らびっとブログ

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感想『ジョーカー』お勧めです! 好き嫌いは分かれそうですが(笑)

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はじめに

初めての個人ブログです。よろしくお願いします。趣味で好きな事を書きます(^^)/

公開2日目(10/5)の朝に2D吹替版で。初日夕方はも今回も満席でした。直前にヴェネツィア国際映画賞 金獅子賞受賞と知りましたが、これならなるほどなーの見応え満点でした。ただ相性はありそうなのでご注意を(笑)

この映画は「バットマン」を全く知らなくても多分楽しめます。ただ「ゴッサムシティ―はアメリカの架空の都市、ジョーカーは悪役、バットマンの本名はブルース・ウェイン」だけ知っていると良いかと。

多分「ヒーロー、アクション、明るい活劇」を期待すると「うーん」ですが、人間の善意と狂気、社会の不条理、(被写体は汚いけど)美しい映像を観たい人にはいいかもです。

以後は多少のネタバレご注意です。

暴力シーンが過激?

「面白いけど暴力シーンが過激」とか「街で暴力を誘発するのでは」との評が多い気がしますが、実は過激シーンや時間はごく少ない。『ゴッドファーザー』や『キル・ビル』の方が過激満載、『マトリックス』なんか普通の人にしか見えない警備員を、こちらは嘘の世界だと黒服が無表情で殺しまくるとか、狂信団体テロ肯定風ですよね(そこがいいのですが)。

『ジョーカー』は日常感が丁寧で強いからリアルに怖いのでは。良くあるアクション物のように短いカットでテンポ良く見せるのではなく、『パルプ・フィクション』や『万引き家族』のように一見必要性が不明な日常シーンを長々演技させる事で観客が色々解釈できる、時間を支配できる映画ならではの魅力が圧倒的でした。でも実は音楽が「ここから不安なシーンだよ」とか細かく暗示誘導してくれるから、「難解でタルい」にはならないのが上手い気がします。

あと最後に違和感無いようにか、主人公(アーサー)は実は悪い奴や嫌な奴しか危害を加えず巻き添えも無い。ピエロ仮面による少年の両親射殺も、そのセリフは私利私欲や愉快犯ではなく義憤に感じる。もちろん悪人も善人も白人と非白人が配置されている。隅々まで良くできている気がしました。

ちょっと脱線ですが、作品は明らかにトランプ現象など「忘れられた人々」を模しているので、この映画に触発された犯罪や暴動を懸念する記事も多いですね。ただ歴史を見れば、身分制度など格差が大きくても経済が安定していればそう暴動は起きないと思います。映画にもある、失業や福祉サービス切り捨てなど「悪化する一方だ、この社会は続かない、子供のためにも立ち上がらないと」と広く思われだした時に、フランス革命ロシア革命も、あるいはファシズムやナチズムも拡大したのだと思います。日本ではゴザ暴動でしょうか(突発的ながら、目標限定で整然とした暴動だったようですが)。私は平和主義ですが、歴史的には民衆蜂起が常に悪とは限らないと思います。

ジョーカーのイメージって?

個人的にはジョーカーのイメージは合ってました

子供の頃見た白黒のテレビシリーズではバカげた騒動を起こす怪人で、ティム・バートン監督の映画『バットマン』以降は「面白ければ良い」のクレージーで実はインテリそうな多弁な道化師。「悪の組織のラスボス」ではなく、すぐ前面に出てくるパフォーマーで、有利不利より悪趣味優先がお約束。映画『ダークナイト』の登場シーンでは自分が射殺される恐れも高いのに面白いからとぼけてたとしか思えない。凶悪だがどこか間抜けで愛嬌あるヒール役というイメージがあります。(優等生的な後期ミッキーよりドナルド、ウルトラマンより怪獣側、ティム・バートン作品にも通じますね。)

ただ映画『ジョーカー』では観客感情移入や作品後味のためか善人すぎて、教育もろくに受けられなかったようなのに突然知的なセリフが出るのがちょっと違和感でした。

個人的に印象的だったシーン

アーサーが母が大好きなテレビ番組の観客席にいると、思いもかけず舞台に呼ばれて司会はノリノリ、想いが伝わり抱擁、それを映すテレビカメラ。その一連を流れるように捉えるカメラワークが見事。あぁアーサー、ずっと苦労ばかりだったけど良かったじゃないか、母親もきっとテレビで見て感激だろう、一夜限定でもまさに夢のような展開と映像だなぁ、夢のような... うまいなぁ。

アーサーがウェイン邸に行き少年ブルースに会う。門で偶然会うのではわざとらしいが、ただカメラが横に引いていくとふと目が合って、両者が同じ方向に歩いていって... これもうまいなぁ。アーサーが子供に優しいのはバスの伏線があるし、少年が関心を持ったのは手品だけど、もしや将来の宿命を感じたのかも知れない。セリフが最小限なので観客が色々解釈できる。更に勝手に妄想すると、もしかして裕福だけど冷たそうな館で「笑わない」少年が最初に魅かれたのは貧しいが優しい将来のジョーカーで、彼の引き起こした騒動で両親が殺されたのに、彼は人を憎まず犯罪と延々ストイックに闘っていくのか、なんとドラマチックな構成なのか、とか考えすぎでしょうか(笑)

暴動のシーンでアーサーがキリストに見えたって評を見かけました。私もです(同志!)

最後に

最後のシーンは解釈が分かれそう。病院が現実で暴動は妄想だったのか。ジョーカーが誕生しないならバットマンのシリーズ全体もフィクションということか。でも福祉サービスの担当者がアーサーの話を真剣に聞きたいなんて違和感ある、もしやこっちがアーサーとしての最後の想い「僕はただ聞いて欲しかっただけなんだ、でももういいんだ、こっちは終わったんだ」なのか(悲しい)。ジョーカーは誰の中にもいるのか。

全体に重いので、映像と音楽、そして最後のレトロで明るいエンドタイトルが素敵です。

私は...映画館を出て、とても爽やかで、世界がとても優しく見えました。(うーん私が異常なのか、否定はしませんが笑)

PS.冷蔵庫は子供が真似しないことを祈ります。R15なので保護者の皆様、忘れずよろしくお願いします(いやこれマジで)。