11/8 アメリカ大統領選でバイデンが勝利宣言した。トランプ陣営は「不正選挙」を主張して法廷闘争を行ったが、各報道機関の検証では根拠のある「大量不正」の情報は1件も確認できず、60件を超える訴訟は敗訴続出だが、フェイクニュースも多い。これらの訴訟状況や報道などをまとめてみた。 (最終更新 2021/3/12 訴訟状況)
最終的には「大量不正」の主張は次々と裁判所に却下され、11/7 連邦議会でバイデン勝利が正式認定され、3/8 残る訴訟も全て退けられた。
- ■訴訟状況
- ■再集計/選挙人投票
- ■アメリカ政府
- ■BBC
- ■AP通信
- ■ロイター
- ■ウォール・ストリート・ジャーナル
- ■ニューヨークタイムス
- ■HUFFPOST
- ■3大テレビ局(ABC, CBS, NBC)
- ■FOXニュース
- ■CNN
- ■BloomBerg
- ■Bridge Michigan
- ■Tech Crunch Japan
- ■FactCheck.org
- ■NYポスト
- ■YouTube
- ■フェイスブック
- ■共和党
- ■日本経済新聞
- ■読売新聞
- ■朝日新聞
- ■毎日新聞
- ■産経新聞
- ■東京新聞
- ■時事通信
- ■NHK
- ■ニッポン放送
- ■日本テレビ
- ■論座
- ■Wedge
- ■菅総理大臣
- ■(参考1)郵便投票のシステム
- ■(参考2)今後の予想
- ■(参考3)トランプ支持者の分析
■訴訟状況
(11/6 BBC)
(11/9 BBC)
・ペンシルヴェニア州で立会人のアクセス不十分と主張、選管は適切に対応と主張
・ミシガン州で作業監視のアクセス不十分と提訴、証拠不十分で却下
・ネヴァダ州で「転出後の不法投票が何千人」と発表、リストは証拠にならず
(11/15 BBC)
(11/19 Explained)
(11/19 USA TODAY)
・トランプ陣営の訴訟 18件中、勝訴 2件、敗訴/棄却/撤退 8件、保留中 8件。
- ペンシルバニア州連邦裁、不在者投票者のための暫定投票、11/6 敗訴。
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ペンシルベニア州連邦裁、投票用紙の「修正」、11/3 却下
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ペンシルベニア州連邦裁、郵便投票者の身分証明期限の延長、11/12 勝訴(延長権限無し)
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ペンシルベニア州連邦地裁、2段階投票システム、保留中
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ミシガン州裁判所、開票へのアクセス、11/5 棄却 (上訴中)
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ミシガン州連邦地裁、投票処理の監視許可、保留中
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ジョージア州上級裁、不適切計上可能性の53票、11/5 却下
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アリゾナ州上級裁、油性ペン(シャーピー)使用への異議、11/7 取り下げ
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アリゾナ州上級裁、対面投票の拒否、11/12 取り下げ
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アリゾナ州上級裁、投票センターの計票能力、保留中
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ウィスコンシン州、2郡の再集計要求、保留中(部分的な再集計中)
- ネバダ州地裁、投票機故障の影響を受けた一部投票所の時間延長、認められた
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ネバダ州地裁、州選挙の「詐欺と不正」の主張、保留中
(11/19 ロイター)
・ジョージア州地裁、期日前投票プロセスの不適切変更の主張、却下
・ペンシルベニア州裁判所、約2200票無効の主張、却下(証拠無し)
