコ文化など)。

 

司令塔/予算/技術者(協力IT企業)は過去に多数あるが、皆さん覚えているだろうか。

 

仮に「優秀なIT大臣と技術者」を集めてデジタル庁を作っても、各省庁が不服従/骨抜きにすれば意味が無いし、協力が無ければ構築できず、無理に押し付けても使われなければ意味が無い。(多額の予算を投じた共通システムに省庁の利用がほとんど無く無駄との報道もある。)

 

省庁横断なら総務省、それ以外は各省庁がオーナーなので、更にデジタル庁を新設しても、役割分担や縦割りが複雑になるだけではないか。

 

各省庁の文化も一応理由はある。減点主義だから前例踏襲でないと評価されない、改革すると前任者である上司先輩のメンツや利益構造を潰す事になる、紙/ハンコでないと万一の訴訟時のリスクが高いし、紙/ハンコ前提の多数の規則の修正は手間がかかり評価されない。そもそも費用/人員削減より予算/人員増が評価される、短期で配属替えなので業者任せになり内容が理解できない(責任回避で意図的に無知でいる)などなど。

 

本来この各省庁文化を長期継続的に改善すべきで、それは期間限定の新省庁にはできないと思うし、するなら総務省(せいぜいIT担当大臣)の役割と思う。(復興庁のように期間限定なプロジェクトならともかく、IT推進は「最新システムを作って終わり」ではない。)

 

最近新設の消費者庁も、各省庁はエースを送り込むはずもなく、現場の国民生活センター出身者とは視点が異なり、残念ながらうまく回っていないと聞く。ましてデジタル庁は何年存続するかも怪しく、省庁はシステムを将来使い続ける立場だ。そんなデジタル庁からの指示は面従腹背だろう。

 

菅内閣安部内閣と同様の経済産業省主導と予想され、デジタル庁もその影響下となるのだろう。旧通産省第五世代コンピュータ、シグマ計画、エルビーダメモリ、ジャパンディスプレイ、和製検索エンジンなど多数の日の丸プロジェクトに多額の予算を投じては、その業界を潤して延命させただけで成果がほとんど残らないという長年の実績を持つが、今回も同様の業界ばらまきプロジェクトに終わらない事を祈りたい。

 

そのためにはマイナンバーのように「将来性ある新規システムを多額の予算を投じて作ったけど、普及しないので今後も推進予算を投じます」ではなく、より根本的な「各省庁の文化自体を、省益優先から利用者優先に変える、評価基準も見直す」にしないと意味が無いと思うのでした。(これが本当の意味の行政改革。)

 

そして Society 5.0 とかのバズワード(煽り文句)に騙されないこと。用語の意味を判って使い分けるならいいが、IT業界には新しものアジテーターも多い。

 

「日本の行政はメインフレームCOBOLを使い続けるから駄目」論も良く聞くが、これらは民間でも現役で、単に新技術を推したい/売りたいだけの場合が多い。各要素技術はメリデメに応じて選択すれば良いだけで、最新技術至上主義者も困りものだ。(時代に応じて、メインフレーム、クライアント・サーバー、オブジェクト指向、分散技術、Web技術などがトレンドとなったが、結局は適材適所や、全体最適部分最適のバランスと思う。)

 

どの業界も基幹システムは枯れて安定した技術を組み合わせるし、行政ワンストップ・オンライン化は20年前の技術でも十分できる(日本はやらなかっただけ)。技術の問題ではなくオーナーの文化の問題で、そこを変えない限りは意味が無い。

 

(2020/9/19追記)

菅政権がスタートし、デジタル化はマイナンバー普及に矮小化されそうだ。しかも現在のマイナンバーの使い勝手が悪いのは、情報漏洩対策で個人情報の紐づけを最低限にしいる(そのため個人口座には紐づけされていない)ためだ。つまり再検討対象は業務要件自体で、IT専門家を集めても意味が無い。

 

(参考)

・韓国の行政IT(オンライン ワンストップ)

enterprisezine.jp

 

エストニアの行政IT(全国民情報のデジタル化)

www.itmedia.co.jp

  

・e-Japan戦略(ほぼ成果なし)

www.itmedia.co.jp

 

・i-Japan戦略(ほぼ成果なし)

xtech.nikkei.com

 

通産省第五世代コンピュータープロジェクト(大失敗)

xtech.nikkei.com

  

通産省人工知能プロジェクト(大失敗)

ascii.jp

(了)

