らびっとブログ

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政治:「政権を握っているのは内閣総理大臣だけ」発言は不正確だが独裁ではない

参議院議員の「政権を握っているのは内閣総理大臣だけ」発言が話題ですが、感想です。

  1. 人間同士なので多少の間違いは許容したい
  2. とはいえ不正確すぎ
  3. ただ批判のうち「それでは独裁」は少し言い過ぎ

 

 

 問題となったツイッター発言f:id:rabit_gti:20191106223712p:plain

 うーん、まず政権与党の議員が「私たちは政権握っていませんよ(笑)」という表現は、一体どういう意味かと思ったが、次に「正確に」と前置きして「政権を握っているのは総理大臣だけですよ」は、さすがに「正確」ではないでしょう。

 

批判的な記事はこちら

 

他にもいくつかありますが、ほぼ同じ内容のようです。「憲法の議員内閣制がわかっているのか」、「独裁国家ではないか」という批判の紹介です。

 

どう不正確なのか?

 

多分「政権のトップは首相だ。閣僚の任免も、更に政権党のトップも首相だ」と言いたかったのでしょう。ただ「政権」と「総理大臣だけ」の2箇所が不正確すぎでした。

 

「政権」とは政治権力、特に三権分立では行政府(内閣)。日本は議院内閣制なので、内閣(首相を含めた閣僚/大臣)は(国民の代表である)国会に対して、連帯して責任を持ちます。

  1. 「首相だけでなく(少なくとも)各大臣も」
  2. 「連帯して」

の2点がポイントです。

 

普通の企業なら、普通は担当者が契約や売買しますが、部長や社長が直接やっても別に構わない。しかし各省庁のトップはあくまで各大臣で、首相には直接実施する権限がありません。首相はあくまで大臣の任免権者および閣議の議長。指示はできるが実施はできない。ある意味で内閣内の権力分立、権力均衡。

 

次に「連帯して」もイギリスで形成された議員内閣制の原則で、つまり「内閣不一致はNG」です。だから「セクシー」とかアホな言葉でも閣議決定して統一した形にします。

 

では、何故こんな原則があるか?それは元々は君主を補佐する大臣群だったから。そもそも「大臣=上位の臣下」「総理大臣=そのまとめ役」。位置付けは、首相を含めて君主の補佐役。

 

一方、君主を廃止して、平民が君主の位置に立ったのが「大統領制」。だから中曽根元首相の持論「首相公選制」は「事実上の大統領制で、日本は天皇がいるからできない」と保守派が猛反対した。

 

今回の三原氏の発言では、首相が大統領のように思える。天皇を君主扱いする保守派こそ議院内閣制を理解してないとまずいのでは。まして連立政権で公明党の立場が無いのでは。(私個人は、首相公選制や大統領制でも別に良いけどね。)

 

「それでは独裁」批判は言い過ぎ

 

前述のように、仮に大統領制なら、「政権は大統領だけです」とか言えなくもない。大統領は行政府の純粋なトップで、選挙による正統性を持つから。

 

だから「政権が個人なら、それは独裁国家だ、北朝鮮と同じだ」というのは、言い過ぎ。大統領は個人が選出されて、政権を形成する。政党は本質ではない(アメリカ合衆国の創生者達は政党否定派)。

 

批判ならば「保守派なら議院内閣制や、その意義は抑えておくべき」とか「議員なら政治用語は正確に」かと。