「きみの色」は題名通りに色が全編溢れ出て、山田尚子監督の前作「リズと青い鳥」と繊細な情感は共通しながらも完全オリジナルを活かした色と音楽で若者を描いた世界でした。
↓スクリーン入口の液晶表示なので画像が荒い...

最初に見たのは劇場予告編で色彩に目を惹かれたものの、本当に全編これなのかな、とも思いました。
公開日の8月30日は台風10号の影響で大雨警報と電車ダイヤ乱れの中、幸い高地なので小雨のタイミングで増水中の多摩川を越えて二子玉川へ。そのせいか156名定員のスクリーンに観客はわずか約10名。
本編前の「NO MORE 映画泥棒」の1つ前に本作の聖地巡礼を紹介する(多分長崎県の)広告もネタバレ的ではなく控えめで良かった。
冒頭クレジットが前作「リズ」の「京アニ」から、「サイエンスSARU」に移った事に気づく。
人の色が見えるミッション系高校生のトモが、青い色の少女きみ、緑の色の少年ルイと3人でバンドをしないか、という話。
タイトル「きみの色」の「きみ」は「君」、「少女きみ」、そしてトモ自身は?を兼ねていると思う。
何よりも「リズ」と同様に特に大きな事件が起こる訳でもなく淡々とその時の情感が丁寧に描かれ続けていく。
ただ冒頭の色の世界で感情移入できないと、後はキャッチーな目的や敵や謎が出る話でもないので「平凡な世界で普通の話でつまらない」な感想も多そうな気がするけれど、それはそれで良いと思う。
逆に「リズ」前半で見られた技巧的なカメラワークや映像加工は影を潜めて、淡い色彩と端正な線で統一された動きの少ないような絵が、主人公の感情に応じてゆるやかに変化し流れていく。そして「バンドものなのに演奏がほぼ無い」みたいな展開、3人以外のエピソードは2~3秒程度で終わってしまうフォーカスの大胆さ、そして最後に3人は出会って何を得たのか、トモ自身の色は? これらを良いと感じるかどうかが全てかも。
3人組以外の学内モブキャラも主人公並にちゃんと作画されているし、シスター日吉子はファンが増えそう。ただ男性から見るとルイは中性的すぎて、こんな奴いない、と思われそう。
原作にもストーリー展開にも頼らない、制作者の拘りの映像作品が一般商業映画として成立するのは実は凄い事かと思うので、今後も観ていきたいと思わせる作品でした。
PS.最後の映倫マークまでは座っていましょう。
↓4年前に書いたブログです。山田尚子監督は凄い。
おしまい。