10月にアニメ2期開始予定の「SPY×FAMILY」ですが、原作漫画もアニメ1期も面白かった、との今更ながらの感想です。
原作漫画はジャンプラで見て、アニメ化は難しそうと思って期待せず見てなかったけれど、先日ふと1話を観たら原作イメージを保って面白く、12話一気見してしまった。
まずOPから作品世界。東欧風世界でカッコイイ本来のロイド、ハイテンポな絵本風のアーニャ視点、華麗なヨルさん、そして最後はコメディタッチでファミリー一緒だけど「X UPSET(転覆禁止)」でロゴとなる構成が、丁寧な作画と色彩でさすがです。個人的には音楽に合わせてスライドする絵本な風景や、シルヴィアの髪の波打つ動きも好きです。
アニメ化と聞いて気になったのが、スパイものに多い読み返して判るシーンの描き方。例えば原作のアーニャの最初の超能力シーンの「チチチ」は漫画でも見落としそう。(以下、1話から引用)
更には「チチチ」も無いけど、(超能力または直感で)実は判ってるシーン。
でもテレビのリアル視聴では前のページには戻れないので、アップなど強調するとネタバレだし、再度映すのも説明っぽいし、どうするのかなと思っていたら、ほぼ原作忠実な流れで、でも意外と違和感なかった。見落とし配慮より原作忠実の方向は、録画や配信の比率が増えた背景もあるのかも。
ところで列車、自動車、椅子などのインテリアも洒落てますが、これは映画「ライフ・イズ・ビューティフル」の「これはゲームだよ」のオマージュに見える。せっかくのセリフも相手がアーニャなので即バレですが(笑。
そしてまた各話クロージングとしても見事なED。星野源の歌に合わせたアーニャの「夢の中」のコラージュのような紹介の後、「私の居場所はつくるもの」と1人だけだったのが、2人、3人、更にコミカルに家になだれ込み、「ふざけた生活は続く」と夢の世界へ。偽の家族の物語。泣けそう。名作です。
ところでEDのこれはシネカリ(フィルムをひっかいて直接絵を描く映像手法)風ですよね。
アニメ映画「この世界の片隅に」でも、すずさんが生死をさまようシーンでシネカリ風がありました。
なお本当のシネカリは手間暇さえかければ誰でもフィルム購入費だけで(現像すら不要で)映像が創れちゃいます。たぶん世界で一番有名なシネカリは「線と色の即興詩」("Blinkity Blank"、1955年、5分、カナダNFB制作、ノーマン・マクラレン)で、学生時代に図書館16ミリフィルムを借りて何回か上映しました。
さて、最後に本題ですが「SPYxFAMILY」が面白いのはファミリーものだから、と思います。当たり前ですみません。
「スパイ・殺し屋・超能力者の設定がスゴイ」な紹介を良く見ますが、「それも事実だけど、単なる設定盛り過ぎでハチャメチャにならないのは、いつも家庭に戻っているから」と思えるのです。
実は「スパイのファミリーもの」自体なら、2005年の映画「Mr. & Mrs. スミス」(男女が互いに秘密)とか、2020年の映画「スパイ・ファミリー」(タイトルが大変紛らわしく検索に苦労するが、父を娘が助ける)とかもあるし、子供が秘密のスパイに憧れるのも世界共通。
でも「SPYxFAMILY」は色々な任務や派手なアクションはあっても、ベースはあくまで「エリートなのに本人の恋愛や子育ては実は不得手」なエリート擬装ラブコメ要素と、「家族サービスの水族館や、学校での特待生狙いに、予想外の障害が次々と襲い掛かかってくる」という子育てドタバタ要素があるので、サザエさん的な安心感がある。
エリートラブコメといえば「かぐや様は告らせたい」と「SPYxFAMILY」の原作マンガの冒頭3ページは似た構成で、話のお約束を最初に説明してますね。そういえば主要キャラのデザインも似てるかも。
そして子育てドタバタと言えば、「ケロロ軍曹」のテーマは家族と聞いた時も、最初は「えー、あんなハチャメチャ宇宙人の話が?」と思ったけれど、やんちゃな子供達が「秘密基地だ、世界征服だ」と大騒ぎしては年長の夏美に毎回おこられる、子供視点の空想世界にも思える。
「SPYxFAMILY」も、子供が「自分の学校も旅行も実は秘密任務なのだ」とも思える構成なので、かなりぶっとんだエピソードがあっても、最後は家に戻ってきて笑い話で終わる安定感と安心感があるようにも思う。
ところでこの家族の秘密が世間にばれそうであたふたコメディーは、古くはアメリカンドリームな専業主婦文化を世界に見せつけた「奥様は魔女」(1966-)や、そのパクリが大ヒットした日本の「奥様は18歳」(1970-)シリーズ、更には、あだち充の「みゆき」など同居ものや、ハーレムものなど、長寿コメディーの黄金パターンですが、「SPYxFAMILY」も「お互いの秘密」が続くのに安定感を感じます。
■(おまけ1)子育てマンガ要素
歳のせいか、仮に仕事は一流でも子供のフリーダムな言動は理解できず疲れ果てる、あるある要素と落差感が笑えます。
■(おまけ2)エレガント命な先生
ヘンダーソン先生。任務達成には敵役なのに、時には味方もするキャラにするには、強烈な独自の美学を持たせるしかないというキャラ設計なのか、ファンも多そうです。
ところでエリートラブコメのはしり?でもある「東京大学物語」(江川達也、1992~)の4話にもエレガントが口癖(らしい)矢野先生がいますが、これも少し似てる?孤高のエレガント先生は実は昔からいるのか気になります。
■(おまけ3)なるほどなブログ
OP/EDを、こんなに整理して分析できるなんてすごいです。
タイトルだけでも作品世界!
■(おまけの最後)アニメ2期の予告動画
以上です。長文読んでくれてありがとう。