・ペンシルベニア州連邦地裁、郵便投票約700万票の無効主張を却下(証拠無し)
(11/28 BBC)
(11/29 CNN)
・ペンシルベニア州最高裁、郵便投票の無効主張を棄却(全会一致、再提訴不可)
(12/4 WSJ)
・ウィスコンシン州最高裁、郵便投票の無効・再集計等の主張を棄却
(12/9 ロイター、AFB)
・連邦最高裁、ペンシルベニア州郵便投票の無効主張を却下(全会一致)
(12/10 ロイター)
・テキサス州と17州が、激戦4州の投票結果無効を連邦最高裁に提訴
各州とも共和党関係者が原告
テキサス州がこの訴訟で勝利する可能性はほとんどなく、訴訟には法的価値もない
最高裁がこの案件を受理する可能性はほぼない
(12/12 BBC)
連邦最高裁は11日、短い判決文で、テキサス州には原告適格(訴訟を起こすための原告としての資格)がないとして、同州の訴えを退けた。
各州の一般投票の結果が認定されたことで、予定通り14日に全米各地で選挙人団投票が行われる。その時点でトランプ氏が法的に争える道は閉ざされることとなる。
(12/21 NHK)
・トランプ陣営がペンシルバニア州の郵便投票違法を連邦最高裁に審理要求
訴えが認められる可能性は今回も極めて低い
(1/12 ロイター)
最高裁は、トランプ氏が敗北したウィスコンシン州、ペンシルベニア州の選挙結果に異議を唱えた訴訟3件など、トランプ氏側の訴え8件の審理を優先することを予想通り拒否した。
(3/10 フォーブス)
・ トランプ、法廷闘争でも敗北確定 「無効」の訴え、最高裁がすべて退ける
米連邦最高裁は8日、ドナルド・トランプ前大統領が昨年11月の大統領選後、ウィスコンシン州の投票結果の無効を求めた訴えを退けた。これにより、トランプ側が選挙後に起こした訴訟はすべて退けられた。
(略)
トランプやほかの共和党員は大統領選後、激戦州での選挙結果を覆そうと60件を超える訴訟を起こした。トランプやその側近は、保守派が多数派を占める最高裁はこの取り組みに理解を示すと信じていたが、逆にすべての訴訟が退けられる結果になった。
■再集計/選挙人投票
11/18 ジョージア・ウィスコンシン州再集計、バイデン氏勝利覆る公算小
11/29 ウィスコンシン州再集計完了、バイデンのリード増加
(12/2 Bloomberg)
(12/5 日経)
カリフォルニア州のバイデン勝利公式認定で、バイデン選挙人が公式に過半数
(12/8 BBC)
(12/14 BBC)
14日の各州選挙人投票でバイデンが過半数を獲得し、当選が正式に確定。
(1/7 BBC)
議会では6日から上下両院の合同会議が開かれ、州ごとに選挙人団の投票を開票。バイデン次期大統領とカマラ・ハリス次期副大統領の勝利を最終認定する手続きが行われていた。
ペンシルヴェニア州とアリゾナ州の開票結果に対しては一部の共和党議員から異議が唱えられたが、上下両院がいずれも投票によってそれを退けた。
議会の結果認定により、昨年11月3日投開票の大統領選は最終決着した。バイデン氏は今月20日、46代目のアメリカ大統領に就任する。
■アメリカ政府
「死者投票」、「国土安全保障省(DHS)と国土安全保障省国家安全保障局(CISA)がセキュリティ対策を講じた投票用紙を印刷」などは事実ではない。
(11/13 ロイター)
(12/2 BBC)
ウィリアム・バー司法長官は1日、大統領選で大掛かりな不正があったとするドナルド・トランプ大統領の主張について、裏付ける証拠を司法省は発見できていないと述べた。
(12/22 BBC)
バー司法長官は21日、記者会見で、今年の大統領選の不正やバイデン次期大統領の息子のハンター氏に対して捜査を行う特別検察官の任命について問われ、任命する計画はないと明らかにした。
バー氏はトランプ氏の支持者から最近要求が出ている投票機器の押収についても否定した。「連邦政府が押収を行うための根拠がない」としている。
■BBC
(11/7)
死者投票は事実ではない。「不自然な大量票」は一括計上は通常(バイデンのみは単純ミスで訂正済)。投票率100%超は有権者数が古い。サインペン(油性ペン)は無関係。
(11/16)
「死者投票」「ミシガンで1万人の死者が不在者投票」などは「単純な統計上の問題」。
(11/18)
「ドミニオンは全米で270万のトランプ票を削除した」、「ドミニオン・ヴォーティング・システムズは過激な左派が所有している会社」は証拠なし。
■AP通信
「多数の証拠や事例」「開票監視の拒否」「民主党が立会人出入り禁止の提訴」は事実が確認できない。「投票日後に届いた票」は裁判所による例外。