(続)広島アニメフェスの最後 (追記 2022/5)

広島国際アニメーション・フェスティバルは、今年のオンライン開催で最後(打ち切り)のようです。 前回ブログ(広島アニメフェスの最後)に続いて各記事やネットの反応を見返してみました(最終更新 2022/5/27)。

  

広島アニメフェス2020の唐突な終了

 2020年は新型コロナ対応で大半のプログラムは中止され、コンペティションのみオンライン開催となった。残念ながら状況から見てやむを得ないと思う。

 

前回2018年の最終日には「次回大会でまたお会いしましょう!」とツイートされた。(アカウント名はその後2020に改名されたが。)

 

しかし今回2020年は以下の受賞作品発表が最後のツイートで、終了宣言も次回大会の話も無い(9月11日現在でも)。

 

広島市の方針で、次回から音楽も含めた「総合文化芸術イベント(総合フェス)に一新」され、更に体制も従来のASIFA共催から地元団体中心になる。

 

しかし体制変更の報道は8月15日、つまり大会(8月20日~24日)開始の5日前とギリギリで、推測ながら運営側は次回への言及ができなかったのだろう。 まるで突然死だ。

 

オンライン開催への反応

大会は限定オンライン開催となったが、一部ファンによるオンライン活動も行われた。

 

ツイッター上では #エア広島アニメフェス 。もちろん妄想上の企画で色々な参加者の色々な年の話題もまざっているが、会場のアステールプラザに行ったかのような雰囲気と各参加者の視点や愛着が感じられる。以下はそのまとめ。

togetter.com

  

また大会前後の一部関係者による広島を語るZoomオンライン会議。以下は月刊近メ像インターネットの記事です。

 

「終了」への反響

「広島アニメーションフェスティバル」などでネット検索すると「終了」には否定的な反応が大半だ。(当然ながら従来参加者が多い影響はあると思いますが、総合フェス化を歓迎・期待する意見は発見できなかった。)

 

 

 

 

 

 

 

 

月刊近メ像インターネット 「広島国際アニメフェス 終る」 

 

(2020/9/25 追加)

 

(2020/12/31 追加)

tsugata.hatenablog.com

 

 

打ち切りの原因

関連資料(後述の①)を読み直して、非関係者ながら無責任に推測してみたい。

 

8月15日の記事では木下小夜子フェスティバルディレクター(FD)の「根耳に水」との表現が載っている。

 

しかし市の担当課長からの「やめるわけではなく、発展的見直し」で、「アニメ芸術の振興と地域活性化の両立」のため木下FDに話はしたが「共催という形以外は受け入れられない」との回答だった、との話も載っている。

 

もともと「市民から見て敷居が高い」との批判は当初からあり、市からの打診も(形式的かは別にして)あったので、「不満はあっても、従来通りを主張していれば今回も跳ね返せるだろう」と思っていたところ、突然の共催切り決定で「根耳に水」となってしまったのかも知れない(部外者の結果論な推測で大変失礼ながら。)

  

ところで私の今の仕事はIT系アウトソーシング(運用委託)で、長期契約は楽に見えるが実は築城3年落城3日、打ち切りリスク回避のため(現場だけでなく)顧客上層部の意向を確認/分析/検討/対応して合意文書を積み重ねる地道な努力も欠かせない。

 

特に相手からの批判や要望が減るのは、順調な場合もあるが「言っても無駄だ」と諦められた場合は怖いパターン。水面下で進めて次契約で突然切るのは良くある。

 

もちろん木下FDは市長にご挨拶を希望したり上部とのリレーションシップも重視している。ただ木下FDはASIFA-JAPAN会長兼ASIFA会長なので、仮に市が不満を持っても相談する「上」は居ない形なのも「継続または共催切り」の両極端な二者択一になったのかも知れない。

  

なお大会も「子供のためのアニメーション」など一般市民にも敷居が低いプログラムも毎回組んでいるが、素人の一般市民がプログラム一覧を見て「国際フェス、一般市民向け」の色分けがわかりやすいとは思えない。

 

大会ゆかりの作品でも「ピカドン」、「風 1分40秒」、「おんぼろフィルム」などアニメーションは言語に頼らなくても通じるのが利点だが、とはいえ日本語が楽な観客も多いので「日本部門」を設ける方法もあったかもしれない。 

 

もちろん正論では作品を「アート/一般」や「世界/日本」に分けるのはおかしいし、市民も気軽に色々な表現や作品に触れて欲しいのが理想だが、結果論ながら落としどころは探れなかったのかとも思う。(落としどころがあっても今回の動きはあったかも知れないが、「敷居」の理屈は弱められたかも。)

