らびっとブログ

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「ほしのこえ」~「天気の子」新海作品感想

新海誠監督の劇場アニメーション7作品のミニ感想です。「君の名は」と「天気の子」は劇場で見て、その後にそれ以前の作品をテレビ地上波やU-NEXTで見ました。

 

 

 

ほしのこえ」(2002年、25分)

  • 対タルシアン戦に向かったミカコと、地球に残るノボルのストーリー。
  • 時空を超えて想いは伝わるか」は、ほぼ全作品に底流と思う。リアル風の光と影を強調した風景、描写は生活で時々空を見上げる、携帯電話(ガラケー)への異様な拘り、モノローグ中心、安易な結末をつけない、など監督世界が各所に見える。
  • どうしても「トップをねらえ!」を連想しまくるが、SF世界ながら観念的・情緒的で監督がファンと言うレイ・ブラッドベリな雰囲気も感じる。ストーリー中心(起承転結)でなくエピソードで語るというスタイルも。

 

雲のむこう、約束の場所」(2004年、91分)

  • 分断国家側の謎の純白タワーに飛行機で向かいたい浩紀・拓也と佐由理。
  • ちょっと長く感じた。情報機関とか武装組織とかアキラ的計画とか、斬新すぎる機体デザインとか、色々ある割に中途半端で結末のキャラ行動も納得感がない。
  • しかし電車、駅、「通じ合った2人」など、後に「君の名は。」で使用の要素満載。同じく作家性の強い宮崎駿が「パンダコパンダ」の洪水シーンなど得意な描写を積み上げて再構成してるのと共通性を感じる。

 

 

秒速5センチメートル」(2007年、63分)

  • それぞれ転校してしまう貴樹と明里、再開の旅、そして花苗の想い。
  • いやこれは凄いと思った。ストーリーの展開は実はほとんど無いのに、映像と音楽だけで延々と持たせてる。断片エピソードで世界観を感じさせる方向性の一つの完成形かと。見終わって音楽が頭から離れない。
  • これもモロに「君の名は。」に繋がっていく。

 

星を追う子ども」(2011年、116分)

  • 山間で暮らす明日菜と、アガルタから来たシュン、そして教師森崎の冒険
  • 絵柄も動きも美術もジブリ風なのは良いけど、冒頭の線路で寝てる明日菜が起きて走り出すとか、ジブリならある時間の溜め(?)が無い、シーンの繋がりが自然に見えないなど、見た目が似てるだけに余計にあちこち気になった
  • 陰に潜む敵、巨大な穴など面白い描写はあったが、長かった...

 

言の葉の庭」(2013年、46分)

  • 雨の日の朝に新宿御苑で出会うタカオとユキノ
  • 再び新海節炸裂の世界観。女性が年上はこれだけ。複雑な家族構成の絡みも「君の名は。」に繋がってると思う。
  • ただエンドを除いて音楽が最小限であまり印象に残らなかった。

 

君の名は。」(2016年、107分)

  • 東京の瀧と山間の三葉の入れ替わり物語
  • ご存知エンタメ路線転向での大ヒット作。劇場で「端からは端まで良くできてるなぁ」としか思えなかった。蓄積した歴代描写を素材的に集大成、音楽と合わせテンポよく伏線張りまくり、ギャグ・恋愛・家族・ミステリそしてスペクタクルありと、全方位型娯楽大作だ。
  • 知人の演出家は、冒頭の早回しで雲が流れる映像はアニメで初めてではと言っていた(全く気付かなかった)。
  • 監督は「随分と裏切り者と言われた」とコメントしてたが、自主制作も商業作品も両方喜んで見てた人間としては、2つの世界の間の「壁」はわかる気がする。そう言われるのは避けられない。でも本来どっちを作っても、交互に転向しても良い事だと思う。「1つの道を極める」同調圧力儒教の影響だろうか。
  • 個人的には、三葉が田舎を嘆くシーンの背景(息をのむ自然美)、「割れた」直後のTVアナウンサーの呑気な解説(観客には判る)、三葉の父親のドラマ(決断に影響と観客が推測できる)とか、観客への押し付けを避けた計算された感情移入が良い。

 

「天気の子」(2019年、114分)

  • 神津島から東京に来た帆高と、晴れ女の陽菜の物語
  • 前作「君の名は。」のダークバージョンと思う。地方の子供に「前作のキラキラ新宿だけを真に受けないでね」みたいな。
  • 妹→弟、お婆さん→お爺さん、駆け降りる→駆け上がる、など少しづつ変えたとこが却って相似的に見えてしまう。
  • 個人的には、生粋の貧乏人はラブホの自販機で大喜びしない、雲上シーンは前年の「ペンギン・ハイウェイ」に劇似、雨続きで海にはならない(ファンタジー)、とか気になってしまった(本質外ですが)。
  • 中高年は非ハッピーエンド、若者はハッピーエンドと感じた人が多かったとの説が興味深かった。中高年は既存の東京を護りで見てしまい、若者は未来を見る。それで良いと思う。

 

(了)