らびっとブログ

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大阪都構想は地方自治か

2020/6/19 「大阪都構想」が府市の法定協議会で可決された。秋にも予定される2度目となる住民投票で可決されれば実現し、「大阪市」は廃止されて4つの「特別区」に再編される。これは「東京都制」(今の東京都と23区)をモデルにしている。それは地方自治なのか。

 

(新聞報道)

大阪都構想、執念の再挑戦 4区再編 税収差など配慮 :日本経済新聞

 

 

(制度)東京都制は戦時の行政統制

まず「地方自治」は憲法にも記載された制度で、詳細を住民が民主的に変革していく事自体は、民主主義・自治・住民参加の立場からも賛成だ。

 

そして「大阪都構想」は維新の看板政策で、維新は道州制を含めた地方自治と、政治主導による既得権益打破を、一貫して主張している。

 

しかし「大阪都構想」のモデルの「東京都政」は戦時中の政府による行政統制制度で、地方自治とは正反対だ。

 

元は「東京府」と「東京市」で、大阪を含めた各道府県などと同じ構成だったが、太平洋戦争で戦局悪化後の1943年に帝国議会の議決により、「東京府」は「東京都」になり、「東京市」は解体されて「特別区」(当時は35区)になった。

 

今回の「大阪都構想」も、「大阪市」を解体して4つの「特別区」にする形は同じだ。逆に道州制の議論では、東京23区を「東京市」に戻す案もある。

 

地方自治を言いながら、正反対の戦時法制の名残の中央集権を増やすという発想が、制度の観点では不可解だ。

 

(理由)二重行政の解消

大阪都構想」推進派の一貫した主張は「大阪府大阪市による二重行政の非効率解消」だ。これはある程度理解できる。

 

ただ、それは大都市を抱える都道府県に共通の話で、大阪特有ではない。(長野に数年住んでいた時は、県と市が仲が悪いとさんざん聞いた。長野オリンピックの開催は「都市」なのに、開会式では県知事がスピーチした。)

 

特に都道府県と政令指定都市は法的に同等で、重複も多く、広域行政の調整は大変だが、それらは当たり前の事でもある。

 

しかも現在は大阪でも府長も市長も維新で「二重行政の弊害は解消された」が、「今は人に頼っており、制度的な歯止めのために大阪都構想は必要」という。

 

他県では調整してどうにかやっている事で、大阪でも今はできているのに、「大阪は戻ってしまうから制度化が必要」という。「大阪人は特殊で調整ができないから、お上が強制分担する」という趣旨なのか。これでは差別だし、個人的に知る限りでは逆に社交的で調整力ある方が多いと思う。

 

現状を誇るなら「我々は実現した。今後も必要だ。」で良い。目的と手段が逆転しているようだ(維新の政治の弊害はここでは触れない。でも手段の目的化は、実は教条主義権威主義官僚主義の始まりなのだ)。

 

(動機)「都」と呼ぶ理由

今回の「大阪都構想」が実現しても、大阪は「府」のままで「都」にはならない。しかし2008年以来の維新の「大阪都構想」では、大阪都」の名称を強く主張していた(政府や、当時「日本維新の会」の石原慎太郎共同代表などが反対して実現しなかった)。

 

名称が「都」になれば偉いのだろうか(上述のように東京の「都」は戦時法制の結果)。京都に差をつけたいのか。強硬に主張するほどコンプレックスの裏返しに見えてくる。

 

大衆支持にはある程度のナショナリズムは必要だが、悪い意味での「ポピュリズム」(本来は「人民主義」「民衆派」など良い意味だが)が混ざっているのでは。

 

(時期)コロナ下の住民投票

維新の大阪都構想は2008年から続いている。維新も「今は府市連携できてる」と言っていて、1~2年を争う訳でもないのに、広範囲な住民議論や集会が望まれる案件を、わざわざ新型コロナの終息が見えない今年秋に住民投票なのか(一応、状況を見てと前提がついているが)。

 

維新がコロナ対策で支持率が上がった今がチャンスというのは政治的にはわかるが、党利党略が露骨すぎでは。住民の健康より党の遺産作りなのか。

 

まとめ

道州制を含めて、住民が制度を変えていく、多少課題はあっても参加していく(何をやっても課題はあるし、経験しなければ住民も組織も成長しない)のは良い事だと思う。

 

しかし、やはり以下は気になるのでした。

  1. (制度)モデルの東京都制は戦時の行政統制(地方自治の反対では?)
  2. (目的)二重行政解消(他県も同じ、大阪だけ特殊なの?)
  3. (動機)「都」のネーミング(コンプレックス?)
  4. (時期)コロナ対応下(党利党略すぎ?)

 

(了)