 

今後の体制(HACとHIFF)

今後の体制は来年決める予定とのこと。

 

アニドウなみきたかし氏は「木下FDの続投を」とツイートした(広島アニメフェスの最後を参照)が、従来からの協力者としては自然と思うが一般観客としては同等の質/量/レベルが維持できるかが重要と思う。

 

体制だけならば ASIFA-JAPAN が共催から協力などに一歩引いて、計画主体は地元団体に任せて、各国アニメーション作家との調整などを ASIFA-JAPAN が協力してもいいような気もする。

 

その地元団体には、従来より大会関連イベントも運営してきたNPO法人広島アニメーションシティ(HAC)などが想定されているらしい。

 

HACは2012年に広島市から認可を受けたNPOで、代表者・役員の名前も載っている。

hac.or.jp

 

同じHACでも、1995年に全国アニメーション総会静岡大会を主催した浜松アニメーションサークル(HAC)とは違うようだ (^^;

 

Webサイトや公式ツイッターを見ると「広島ゆかりのアニメーション」上映会や「広島アニメーションだより」発行など、幅広く地道に活動しているようだ。 

twitter.com

  

なお以下ツイートはHAC理事の松浦妙子さんかと思われる。

 

HACへの期待のツイートも。

 

市としては、一定のノウハウを蓄積した地元団体をメインの計画主体に格上げして、頑固な ASIFA-JAPAN は共催打ち切り、せいぜい業者委託(下請け)にして主導権を奪還したいのかも知れない。

 

オーナーの提携相手切りと言えばインテルAMDダイムラー・ベンツとヤナセナビスコヤマザキなども連想するが、期間をかけて相手のノウハウを吸収してから切るのは共通と思う。

 

更に推測では、広島の松井市長は2019年に3選を果たし任期は2023年までなので、3期目を確実にしてから早速懸案の刷新に着手したのかも。

www.city.hiroshima.lg.jp

 

また2014年より広島国際映画祭(HIFF)が毎年開催されている。この実績とノウハウを元に「そもそもアニメーションなんて映画の一部だから簡単」と思ったのかも知れない。

hiff.jp

 

広島国際映画祭実行委員会のメンバーには経済・観光関連団体が並んでいる。総合フェスもこれをモデルとするのではないか。

広島県広島市広島商工会議所広島経済同友会広島県観光連盟、広島観光コンベンションビューロー広島市文化協会、広島中央部商店街進行組合

 

いずれにしても、2019年9月の市議会での「見直すべき」との質問、2020年1月の総合芸術祭への一新の発表、同8月の体制変更は、この1年間の急展開にも見えるが何年も水面下で進められて来たのかも知れない。

 

今後の内容(広島市の基本仕様書)

もともと「隔年で、コンペティションは短編のみ」との課題はあった。今後はどんな内容になるのか。お役所的資料ながら、市の計画書といえる基本仕様書(後述の②)を見てみたい。

 

本市では、世界平和の実現とアニメーション芸術の普及・発展を目的として、広島国際アニメーションフェスティバルを昭和60年に初めて開催し、以後、隔年で30年以上にわたり実施してきた。本フェスティバルは、世界四大アニメーション映画祭の一つに数えられ、米国アカデミー賞公認の映画祭になるなど、世界的に高い評価を受けている。

本フェスティバルの成果を更に広げていくという視点に立って、イベントは、アニメーションのコンペティションの充実強化(短編部門のクオリティの維持と長編部門の導入など)を図るとともに、例えば、映画や漫画等も含めたメディア芸術全般を対象とすることを想定する。

 

上記を見ると、実績評価と拡充に読める。しかし、大半の人が反対しない表現を多用して、実は都合よく誘導できる事が行政文書のポイントだ。深読みすれば以下とも読める。

 

広島ならではのイベントとするため、各ジャンル・コンテンツのプログラム企画等については、地元の音楽・文化関係団体が主体となることを想定する。

 

上記が従来の「共催 ASIFA-JAPAN」を否定した箇所。なんと従来の大会は「広島ならでは」ではなかったのだろうか(愛と平和、平和のためのアニメーション、ヒロシマ賞など「広島ならでは」と長年信じていたが)。なお「想定」との文言は、単に保険で断定を避けただけかと(お役所文書)。

 

○ 検討委員会構成員(想定)