■ロイター
投票用紙廃棄は一部事実(9月に9票、ミスの模様)だが、大量の写真はイメージ画像。
Fact check: Inaccurate details about ‘discarded’ military ballots found in Pennsylvania
■ウォール・ストリート・ジャーナル
社説で「トランプ氏は法廷闘争する権利はあるが、それには不正投票の証拠を示す必要がある」と述べ、根拠なく「不正」を口にするトランプ氏の姿勢を批判した。
■ニューヨークタイムス
(11/13 追加)
■HUFFPOST
バイデン氏の「最大規模の不正投票組織を作った」発言は、全文を見ると全く違う意味
■3大テレビ局(ABC, CBS, NBC)
組織的な不正があったとするトランプ氏の主張が根拠に欠けるとして中継打ち切り
■FOXニュース
「ウィスコンシン州で不正票調査で州兵が投票所に」は誤り。印刷ミスにより機械計測できない投票用紙13,500枚を正しい用紙に転記する作業のために州兵が呼ばれた。
Wisconsin county using 20 National Guardsmen to transfer data from misprinted ballots to clean ones
(11/11 追加)
■CNN
現在のところ大規模な不正を示唆する信頼に足る証拠は見つかっていない。
■BloomBerg
バー米司法長官は9日、大統領選挙で不正行為があった可能性を巡り司法省当局者が調査を開始することを認めた。ただ、決定的な証拠はないとしている。
■Bridge Michigan
投票装置がミシガン州での誤った不正の主張を助長。(略)ミシガン州のジョスリンベンソン国務長官は、選挙管理ソフトウェアの更新に郡が失敗したことによって引き起こされた「人為エラー」と説明しました。個々の投票機の結果を組み合わせるために使用されるElectionSourceソフトウェアは適切に構成されていませんでした。国務省は「実際の投票総数には影響しませんでした」と述べました。
■Tech Crunch Japan
(11/15 追加)
■FactCheck.org
シャーピーペン(油性ペン)で記入したトランプ票がアリゾナで計上されなかった、との虚偽が選挙後に広範に拡散された。
■NYポスト
トランプ支持のタブロイド紙のNYポスト紙は12/28の一面で「狂乱を終わらせよ」。社説でトランプを「世界が腐敗していると怒鳴り散らすマールアラーゴのリア王」になると警告。
■YouTube
ユーチューブチャンネルが不正めぐる虚偽の主張を宣伝(調査中)
■フェイスブック
■共和党
(共和党ロムニー議員)
「選挙が不正に操作され、腐敗し、盗まれたと主張することは誤りだ」
(ブッシュ前大統領の法律チーム)
トランプ氏が郵便と不在者投票の不正選挙疑惑を提起した訴訟に対し「全くその価値がない」。「これまでトランプ氏側が起こした訴訟は全く価値もなく、勝つこともできないだろう」。
(11/9 追加)
共和党のロブ・ポートマン上院議員は声明で(略)「トランプ陣営は不正選挙の主張を裏付ける証拠を提示しなければならない」と表明。
(12/15 WSJ)
バイデン氏当選、共和党幹部の多くも容認 選挙人投票の結果受け( 共和党上院ナンバー2のジョン・スーン議員、同ナンバー4のロイ・ブラント議員)
■日本経済新聞
激戦州での得票差が開き、支持者から巨額の資金を募って法廷闘争を続けても結果を覆すのは難しいとの見方が多い。与党・共和党からも選挙結果は変わらないとの見方が出ている。
(11/11追加)
トランプ大統領は選挙不正を主張して敗北を認めず、激戦州で訴訟を起こしている。(略)トランプ陣営の不正疑惑の主張は裁判所でおおむね認められていない。
■読売新聞
(11/11 追加)
■朝日新聞
トランプ氏は今回の大統領選を「不正選挙」と主張し続けており、(中略)法廷闘争を続ける考えを強調した。ただし、いずれの訴訟も具体的な証拠は示しておらず、次々と敗訴しているのが現実だ。
■毎日新聞
トランプ大統領の一連の発言を、米主要ファクトチェック機関が「事実でない」
(11/11 追加)
「米国の主要政治サイト『リアル・クリア・ポリティクス(RCP)』が激戦州ペンシルベニアでバイデン氏の当選確実を取り下げた」は誤り。
(11/17 追加)
■産経新聞
トランプ陣営は、集計結果を覆すような「大規模な不正」があったことを示す具体的な証拠や、説得力のある根拠を示すに至っていない。