④メディア芸術関連団体
NPO法人広島アニメーションシティ、広島国際映画祭実行委員会

 

上記が映画/漫画関係の「地元団体」に想定されているようだ。

 

音楽」ジャンルでは、「クラシック音楽」を中核に、「吹奏楽」、「合唱」、「オペラ」及び「ポップス」を必須コンテンツとする。「メディア芸術」ジャンルでは、「アニメーション」を中核に、「映画」及び「漫画」を必須コンテンツとする。

 

総事業費は2億円程度を想定する(プレイベントを含む。)。

 

上記が決定的と思う。市から見ればジャンルも予算も拡大だが、広く薄くとなり従来内容は大幅縮小ではないか。

 

従来は1大会の事業費は約1.5億円という(①)。仮に単純計算で2億円を必須7コンテンツで割ると、「映画」全体で3000万円弱と従来の1/5。もちろん実際には広報宣伝や会場など共通費も多いが、プレイベント費用も含まれ、「映画」には長編も含み、音楽も楽器管理やプロ招待にも相応の費用はかかる。従来のプログラムはコンペティション以外はほぼ不可能ではないだろうか。

 

つまり新しい「総合フェス」のアニメーション部門は、国際アニメフェスとは言えない内容に変質するのは必然に思える。いっそ別都市に移動して、東京/千歳/広島などと良い意味で競えればいいのに、などと無責任に思う。

 

最後に

ファンの立場では、中身が伴えば名称や体制はどうでも良い。ただ問題は、その中身(質/量/レベル)が本当に維持できるかどうか。

 

もちろん地元団体に大会関係者も多く、熱心な活動もされると思う。ただ世界のアニメーション作家との協力関係は、お役所的権威だけでは限界もあると思うし、何より仮に「映画」全体の予算が1/5ならばコンペティションくらいしかできないのでは。

 

目先の「拡充と経済効果」を狙って、35年間で積み上げた世界的優位点(コンピテンシー)を喪失してしまうのではないか。フェス目的だけで広島を何度も訪れ、ついでにあちこち観光してきた1人として懸念は尽きない。

 

 

参考資料

①2020/8/16 朝日新聞デジタル小原篤のアニマゲ丼」。無料会員登録で読めます。(2020/8/15 朝日新聞記事の詳細版。恐らく一番詳しい記事。)

digital.asahi.com

 

広島市「総合フェス基本仕様書」 

総合フェス基本仕様書(PDF)

 

上記は以下リンク先の下部に掲示されている。

www.city.hiroshima.lg.jp

 

 

追記

(2020/9/21 追記)

広島アニメーションシティ(松浦さん)のツイート。以降のコメントも参照。

 

(2020/9/25 追記)

 

(2020/12/31 追記)  ASIFAによる広島国際アニメーションフェスティバル救援キャンペーン

 

(2021/1/10 追記) ASIFA-JAPAN の公式声明およびFAQ

asifa.jp

 

上記のFAQより抜粋

Q1-1: 広島大会は終わったのですか?
A1-1: ASIFAが公認し、ASIFA-JAPANが共催してきた広島大会は、不本意ながら、2020年8月に実施した第18回大会をもって終了することとなりました。

 

Q3-2: 新しい催しの「アニメーション部門」はこれまでの広島大会の後継ですか?
A3-2: これまでの広島大会とは全く異なる別の催しです。

 

Q4-1: ASIFA-JAPANは、ASIFAの精神を受け継ぐ新しい国際アニメーションフェスティバル - International Animation Festival in Japanを設立しますか?
A4-1: その方向で考えております。

 

(2022/5/27 追記)  ようやくひろしまアニメーションシーズン」(ひろしまアニシズ)の具体的な情報が出て来たけれど、個人的には従来の広島フェスのような熱心なウォッチは全く見かけず、国際イベントから地方文化祭になった事を改めて実感するし、寧ろ新規の新潟が話題のような...

 

 

アニメ作品のコンペはやるようだが、当初の「環太平洋・アジア」に「ワールド」部門も加えるなら、分ける意味はあるのだろうか。

 

とはいえ選考委員の座談会は、選考委員が毎回入替の従来のASIFA方式との比較の話などもあり面白い。

 

広島に代わり2023年予定の「新潟国際アニメーション映画祭」の方が世界イベントを目指すのかも。名称は過去の「広島国際アニメーションフェスティバル」に似ているがASIFAの名前は見当たらず長編特化らしい。

 

 

 

 (了)