■東京新聞
■時事通信
■NHK
(11/15 追加)
■ニッポン放送
■日本テレビ
法廷闘争に持ち込む構えを崩さないトランプ大統領ですが、CNNは、ホワイトハウス関係者の話として、メラニア夫人が大統領に敗北を認めるよう何度も促していると伝えています。
(11/9 14:00 追記)
トランプ陣営の幹部が「(メラニア夫人が敗北を説得との)報道は事実ではない」と否定。
■論座
■Wedge
(11/15 追加)
■菅総理大臣
(不正の話ではありませんが)
ジョー・バイデン氏及びカマラ・ハリス氏に心よりお祝い申し上げます。
■(参考1)郵便投票のシステム
トランプの主張する民主党の選挙不正がありえない理由。
— 町山智浩 (@TomoMachi) 2020年11月7日
①登録と投票用紙のサインの筆跡鑑定が必要とされる。数万票も捏造できないし、してもすぐバレる。
②集計所でしか開封できない。両党の監視の下で数万票を入れ替えられない。
③同じ投票用紙で行われた上下院選挙で民主党は苦戦している。
④選挙管理委員、集計係、監視員、どれも民主党’、共和党の両方いる。
— 町山智浩 (@TomoMachi) 2020年11月7日
⑤共和党が州知事、州議会を支配しているアリゾナ、ジョージアでもトランプは負けている。
⑥投票用紙も封書も保存され、証拠が残る。投票者は自分の票が集計されたかチェックできる。つまり不正があればすぐバレる。
なお各州の郵便投票は、今回はコロナ禍で利用数(週によっては投票期間も)は増えたが、制度は大半は従来からで実績があり多数の不正は報告されていない。
■(参考2)今後の予想
トランプは敗北宣言を拒否中だが、伝統的慣習であって法的要件ではない。1月20日に新大統領が就任すれば失職する。
選挙不正は州裁判所の管轄だが、現在のところ必要な根拠が提示されないため却下(棄却)続出中。
なおブッシュ(子)対ゴアの法廷闘争で連邦裁判所が激戦州となったフロリダの再集計停止を命じたのは、選挙人確定(新大統領就任)に間に合わないとの理由。連邦裁判所は現在保守派多数(6:3)だが、各州の選挙に直接介入する権限は無い(連邦制)。
ネット話題の「投票用紙すかし」などは、仮に全マスコミが黙殺しても、トランプ陣営や共和党政府が法廷に主張しないのか不思議。ところでブロックチェーンは仮想通貨の暗号化技術で、すかし技術ではない。ただのネタでは。
今後、新規の根拠ある大量不正(10万票以上)が発覚しない限り、法廷闘争は困難か?
以下は平河エリさんによる日本メディアへの問題点指摘記事。
上記の部分引用です。
結果から見れば、事前の世論調査はかなり正確にこれらのことを言い当てていた。
(中略)日本はどうだろうか。(中略)「不正投票があった」というトランプ大統領の主張に理解を示すコメンテーターすらいた。
また、日本で最大級のコミュニティの一つであるYahoo! ニュースのコメント欄を見に行けば「不正投票」を信じるコメントが溢れていることがわかるだろう。
残念ながらこれらの不正投票論は容易に陰謀論と結びついてしまう。
またABCラジオでの町山さん説明。
上記の部分引用(あくまで要約)です。
法的に決まるのは12月8日、各州がその最終的な勝者を決定する時。トランプ大統領は次々と各州に対して裁判を起こしてますが全て却下されている。現在一応4億ドル(約450億円)の負債を抱えている。公式サイトで「法廷闘争のため6000万ドル(約62億円)」の寄付を募集中。12月14日の選挙人による投票は形だけ。確定しなければ、12月23日に下院議会で決選投票で「各州ごとに1票」のためトランプ大統領が勝つが、それでも決まらない場合は1月20日に下院議長の民主党ナンシー・ペロシさんが大統領代行になる。だから、どっちになるか分からない感じ。(選挙不正の証拠は)全く一切出ていません。だから裁判所の方も受理をしてないというか、拒否をしているわけです。証拠がない。さらに裁判をするお金もない。だからこれは無理だろうという。破産だけではなく、大統領の不逮捕特権が無くなると1億ドルの脱税疑惑など20件ぐらいの裁判を抱えており、辞めた途端にものすごい裁判を抱えることに。
■(参考3)トランプ支持者の分析
・米大統領選をめぐるフェイクニュースと「新宗教系メディア」の関係(11/23 藤倉善郎)
・日本で繰り返されるトランプ応援デモの主催者・参加者はどんな人々なのか(12/30 藤倉善郎)
・選挙不正を言い募るトランプ支持の「カルト性」に警戒を(1/8 江川紹子)
(了)